宮崎市の消防局職員がサプリ販売で懲戒処分、マルチ商法について
2026/03/25 コンプライアンス, 消費者取引関連法務, 特定商取引法

はじめに
宮崎市消防局の職員がサプリメントを販売する「マルチ商法」を行っていたとして減給の懲戒処分を受けていたことがわかりました。匿名の電話で発覚したとのことです。今回は特定商取引法が規制するマルチ商法について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、処分を受けたのは宮崎市消防局の30代の主任級職員で、2024年1月頃から家族名義で健康食品のサプリメントを販売するマルチ商法の代理店を共同で運営していたとされます。
消防局に寄せられた匿名の電話で発覚し、その後の調査で職員が商品の広報や販売のあっせんを行ってたことが判明したとのことです。その一方で活動は勤務時間外であったことや他の職員への勧誘行為などは確認されなかったとされ、市は地方公務員法に違反したとして同職員を23日付で1か月間の減給10分の1の懲戒処分としました。
同市消防局長は不祥事に対しお詫びと再発防止に全力で取り組むとしています。
マルチ商法とは
マルチ商法とは、商品やサービスの販売員となって販売利益を得ると同時に他人を販売員になるよう勧誘して一定の紹介料が得られるといった商法を言います。「マルチレベル・マーケティング」と呼ばれることもあり、プラミッド状に組織が拡大していくといった特徴があります。
マルチ商法は特定商取引法では「連鎖販売取引」と呼ばれ同法による規制の対象となっています(33条)。特商法において「連鎖販売取引」とは、(1)物品の販売または役務の提供の事業であって、(2)再販売、受託販売もしくは販売のあっせんをする者を、(3)特定利益が得られると誘引し、(4)特定負担を伴う取引をするものとされています。
「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので他人を誘ってその人に売れば儲かります」「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」といった勧誘が典型例と言えます。そして、取引をするための条件として金銭の負担を求める場合に連鎖販売取引に該当することとなります。
連鎖販売取引への規制
上記のような連鎖販売取引に該当する場合は特定商取引法で厳格な規制を受けることとなります。まず、連鎖販売取引の統括者、勧誘者、それ以外の一般連鎖販売業者は消費者を勧誘するに先立って(1)氏名や名称、(2)勧誘目的、(3)商品または役務の種類を告げなければなりません(33条の2)。
次に禁止行為として勧誘を行う際、または取引の相手方に契約を解除させないようにするために嘘をつくことや威迫して困惑させるといった行為が禁止されています(34条)。広告をする際にも著しく事実に相違する表示や実際のものよりも著しく優良でありまたは有利であると人を誤認させるような表示が禁止されています(36条)。
さらに連鎖販売取引について消費者と契約を締結する際には統括者の氏名や名称、住所、電話番号、商品の種類や性能、品質、商品名、販売価格、特定利益および特定負担の内容、契約解除に関する事項その他の事項を記載した書面の交付が義務付けられます(37条)。この書面を受け取った日から20日以内であれば消費者はクーリングオフをすることができ、連鎖販売業者が虚偽を言ったり威迫があった場合はこの期間を過ぎてもクーリングオフができます(40条)。
ねずみ講とは
連鎖販売取引に似たものとして「ねずみ講」があります。連鎖販売取引と同様に勧誘した者がさらに勧誘を繰り返し、プラミッド構造となる点は同様ですが、連鎖販売取引と異なり商品の販売を目的とせず、もっぱら金品の受け渡しを目的としています。
ねずみ講は構造上、最終的には必ず破綻するにもかかわらず射幸心を煽って多くの者を加入させ、膨大な経済的被害を生じさせることから現在では「無限連鎖講の防止に関する法律」によって厳しく禁止されています(3条)。
無限連鎖講を開設し、または運営した場合は3年以下の拘禁刑、300万円以下の罰金またはこれらの併科となっています(5条)。業として無限連鎖講に加入することを勧誘した場合は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(6条)、それ以外の場合でも無限連鎖講への加入を勧誘した場合は20万円以下の罰金となっています(7条)。
コメント
本件で宮崎市消防局の職員はサプリメントの販売を目的とするマルチ商法の代理店を共同で営んでいたとされます。市は地方公務員法が定める「営利企業への従事等の制限」に違反したとして減給の懲戒処分としました。
本件では公務員法に違反したとして処分がなされていますが、マルチ商法自体は直ちに違法となるものではありません。上でも触れたように連鎖販売取引の要件を満たす場合、特定商取引法の厳格な規制に服することとなります。一方でいわゆるネズミ講と呼ばれる無限連鎖講はそれ自体が違法となっており開設や運営だけでなく勧誘行為も違法とされ、罰則が設けられています。
消費者を勧誘して、さらにその消費者に勧誘を誘引するといったスキームを検討する際にはこれらの規制を精査して法に抵触していないかを慎重に見ていくことが重要と言えるでしょう。
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