今年秋施行予定、改正景品表示法の概要
2024/04/25 コンプライアンス, 広告法務, 法改正, 景品表示法

はじめに
昨年5月に成立した改正景表法が今年秋に施行される見通しです。確約手続きの導入や罰則規定の拡大など大きな改正となっております。今回は改正景表法を概観していきます。
改正の経緯
昨年2023年5月10日に「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」が可決成立しました。同月17日に公布され、その日から1年半を超えない範囲内で施行される予定です。景表法は商品、サービスの品質や内容、価格などについて虚偽の表示をすることを防止することで消費者の自主的かつ合理的な選択を確保し、消費者の利益を保護することを目的としております。今回の改正の目的は、事業者の自主的な取り組みの促進、違反行為に対する抑止力の強化、円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備などとされております。独禁法ではすでに導入されている確約手続きの導入、課徴金の増額や直罰規定の導入、適格消費者団体による開示要請などが盛り込まれております。以下具体的に見ていきます。
事業者の自主的な取り組みの促進
(1)確約手続きの導入
今回で最も大きな改正点として確約手続きの導入が挙げられます。これは独禁法の確約手続きと同様で、優良誤認表示などの疑いがある表示を行った事業者が措置計画を申請し、内閣総理大臣(消費者庁長官)による認定を受けた場合は措置命令や課徴金納付命令の適用を受けないというものです(26条~33条)。消費者庁が景表法違反の疑いがある行為の概要や法令の条項を事業者に通知し、60日以内に事業者が自主的に確約計画を作成して申請、①措置内容の十分性と②措置実施の確実性を審査し、認定がなされると行政処分はなされず、認定されない、または申請がなされなかった場合は通常の手続きが進行します。なお認定された場合は独禁法と同様に公表されます。
(2)課徴金制度の弾力化
課徴金納付命令が出される際に、特定の消費者に一定の返金を行った場合は課徴金からその分が減額される措置がありますが、その返金方法について金銭に加えて電子マネーなども許容されることとなります(10条1項)。
違反に対する抑止力の強化
(1)課徴金制度の見直し
景表法の課徴金制度は優良誤認や有利誤認表示にかかる商品・役務の売上額に3%を乗じる形で算定されることとなりますが(8条)、事業者によっては適切に売上のデータを取っていない場合があり課徴金の基礎を把握できない場合がありました。そこで改正法では課徴金の基礎となる事実を把握できない期間における売上額を推計することができる規定が導入されます(同4項)。これにより正確な売上データがなくても課徴金を課すことができるようになります。
(2)再度の違反における課徴金額増額と直罰規定
これまでも景表法違反で行政処分を受けたにもかかわらず、違反を繰り返す事業者がたびたび見られました。そこで違反行為に対する抑止力を強化すべく、違反行為から遡って10年以内に課徴金納付を受けたことがある場合、課徴金の額が1.5倍に加算される規定が新設されております(8条5項、6項)。また罰則についても現行法では不当表示に対して措置命令を受け、それに違反した場合に罰則を受ける形となっておりますが(36条1項)、改正法では優良誤認、有利誤認表示に対して直接適用される直罰規定が新設されます(48条)。
円滑な法執行の実現に向けた規定の整備
今回の改正で適格消費者団体が一定の場合に事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるようになります(35条)。ただしこの適格消費者団体からの要請に対しては応じる努力義務を負うにとどまっております。また措置命令等の送達制度も整備・拡張され、外国執行当局に対する情報提供制度も創設されます(41条~44条)。
コメント
近年コロナ禍の影響もありインターネット通販やそれに関する広告市場が拡大しました。それに伴い合理的根拠のない不当表示や、いわゆるステマと呼ばれる不当な顧客誘引行為も急増したと言われております。そこで消費者庁の景品表示法検討会では今回の大幅な改正案を立案し、昨年5月に可決成立しました。今年11月までに施行される見通しです。確約手続きなど自主的な改善によって行政処分を回避できる途が新設される一方で再違反で課徴金が加重されたり直罰規定の導入など不当表示に対する規制は強化されております。どのような場合に違反となるかの要件などに加え、違反した場合のペナルティや手続きなどについても確認し、準備しておくことが重要と言えるでしょう。
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