ラクス、比較広告に係るTOKIUMとの訴訟の和解解決を公表
2022/08/02 広告法務, 不正競争防止法

はじめに
2022年7月28日、株式会社ラクスは株式会社TOKIUMに対して、2019年12月18日付にて東京地方裁判所に提起した不正競争防止法に基づく広告差止等請求訴訟について、2022年7月28日付で和解が成立したことを文書で公表しました。そこで今回は、両社の損害賠償請求訴訟の背景や和解の内容について見ていきましょう。
訴訟の提起から和解に至るまでの経緯
株式会社ラクスは、クラウド型経費精算システム「楽楽精算」をはじめとする業務効率化クラウドサービスを提供する、東証プライム上場中の注目SaaS企業です。同社の提供する「楽楽精算」は経理業務の効率化に寄与する様々な機能を搭載しており、多くの利用者から好評を得ています。
一方の、株式会社TOKIUMは、ペーパーレス経費精算クラウド「TOKIUM経費精算」と請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の2つのサービスを軸に事業を展開しており、2022年4月19日には、第三者割当増資で約35億円の資金調達を実施するなど、急成長中の企業です。
ラクス社の発表によると、TOKIUM社の運営するブログサイトにおいて、楽楽精算とTOKIUM社の提供する経費精算システムとの比較広告が掲載されており、当該比較広告では「楽楽精算」の機能や特徴等について事実とは異なる表示がされていたそうです。この事実を確認した後、ラクス社は当該表示が不正競争防止法に抵触するものであると判断したため、2018年12月11日付でTOKIUM社に対し警告書を送付しています。また、警告書送付と併せて、当該比較広告の差止または修正についても求めていました。
しかし、その後も事実と異なる比較広告の掲載を続けたため、2019年12月18日、ラクス社はTOKIUM 社に対し、①不正競争防止法に基づく広告差止請求と②信用棄損行為に対する損害賠償請求として800万円の支払いを求め、東京地方裁判所に提訴しています。両社は、提訴後2年半強にわたり係争を続けて来ましたが、この度、本件訴訟の早期解決を図る観点から、和解することとなりました。
不正競争防止法第3条(差止請求権)
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不正競争防止法第4条(損害賠償)
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和解の内容
両社が合意した和解の内容としては、
(1)TOKIUM社がラクス社が求めた比較広告の中止及び必要な修正に応じること
(2)今後違法な比較広告を行わないこと
(3)TOKIUM社はラクス社に対して和解金5百万円を支払うこと
等が主たる内容となるとのことです。なお、和解内容の詳細については、和解契約内の秘密保持条項との兼ね合いから、公開は差し控えるとしています。
コメント
今回の訴訟は、TOKIUM社による比較広告が契機となりましたが、この“比較広告”については、景品表示法第5条に、「自己の供給する商品・サービスの内容や取引条件について、競争事業者のものよりも、著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される表示などを不当表示として規制する」旨の規定があります。
※もっとも、景品表示法は行政法規という位置づけのため、同条違反を直接の根拠としての民事上の請求は難しく、それゆえに、今回ラクス社は不正競争防止法に基づく請求を行ったと見られます。
その一方で、比較広告自体は禁じられておらず、消費者庁では比較広告に関するガイドラインを公表しています。
「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(比較広告ガイドライン)
今回の訴訟のように、競合他社との比較広告は、一つ間違うと紛争に繋がるリスクがあります。比較広告を行う際は、上記ガイドラインを参考にした慎重な運用が求められます。
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