プレナスが上場廃止へ、MBOの手法について
2022/12/07 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
「ほっともっと」や「やよい軒」を運営するプレナス(福岡市)は先月30日、経営陣によるMBOが成立したと発表しました。臨時株主総会を経て上場廃止になる見通しとのことです。今回はMBOのスキームやメリット・デメリットについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、プレナス株の約41%を保有する創業家の資産管理会社「塩井興産」(長崎県佐世保市)が10月17日から11月29日まで、1株あたり2640円でTOBを行い、約89%まで買い進めることに成功したとされます。上場したままでは短期的な成果が求められ、業務の効率化や店舗の拡大といった経営改善が困難であることからMBOに踏み切ったとのことです。今後は残存株式についても完全に取得する手続きに入り、臨時株主総会を経て東京証券取引所から上場廃止になる予定としております。なお株式取得の具体的な手続きや実施時期等については塩井興産と協議の上決定していく予定とのことです。
MBOとそのメリット・デメリット
MBO(マネジメント・バイアウト)とは、上場会社の経営陣等が金融機関や投資ファンド等から資金を得て自社の株式を取得し、最終的に上場廃止とすることを言います。一般的には特別目的会社(SPC)や資産管理会社などを受け皿としてTOBなどを実施し、これらの会社と合併するといった手法を取ることが多いと言えます。MBOのメリットとしては、上場廃止して他の株主がいなくなることで、短期的な業績に左右されることなく、中長期的な経営戦略が採れること、また機動的な経営判断が可能となることが挙げられます。株主総会の開催や有価証券報告書の作成といったコストをカットできる面もメリットと言えます。一方で、非上場化によって市場からの資金調達や企業の知名度の向上、さらには経営陣に対する監視機能などが得られなくなるといったデメリットも存在すると言われております。
MBOスキームの流れ
MBOの流れは上でも述べたように、(1)受け皿となる会社を用意、(2)資金調達、(3)受け皿会社が対象会社の株式取得、(4)対象会社の子会社化、(5)対象会社と受け皿会社の合併といった流れを踏むこととなります。受け皿となるSPCを設立または既存の会社を利用することもあります。そして投資ファンドやプライベート・エクイティ・ファンドなどから投資を受け、株式調達資金を用意します。その後TOBなどを行って対象会社の株式を買い集め、その結果を見て残りの株式の取得を行い、受け皿会社の完全子会社とします。最後に両者を合併してMBO完成です。その後経営再建が成功し、安定したら再び株式市場に上場を目指すことを前提としてい場合もあり、この場合はその段階で投資ファンド等は資金回収することになると言えます。
株式取得の手法
受け皿となる会社が対象会社の株式を取得する手法はいくつか存在します。通常は株式公開買い付け(TOB)によって買い集め、その結果次第によって次の段階に入ります。まず1つ目の手法として全部取得条項付種類株式の取得が挙げられます。これはTOB後に株主総会特別決議で定款変更を行い、全ての株式を全部取得条項付種類株式に変更した上で取得します。この取得についても特別決議となります(会社法309条2項3号、11号)。次に株式併合の利用が考えられます。TOB後に残った少数株主の保有する株式が1株未満となる比率で株式併合を行い、1株未満となった端数を買い取るというものです。この株式併合もやはり特別決議を要します(180条2項、309条2項4号)。最後に特別支配株主による売渡請求の利用が挙げられます。これは総株主の議決権の90%以上を保有する特別支配株主が他の株主に株式を売り渡すよう請求する制度です(179条の10)。これはより簡易に残った少数株主をキャッシュアウトすることができる制度と言えます。
コメント
本件でプレナスは創業家の資産管理会社である塩井興産を受け皿としてTOBが行われておりました。それにより議決権ベースで89.27%まで買い集めることができたとされます。残りの株式の取得については今後両社で協議して決定する予定とされます。全部取得条項付種類株式に変更の上で取得するか、株式併合がなされるのではないかと考えられます。以上のように中長期的な視野で経営再建や業務の効率化を図る必要がある場合はMBOによって非上場化し、体制を立て直すことも有用と言えます。株式市場での上場は市場資本による資金調達や世間への知名度の向上、経営陣の監督といったメリットがある反面、短期的な成果が求められ、機動的で大胆な経営決定がしにくくなるといったデメリットがあります。近年会社法や税制などでこのような組織再編がやりやすくなる改革が進んできております。自社の現状にあった体制の構築を柔軟に検討していくことが重要と言えるでしょう。
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