幻の「間人ガニ」を産地偽装、不正競争防止法違反容疑で逮捕
2024/04/12 知財・ライセンス, 商標法, 小売

「間人ガニ」の偽装販売疑いで逮捕
別産地のカニを、“幻のカニ”と呼ばれる「間人ガニ」と偽り販売していたなどとして、水産会社の役員らが不正競争防止法違反などの疑いで逮捕されました。
カニの認定タグ付け替え不正か
逮捕されたのは、京都府京丹後市の「まるなか水産」の役員ら2人。2人は2023年2月、兵庫県産のズワイガニ2杯を“幻のカニ”と呼ばれる京都の高級ブランド「間人(たいざ)ガニ」と偽り、飲食店などに約5万4000円で販売した不正競争防止法違反の疑いがもたれています。
間人ガニは5隻の漁船のみに漁が認められているブランドガニで、漁獲量が少なく、希少価値が高いことで知られています。中には、1杯4万円の値が付くこともあるといいます。そのため、品質保持や、他の産地のカニとの差別化を目的として、漁師は漁獲後に船上で、「たいざガニ」という文字と船名が刻印された緑の認定タグを付けています。
この認定タグは一般には販売されず、京都府の漁協に所属する船が管理していますが、逮捕された役員らは漁船の関係者から不正にこれを入手し、水揚げされたズワイガニのタグを外し、「たいざガニ」のタグへ付け替えていたとみられています。
役員らは不正入手したタグ21本を持っていたとして、商標法違反の疑いも持たれています。また、作業場からは未使用の認定タグも発見されているとのことで、警察ではこれらを入手した経路を調べています。
2人は容疑を認めており、「10年以上前からやっていた」などと余罪についてもほのめかす供述をしているといいます。
過去には、“ハッシュタグ”の無断使用も商標法違反に
今回の事件では、「間人ガニ」の商標使用の権限がないにもかかわらず、役員らが「間人ガニ」を示す認定タグを使用目的で所持したとして、商標権侵害の疑いも持たれています。
ちなみに、商標権の侵害とは、登録商標を使用する正当な権利等がない者が、業として、登録商標を登録されている指定商品や指定役務について使用する行為を指します。
商標権等の侵害に対しては、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科(商標法第78条)の罰則が科され、さらに、法人が違反した場合には最大3億円の罰金が科せられる可能性があります(商標法第80条)。
間人ガニのタグについては馴染みのない人も多く、タグによる商標権侵害を他人事とついつい考えてしまいがちですが、過去には、タグはタグでも、“ハッシュタグ”を無断でつけたことで商標権侵害と判断された裁判例もありました。
メルカリでのハッシュタグ使用で商標権侵害
メルカリでは、商品の説明を行う際に、ハッシュタグ(#)とキーワードを付けて、購入者が検索しやすいように表示をすることができます。
被告は、メルカリでハンドメイドバッグを1年以上出品・販売していましたが、巾着型バッグを販売する際に、商品紹介ページに、「#シャルマントサック」、「#シャルマントサック風」など、日本のファッションブランド『シャルマントサック(商標登録第6232133号/指定商品「かばん類,袋物」)』にまつわる複数のタグ付けをしていました。
これに対して、「シャルマントサック」の商標権者である株式会社Wisteria Kyotoは、ハッシュタグの使用が商標権侵害にあたると主張して、その差止めを求めました。
被告は、ハッシュタグ「#」は、後に続く文字列が表す特定の商品又はテーマに“関連する情報”のウェブサイト上又はSNS上の所在場所を表すもので、商品の出所を表示する態様により使用するものではない(「シャルマントサック」の商品がリンク先にあることを示しているわけではない)として、ハッシュタグとしての使用は「商標的使用」にはあたらないなどと主張して争いました。
大阪地方裁判所は、メルカリにおいてハッシュタグが、商品名ないしブランド名の商品等に関する情報の検索の便に供する目的で利用されている点を指摘。ハッシュタグの表示は、需要者にとって、出所識別標識及び自他商品識別標識としての機能を果たしているとして、商標的使用にあたると判断し、被告による商標権侵害を認めました。
コメント
報道等によりますと、今回の事件では役員らが、作業場を外から見られないよう扉をマジックミラーに変え、カニを茹でる作業中も扉を閉め切ってこれを行うなど、かなり計画的にタグの付け替えを行っていたとみられています。
こうした意図的な商標権侵害はともかく、上述したように、SNSやECサイト、マーケットプレイス等での何気ないハッシュタグの利用が、知らず知らずのうちに商標権侵害につながってしまうこともあるため、注意が必要です。
近年、広報活動などの一環で、SNSを活用する企業も少なくないと思います。投稿内容を適法・適切なものとする指導はもちろんのこと、商標権を侵害しないハッシュタグの使用方法等についても担当者に周知する必要がありそうです。
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