ジャニーズ騒動から振り返る、「社名変更」に必要な手続きと負担
2023/09/29 知財・ライセンス, 商標関連, 商事法務, コンプライアンス, 商標法, 会社法, エンターテイメント

はじめに
ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、ジャニーズ事務所が会見で「社名変更をしない」と発言したことを受け、企業などから社名を変えるようにとの指摘が相次いでいます。会社がそれまで築いてきたブランドと切っても切れない社名。その変更には、どのような手続き・負担が発生するのでしょうか。
社名変更を要請
株式会社ジャニーズ事務所は、元社長のジャニー喜多川氏の性加害について9月7日に会見を開いた際、「社名変更はしない」との認識を一時示していました。東山社長によると、ジャニーズ事務所という社名は、創業者であるジャニー喜多川氏の氏名にとどまらず、所属タレントにとりエネルギーやプライドという性格を担っていることが理由とのことでした。
しかし、性加害者の名前に由来する「ジャニーズ事務所」という会社名を使い続けることについて、社名を聞いた被害者のフラッシュバックを懸念する声もあり、取引先企業や一部ファンなどからも社名存続への疑問の声が上がっています。
日本テレビ放送網株式会社の社長なども「ジャニーズ事務所に対し組織の見直しなどを文書で申し入れた」と明かしたほか、口頭で社名の変更についても改めて検討するよう求めたといいます。
こうした流れを受け、ジャニーズ事務所は9月19日、自社のホームページ上で、社名変更などを含め「今後の会社運営に関わる大きな方向性についてあらゆる角度から議論を行い、向かうべき方針を確認いたしました」と再検討することを発表しています。
過去に社名変更をした企業
会社名とは登記された法人を表す名称のことで、「商号」とも呼ばれています。実は、これまでにも有名企業を含め、多くの企業が社名変更を行ってきました。
●社名変更した企業例
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(1)商品・サービスのブランド名と社名を統一するパターン
(2)海外進出などを見据え、アルファベットやカタカナに変更するパターン
(3)元の社名を省略するパターン
(4)会社のビジョンや提供価値などを表現する単語(造語含む)を用いるパターン
などに大別されます。ジャニーズ事務所の置かれた状況に照らすと、仮に社名変更を行う場合、(4)のパターンが有力となるのではと考えられます。
社名変更の手順
会社名を変えたい場合、株主総会で「定款変更」を行い、議決「変更登記申請」をする必要があります。
定款を変えるためには株主総会で特別決議を得て、法務局へ商号変更登記の申請を行います。このときに法務局に提出する書類として、株主総会で定款変更決議が行われたことを記載した株主総会議事録が必要となります。
決議が得られれば、登記申請書類を作成。法務局へ登記申請するための書類を作成し変更登記申請を行います。
商号変更を行った日から2週間以内に、法務局で商号変更の登記申請をする流れとなっています。
社名変更後にやることは?
法務局での商号変更登記の完了後も、会社には進めるべき手続きが多数あります。
・新しい登記事項証明書(登記簿謄本)の入手
・税務署、年金事務所、ハローワークなど各役所での変更手続
・金融機関、公共料金支払先、取引先などへの周知、名義変更
・商標の申請(新社名で商標をとる場合)
・クレジットカード会社での社名変更手続き (会社カードがある場合)
・印鑑変更(実印、印鑑証明、銀行印、認印、角印、ゴム印)
このほかにも、営業車がある場合にはリース契約や保険の名義変更、許認可などがあれば変更届を出す必要があります。
さらに、社名変更の旨を取引先に直接伝えたり、プレスリリースやホームページ上などで周知する必要もあります。
なお、商号が変わったからといって、過去に締結した契約書が法的に無効になるということはありませんが、取引先企業の意向によっては、締結済みの契約書や覚書の再締結を求められるケースもあります。社名変更の際は、この辺りの契約周りの意向確認も必要になります。
コメント
ジャニーズ事務所は、10月2日に新たに都内で会見を行い、その場で社名変更についても説明されるのではとみられています。
従来の社名に対する所属タレントやファンからの愛着、性加害問題で失墜したブランドイメージとの決別、被害者への配慮など、様々な観点が絡んだ今回の社名変更騒動。どのような結論が示されるのか、目が離せません。
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