海外に出て行く際には、社内ルールをきちんと整備し、それを遵守する覚悟を!!
2011/04/08   海外進出, コンプライアンス, 民法・商法, 刑事法, その他

まず、日本の刑法は、日本国内でのみ適用されていると考えている方もいるが、刑法には日本国民が海外で日本の一定の犯罪を犯した場合には、処罰するという規定がある。一定の犯罪であるから、日本の刑法の定める全ての犯罪ではなく、重大な犯罪に限定される。詳しくは刑法3条を読んでいただきたいが、今回の事例のようなセクハラに関係する犯罪としては、強制わいせつ罪や強姦罪がこれに当たる。日本人が海外で強制わいせつ行為等を日本人や外国人に対して犯せば、日本の刑法で処罰されることになる。

また、刑法3条の2に定められるが、日本人に対し強制わいせつ等をした外国人も日本の刑法で処罰されるという規定がある。日本企業が雇う外国人が日本人女性に性犯罪を犯すというのは十分ありうるリスクである。これらの処罰規定は、日本の警察当局がなかなか動けないため法的実効性の点では難点がある。刑法の法的抑止力が弱いのは事実であるが、犯罪を犯したという事実には変わりが無い。また、強制わいせつに至らないセクハラ行為は、民事上の責任はともかく刑法上の責任は無い。しかし、企業の法務担当者としては、このように法的実効性がないとか、法的責任がないから何も対策をしないというのはおかしなことである。

セクハラ行為が、取引関係上で行われたのであれば、民事上の責任である使用者責任を問われる可能性があるし、取引上ではなく社外で行われたとしても全くの私的行為に該当しない限り就業規則で定める信用失墜行為として処分対象となるのである。

何よりも、日本国内では男女雇用機会均等法を遵守する企業が、海外に出ると、男女雇用機会均等法を遵守せず、社員のセクハラに対してみて見ぬふりというのはおかしなことである。企業の法務担当者としては、日本の法令を遵守するという法令順守に忠実に職務をこなしたかもしれないが、コンプライアンスにおける法令順守の「法令」とは、日本法だけでなく、もちろん外国法も含まれるし、法律が無くても、正義であるとか公平とかいう法の精神や、日本国憲法における個人の尊厳を定める13条の精神も含まれるのである。

企業として、日本の雇用機会均等法をベースに考えるのではなく、欧米の先進的な法令をベースに社内規定を定め遵守させるということでもいいのである。それが真の「法令」遵守であると思う。法令順守の「法令」は法律や政令条例を意味するが、英語のコンプライアンスは社内ルールや法の精神も含んだもっと幅広い概念であるということをここで確認しておきたい。

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