JR東日本車両清掃中に「タイミー」作業員が死亡、スポットワークの注意点
2025/07/17 契約法務, 労務法務, コンプライアンス, 物流

はじめに
JR東日本の車両基地にて、車両の外板清掃員が作業中に倒れ、救急搬送された後に死亡していたことがわかりました。
作業員は「タイミー」を通じて就業していたとのことです。
今回はスポットワークの注意点について見ていきます。
事案の概要
JR東日本千葉支社の労働者などでつくる労組「国鉄千葉動力車労働組合」(千葉動労)は先月30日、「JR東日本の幕張車両センターで車両の外板清掃員が作業中に倒れ、搬送されたものの死亡した」と発表しました。
同労組のサイトによりますと、外板清掃はJR東日本がJR千葉鉄道サービスに委託し、更にスキマバイトサービス「タイミー」で募集した人材に再委託したものだったとされます。
JR千葉鉄道サービスは作業員が清掃中に体調不良になり死亡したことは事実としつつ、死亡原因は不明としています。
労災に該当するかについても労基署が現在調査中とのことです。
スポットワークとは
スポットワークとは、数時間や1日程度の短時間・単発の仕事をいいます。
特定の企業や職場に継続的に雇用されるのではなく、必要なときだけ、または働けるときだけ働くといった新しいワークスタイルと言えます。
事前のシフト提出や面接が不要な場合も多く、スマホやアプリでその場で応募ができ、即日払いが多いこともあって、近年、利用者が急増しています。
しかしその一方で、「事前に提示されていた給与が支払われない」、「急に仕事が中止になった」、「仕事を早上がりさせられた」といったトラブルも増えています。
そこで、厚労省は7月4日、スポットワーク協会に対し、スポットワークにおける適切な労務管理等についての通知を行いました。
通知では、スポットワークを利用する企業の労働関係法令遵守の必要性を改めて強調しています。それと同時に、労働者側にも向けたリーフレットも公表しています。
スポットワークの注意点
スポットワークを利用するにあたって、まず注意すべきは「労働契約の当事者」です。
スポットワークは、応募してきた労働者をスポットワーク仲介事業者が求人事業者に紹介する形となりますが、あくまでも労働契約を締結するのは「労働者」と「求人事業者」です。間に入った仲介事業者は、両者の労働契約に関し、契約当事者とはなりません。
そして、面接等を経ることなく先着順で就労が決定するマッチングの場合は労働者が応募した時点で労働契約が成立すると解されています。
契約成立後は、求人事業者側には、労働関係法令の遵守が求められます。
例えば、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業手当を支払うことが必要とされます。
すなわち、求人事業者側の都合で仕事がキャンセルになったり、早上がりさせる場合は当日分の賃金または手当の支給が必要になります。
また、業務に必要な準備行為なども労働時間に含まれるため、そのための時間に対しても賃金が発生することになります。
さらに、賃金については労働条件通知書などで示した額を一方的に減額したり、「別途支払う」としていた交通費などを支払わない場合も労働基準法違反となります。
その他の注意点
厚労省のリーフレットでは、上記以外にも、スポットワーク利用の注意点として、「通勤途中または仕事中のケガ」を挙げています。
スポットワーカーが通勤の途中または仕事中にケガをした場合、スポットワーカーは就労先の事業について成立する保険関係に基づき労災保険給付を受けることができるとされています(労災保険法7条)。
この場合、労災保険料については求人事業主の負担となります。
また、スポットワーカーの労災防止のため、労働安全法等に基づく各種措置も求められています。
そして、スポットワーカーに対するパワハラやセクハラなどハラスメント防止のため、労働施策総合推進法等に基づく各種措置などハラスメント対策も事業主の義務とされます。
つまり、一般の労働者・従業員と同様の配慮がスポットワーカーに対しても必要になるということです。
コメント
本件でJR東日本の車両センターで外板清掃に従事していた清掃員は「タイミー」を通じて応募してきたスポットワーカーといわれています。
この場合も清掃員はJR千葉鉄道サービスに直接雇用されている形となります。
そのため、業務と死亡との間に因果関係などが認められた場合は労災保険の対象となるものと言えます。
以上のように、スポットワーカーは仲介事業者に雇用されている者ではなく、あくまでも就労先の事業者と直接契約を締結する形となります。
そして、面接等がない場合はアプリ等に応募した時点で契約が成立することとされます。
その後は通常の従業員と同様に労働関係法令が適用され、急な仕事のキャンセルや早上がりには手当が必要となり、また事前に提示した賃金を一方的に減額することも違法となります。
スポットワーカーの利用を検討している場合は、これらを踏まえて適切な労務管理の準備をしておくことが重要と言えるでしょう。
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