ストラテジックがガンホーに請求、株主総会招集請求について
2025/07/28 商事法務, 総会対応, 会社法, エンターテイメント

はじめに
投資ファンド「ストラテジックキャピタル」(渋谷)が「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」に対し臨時株主総会の招集請求していたことがわかりました。議題は同社社長の解任請求とのことです。
今回は会社法の株主総会招集請求について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、ガンホー株を保有するストラテジックキャピタルは同社への株主総会招集請求に際して定款の一部変更と同社社長兼CEOの解任の議題を挙げているとされます。
同社定款では取締役の解任決議に際しては議決権の3分の2以上の賛成を要するとされており、会社法の規定よりも決議要件が強化されているとのことです。
また、ストラテジックキャピタルは、ガンホーがスマホアプリ「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」ヒットから13年にわたってそれ以外のヒット作を生み出せていないことなどを問題視し、同社社長の退任を求めているとされます。
なお、ストラテジックキャピタルはガンホー株を現在約500万株、保有割合にして7.5%保有しているとのことです。
株主総会の招集
株主総会は原則として取締役会が招集決定し、それに基づいて取締役が招集することとなっています(会社法296条3項)。
株式会社は年に1回、定時株主総会の開催が義務付けられていますが、それ以外でも臨時株主総会を招集することができます。これらを取締役会で決定し、一般的には代表取締役が招集するケースが多いとされています。
ちなみに、取締役会非設置会社の場合は取締役が招集決定し、招集することとなります。
一方で、一定の要件の下、株主にも株主総会の招集が認められています。株主固有の議題がある場合だけでなく、株主総会を招集すべきであるにもかかわらず、会社が適切な時期に招集しない場合にも株主主導で株主総会の招集ができるようになっています。
株主による招集手続き
株主が株主総会招集請求する要件として、総株主の議決権の3%以上の株式保有が必要です(297条)。
さらに、公開会社の場合は6ヶ月前から引き続き株式を保有することが求められます。この6ヶ月制限は、公開会社において株主の権利が濫用されることを防止する意味合いがあるとされています。
これらの要件を満たす株主は、取締役に対し株主総会の目的・招集理由を示して招集請求を行います。
招集請求をしたにもかかわらず、遅滞なく招集手続きが行われない場合、または招集請求を行った日から8週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられない場合は裁判所の許可を得て請求株主自ら株主総会を招集することができることとなっています(同4項)。
招集許可申し立てが裁判所になされると、裁判所は会社や請求者を審尋し、会社法の要件を満たしているかなどが審理されることとなります。
招集許可決定後の手続き
上記審尋の結果、裁判所が招集許可申し立てを却下した場合、申立て人は即時抗告をすることができます。
一方、許可決定がなされた場合は裁判所から申立て人に許可決定書が送付されます。許可を受けた申立て人は株主総会の目的や日時、場所を決定しますが、目的については裁判所が審尋を経て許可したもの以外を議題にはできないとされています。
そのうえで、申立て人自ら全ての株主に対し招集通知を発送します。
ちなみに、株主総会の議長については多くの会社では定款で定められていますが、株主が招集した株主総会には適用されないとされています。そこで、総会当日に出席株主の賛成をもって議長を定める必要があります。
その際に、会社側の取締役や代表取締役が選任されることには問題はないとされています。
コメント
本件でストラテジックキャピタルはガンホー社の株式の7.5%を保有しているとされ、株主総会招集請求の要件は満たしているものと考えられます。
このまま遅滞なく招集手続きが行われないか、8週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられない場合は裁判所に許可申立てがなされるものと予想されます。
審尋では会社側から権利濫用の主張がなされるケースもあり、許可決定が出るまで数ヶ月を要する場合もあります。
以上のように株主総会は会社だけでなく、一定の議決権割合を保有する少数株主も招集請求ができるようになっています。
株主総会は手続きに不備があった場合、事後、株主総会取消訴訟などに発展することもあります。
会社法の手続きなどを今一度見直し、備えておくことが重要と言えるでしょう。
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