京都市が関電への「脱原発」の議案提案見送り、株主提案について
2026/05/07   商事法務, 総会対応, 会社法, エネルギー関連

はじめに

関西電力の株主である京都市が、毎年行ってきた株主総会での「脱原発」議案の提案を今年は出さない方針であることがわかりました。否決され続けてきたことが理由とのことです。今回は会社法の株主提案について見直していきます。

 

事案の概要

報道などによりますと、関西電力の株主である大阪市・京都市・神戸市は、東日本大震災の直後から原発関連の議案を株主総会で提出していたとされます。

関電の電源構成は約5割を原子力が占めており、京都市は、

・原発で大事故が発生すれば市民生活への影響は過酷なものになる
・金品受領問題も原発事業の歪みが招いたもの

などとして2012年~25年の14年間、原発に依存しない発電体制を作るよう求める議案を提出してきたとのことです。

しかし、これらの議案は否決され続けており、「市として脱原発依存の考えは変わらないが、関電とより建設的な関係を構築し実現を目指す」として、今年からは議案の提出を見送ることとしたとされます。

 

株主提案とは

「株主提案」とは、一定の要件のもとに株主が株主総会で議題または議案を提案する権利を言います(会社法303条、304条)。役員の選任や解任、剰余金の配当、定款変更など様々な議題や議案を株主が主導的に提案することができる権利です。

具体的には(1)議題提案権、(2)議案提案権、(3)議案の要領通知請求権の3つに分けられます。

議題とは株主総会の目的そのもので、取締役選任・解任、定款変更といったものが挙げられます。これに対して議案とは議題に対して具体的な提案内容を言います。
例えば取締役選任の件では会社側がA氏とB氏を提案している場合、株主がC氏を提案するといった場合です。これは一般に修正動議と呼ばれます。

そして、議案の要領をあらかじめ他の株主に通知するよう会社に請求する権利も認められています。

このように株主提案件は自ら招集する権利までは保持していない株主でも積極的に株主総会に関与することが可能となります。その反面、2000年代から濫用的な提案権の行使も散見され、令和元年改正によって一定の制限が設けられています。

 

株主提案権の行使要件

株主提案権のうち、議題提案権と議案の要領通知請求権については保有株式数要件があり、総株主の議決権の1%以上または議決権300個以上の保有が求められます(303条)。これは取締役会設置会社のみ求められており、また公開会社の場合は6か月前から引き続き保有することも必要となっています。

そして、議案の要領通知請求権は株主総会の日の8週間前までに行使する必要があります。議題提案権については取締役会設置会社の場合は同様に株主総会の日の8週間前までに行使する必要がありますが、非取締役会設置会社の場合は期間制限はありません。

これらに対し、株主総会の当日に行う議案提案権については保有株式数要件も期間制限もありません。

 

株主提案権の行使制限

株主提案権のうち、議案の要領通知請求権と株主総会当日の議案提案権については一定の制限が設けられています。

まず(1)議案が法令または定款に違反しないことが求められます。これについてはある意味当然の制限と言えます。

そして、次に(2)一度提案された議案について総株主の議決権の10%以上の賛成が得られなかった場合、その議案と実質的に同一の議案については賛成が得られなかった日から3年間、提案することが制限されます。株主の10%の賛同も得られなかった議案については何度も無制限に提案することができないということです。

また、議案の要領通知請求権については、取締役会設置会社の場合は1人の株主が提出することができる議案の数が10に制限されます(305条4項)。
これは濫用的な提案を防止することを目的としており、10を超える議案が提出された場合には、会社は10を超えるものについては拒絶することができるとされています。

 

コメント

本件で京都市は震災後の2012年~25年にわたり毎年「脱原発」を内容とする議題を関西電力の株主総会で提案していたとされます。
しかし、京都市は同社と包括連携協定を締結し脱炭素の取組で連携することを確認しており、再生可能エネルギーを活用して原発依存からの脱却を求めていくとのことです。

以上のように株式会社の株主は一定の要件のもと自ら議題や議案の提案をすることができます。

しかし、現在では濫用的提案防止のため一定の制限も設けられています。株式の保有要件や期間制限だけでなく、提案数要件や10%以上の賛成要件など多岐にわたり、また取締役会の有無でも異なります。

まもなく定時株主総会の季節です。招集手続きだけでなく株主提案がなされた際の対応についても確認し、十分に準備しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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