外国産鶏肉を国産と偽装で有罪判決、誤認惹起行為について
2025/10/02   コンプライアンス, 広告法務, 不正競争防止法, 食料品メーカー, 小売

はじめに


小学校の給食に使われる鶏肉の産地を偽装したとして食肉販売会社の元代表取締役が不正競争防止法違反の罪に問われた事件で東京地裁が先月25日、有罪判決を言い渡していたことがわかりました。

懲役1年執行猶予3年とのことです。今回は不正競争防止法が禁止する誤認惹起行為について見直していきます。

 

事案の概要


報道などによりますと、食肉販売会社「MRフーズ」(小金井市)の元代表取締役は2024年11月、従業員と共謀して納品書に「産地宮崎県産」と記載した上で外国産の鶏肉約211キロを3回にわたって府中市立学校給食センターに納入していたとされます。

同月、市や警視庁に「外国産を国産と偽っている」といった情報提供が寄せられ、市が納品された鶏肉の遺伝子検査をしたところ外国産の可能性が高いと判明し警視庁が2人の関係先から資料を押収していたとのことです。

なお同社は現在休眠状態となっており、納入された鶏肉を食べた児童らに健康被害は確認されなかったとされています。

 

品質等誤認惹起行為とは


不正競争防止法では、商品やサービスの品質・内容等について誤認を生じさせる表示などを品質等誤認惹起行為とし、不正競争の一種として禁止しています(2条1項20号)。このような行為は事業者間の公正な競争と国民経済の健全な発展を阻害するからです。

違反した場合には罰則として5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金またはこれらの併科とされます(21条3項1号)。また法人に対しても3億円以下の罰金となっています(22条1項3号)。

民事上の救済も用意されており、誤認惹起行為により利益を侵害された者またはそのおそれがある者は行為の差止や侵害予防行為などを請求することができます(3条)。さらに営業上の利益を侵害された者は損害賠償請求もすることが可能です(4条)。

 

品質等誤認惹起行為の要件


品質等誤認惹起行為の表示の対象は商品やサービス、それらについての広告、取引に用いる書類や通信となっています。

商品そのものの表示から新聞、テレビ、インターネットでの広告、そして取引上の見積書や注文書、契約書、領収書などとなっています。表示の内容としては、原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量とされます。そして「誤認させる」については、実際に誤認が生じていることまでは必要ではなく、その表示によって誤認させる可能性があれば足りるとされています。

誤認惹起の表示と言えるかについては当該表示の内容や取引の実情など諸般の事情を考慮して判断されます。行為類型としては誤認させる表示、当該表示をした商品の譲渡、譲渡または引き渡しのために展示すること、輸出入すること、インターネットで提供することとされます。

 

誤認惹起行為に関する事例


誤認惹起行為として実際にあった事例としては、まず、原料が京都で産出されたものではない茶を京都で加工し「京の柿茶」として販売していたというものがあります(東京地裁平成6年11月30日)。

また、本みりんではない調味料に「本みりん」「タイプ」「調味料」と表示し、「本みりん」が強調された表示をしていたという事例でも誤認惹起行為として差止と損害賠償が命じられています(京都地裁平成2年4月25日)。

他にも、食肉加工業者が鶏や豚などを混ぜて製造したミンチ肉を「牛100%」などと表示して取引先十数社に約138トンを出荷していたという事例では元社長に誤認惹起行為および刑法の詐欺罪で懲役4年の有罪判決が出ています(札幌地裁平成20年3月19日)。

原産はベルギー産ではなく加工のみをベルギーで行ったダイヤモンドを「原石ベルギー直輸入」と表示し、さらに「全商品市価の半額」などと表示し誤認惹起行為として有罪判決を受けた事例も存在しています(東京高裁昭和53年5月23日)。

 

コメント


本件でMRフーズは小学校の給食に使われる鶏肉の産地について、外国産であるにもかかわらず宮崎県産と納品書に記載し給食センターに納入していたとされます。
これらの行為は品質等誤認惹起行為に該当するとし東京地裁立川支部は懲役1年執行猶予3年罰金30万円を言い渡したとされます。

以上のように商品やサービスについて原産地や品質内容などについて偽装した場合は不正競争防止法違反として罰則などが用意されています。近年原料の高騰などから食品の産地偽装が増加しているとされています。

学校給食についても昨年、相模原市の食品加工会社が豚肉で産地偽装をしていたとされます。自社の製品で表示偽装が行われていないか、今一度社内で周知し防止していくことが重要と言えるでしょう。

 

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