QAで学ぶ契約書作成・審査の基礎第30回 秘密保持契約(契約条項2)
2022/08/15   契約法務, 不正競争防止法

今回も、前回に引続き、「(単発式)相互NDA」(両当事者が相互に秘密情報を開示する秘密保持契約書)として筆者が作成したひな型(以下「本NDA」)の各条項について解説していきます。今回は以下のQ4~Q6です。本NDA全文のPDF/Wordはこちらにあります。

Q1:契約前文

Q2:秘密情報の定義

Q3:秘密情報から除外される情報 (以上第29回

Q4:秘密情報の開示方法(秘密表示等)

Q5:使用目的の制限

Q6:開示の制限

Q7: 秘密情報の管理/複製制限/漏えい等の報告・対応/附帯条件

Q8: 秘密保持期間

Q9: 開示禁止の例外

Q10: 秘密情報の使用中止・返還・破棄等

Q11: 秘密情報の知的財産権・保証等

Q12: 差止・損害賠償

Q13: 契約解除・秘密保持義務等の存続

Q14: その他(輸出管理規制・完全合意・裁判管轄等)/契約書末尾

Q15: 別紙(秘密情報の特定・秘密保持期間・使用目的・附帯条件)

 

Q4秘密情報の開示方法(秘密表示等)


A4: 以下に規定例(第1条第3項~第8項)を示します。
 

第1条(秘密情報等の定義・開示方法)


1. (秘密情報の定義:前回解説)


2. (秘密情報から除外される情報:前回解説)


3.各当事者は、秘密情報を、書面(電子メール、電子ファイルその他電子的なものを含む。以下同じ)、記録媒体、物等、それに関し秘密情報である旨の記載(以下「秘密表示」という)をすることが容易なものによって開示する場合には、かかる秘密表示をした上で当該情報を相手方当事者に開示するものとする。


4.各当事者は、秘密情報を、口頭、視覚等、秘密表示が不可能または困難な方法・手段で開示する場合には、その開示の時に、相手方当事者に対し当該情報が秘密情報である旨明示した上で当該情報を相手方当事者に開示するものとし、かつ、当該情報を特定できる程度に記載した書面(以下「要約書」という)に当該情報が秘密情報である旨明記し、当該要約書を、当該開示の時または開示前もしくは開示後10日以内に、相手方当事者に提供するものとする。


5.各当事者は、前二項に定める措置に加えまたは当該措置に代えて、パスワードの設定を含め、明確な技術的または物理的なアクセス制限措置を講ずることにより、秘密情報を相手方当事者に開示することができるものとする。


6.各当事者は、相手方当事者から受領した情報が、その性質・内容またはそれが開示された状況から合理的に見て秘密情報であると判断すべき場合には、前三項に定めるいずれの措置も講じられていないときでも、当該情報を秘密情報として取り扱うものとする。


7.各当事者は、相手方当事者から秘密情報を受領した場合、相手方当事者が要求したときは、当該情報またはその要約書の受領を確認する書面を相手方当事者に提供するものとする。


8.秘密情報またはその内容が複製されまたは他の情報に含められた場合でも、当該複製等された情報・内容は秘密情報に含まれるものとする。


【解 説】


【秘密表示等の目的】上記の第1条第3項・第4項のように、書面等で開示される情報についてはその書面上に“Confidential”等の表示をすること、口頭等で開示される情報については、開示時にその旨明示した上後でその要約書を交付して受領者に提供すること(以下総称して「秘密表示等」)は、両当事者で交換される公知情報を含む様々な情報の内、どれが秘密保持等の義務の対象となる秘密情報であるかを明確に特定するという意味があります。本NDAでは、別紙で「秘密情報」を特定することにしていますが、実際の開示の場面で秘密表示等を行うことにより、更に具体的・明確に「秘密情報」を特定することができ、また、別紙における特定の表現が広くまたは抽象的である場合に、より確実に秘密情報を特定することができます。

これは、受領者にとっては、自己が秘密保持義務を負うべき対象を明確にさせるという意味、開示者にとっては、不競法上の「営業秘密」の秘密管理要件を満たすための最低限の条件である、開示者の秘密管理意思をより確実に受領者に明示し認識させるという意味があります。

【「秘密情報」の定義に秘密表示等を含めるか否か】他のNDA例では、「秘密情報」を秘密表示等がなされたものに限定して定義しているものもよくあります。しかし、この場合、秘密表示等がなされなかった情報は、如何に重要かつ秘密性が高い情報であっても秘密情報として扱われないという事態が生じる可能性があります。特に口頭等で開示された情報についてはそのような事態が生じ易いと思われます。

また、この場合、開示者は秘密表示等を厳格・完全に行う必要があるので、結果として、秘密情報の円滑な交換が阻害されてしまうおそれもあります。

そこで、本NDAでは、秘密表示等を「秘密情報」の要件とはせず開示者の義務にとどめています。この場合、開示者が秘密情報のつもりで開示したが秘密表示等を怠った情報については、受領者がそれらを秘密情報として扱わず使用・開示した場合、以下のようになると考えられます。

(a)別紙において秘密情報が包括的・抽象的に記載されている場合、その情報が秘密情報か否か争われる可能性があり、受領者のNDA違反を追及することが困難となる可能性がある。

(b)別紙において秘密情報が明確かつ具体的に記載されていれば、なお、受領者のNDA違反を追及することは可能と思われる。

なお、開示者の秘密表示等義務違反の効果としては、損害賠償が考えられますが、受領者が秘密表示等義務違反それ自体により損害を蒙る可能性は低いのではないかと思われます。

第1条第3項:秘密表示が容易な場合の秘密表示 [1]

【書面(電子メール、電子ファイルその他電子的なものを含む。以下同じ)】書面で開示する場合です。書面には電子メール、電子ファイル等が含まれるとしています。

【記録媒体】例えば、CD等に秘密情報を格納(記録)して開示する場合です。

【物等】例えば、社外未公開の機械・装置・化学物質等、物自体が秘密情報の場合です。

第1条第4項:秘密表示が困難な場合の秘密表示

【口頭、視覚等、秘密表示が不可能または困難な方法・手段で開示する場合】秘密情報は、口頭、視覚(例:工場・製造プロセス視察・実演・(動)画像)、聴覚(例:音)、その他、それに関し秘密情報である旨の記載(秘密表示)をすることが不可能か困難な方法・手段で開示される場合もあります。

特に本当のトップシークレットは口頭で伝えられることも多いでしょう。上記規定(第1条第4項)では、当該情報の開示の際に「これからお話することは秘密です」等と伝え、かつ、②当該情報を特定できる程度に記載した書面(要約書)に当該情報が秘密情報である旨明記し、その要約書を、当該開示の時または開示前もしくは開示後10日以内に相手方当事者に提供することとしています。

口頭等で開示された情報は、受領者にとっては、そのままでは、それを受領者の社内で秘密情報と認識・管理することは困難ですからこのような手続が必要となります。また、開示者にとっても、この手続を行うことにより、その情報について、不競法上の「営業秘密」として開示者の秘密管理意思を受領者に明示し認識させることができます。

【「当該開示の時または開示前もしくは開示後10日以内に」】秘密情報を口頭等で開示した場合のその秘密情報の要約書の提供時期について、他のNDA例では単に「開示後〇日以内に」とされ開示後に提供すると読まれがちな規定になっています。しかし、実際には、開示後の要約書提供は実行されないか忘れられてしまうことも多いと思われます[2]

このようなことを避けるためには、少なくとも自社が開示者で、特に自社にとり重要な情報を口頭等で開示する場合、①予め要約書を用意し、②開示の際(例:会議・工場視察の際)または開示前に相手方に要約書2部を交付し、③開示の際または開示後速やかに受領確認署名した要約書1部を返却させるのがよいと思われます。文書等の秘密情報の場合と同様、この要約書の交付・署名返却は電子メールの添付文書としてやりとりする等の電子的手段によってもよいでしょう(但しセキュリティー確保は必要)。

なお、この要約書の内容は、後日、その秘密情報の使用・開示の差止請求等を行うこととなった場合においてその秘密情報を特定できるレベルで十分であり[3]、それ以上具体的・詳細な記載を要しないと思われます(例:「○○の成分表」のようにし内容の記載は不要)。

第1条第5項:アクセス制限による秘密表示等の補完・代替

例えば、電子データ形態の文書、映像、音声等にそれらを閲覧・視聴するためのパスワードを設定して送付・開示する場合、M&Aのデューデリジェンス等において、VDR(バーチャルデータルーム)、ファイル共有サービス等[4]を利用し電子化された関連資料に技術的なアクセス制限をして開示する場合、会議室等に置かれた文書に入退室等の物理的アクセス制限を行い開示する等の場合も、受領者にそれが秘密情報と認識・管理させ、開示者の秘密管理意思を明示する効果があると考えられます[5]。そこで、本NDAでは、上記の秘密表示等に加えまたはこれに代えて、これらのアクセス制限措置を講ずることにより、秘密情報を開示できるものとしています。

第1条第6項:性質・内容・開示状況から秘密情報とみなすべき情報

ある情報が上記の秘密表示等もアクセス制限もされずに開示されたが、受領者がその情報は本来秘密情報であると認識できるような場合、それにもかかわらず、そのことを理由として受領者が当該情報を自由に利用・開示できるとすることは適切ではないと思われます。そこで、この場合には、秘密表示等・アクセス制限がなくても受領者は秘密情報として取り扱うべきこととしています。

但し、当該情報について、開示者が受領者のNDA違反の責任を追及するには、開示者が当該情報がそのような情報であることの立証責任を負うことになります。従って、やはり、開示者としては、上記の秘密表示等やアクセス制限秘密を励行すべきです。

第1条第7項:秘密情報の受領書交付

秘密情報またはその要約書の受領書交付義務を規定した理由は、もし、受領書を要求できないとすると、開示者の手元にあるのは、せいぜい、その情報を相手方に提供したという内部記録のみです。そこで、予め受領書を取り付けておいて、後日、その情報についてNDA違反を追及しようとした場合に、受領者にその情報を確かに開示したという立証ができるようにしたものです。

第1条第8項:複製等された秘密情報の扱い

秘密情報の内容が複製されまたは他の文書等にその一部として含められた(組み込まれた)場合でも、内容として同一ならその複製されまたは含められた情報が秘密情報に該当することは当然ですが、これを確認的に規定したものです。他のNDA例では、複製の制限・禁止等の条項で複製について規定されることが多いのですが、本NDAでは、NDA全体に関係することなので、ここで規定しています。

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Q5:使用目的の制限


A5: 以下に規定例(第2条第1項)を示します。
 

2条(目的制限、秘密保持、複製制限、秘密保持期間等)


1.各当事者は、相手方当事者から受領した秘密情報を、別紙に定める目的のためにのみ使用することができるものとする。各当事者は、本契約の存在等を本協議等の目的のためにのみ使用することができる。以下、これらの目的を使用目的という。


第2条第1項:使用目的の制限

開示者は、受領者に対し、①秘密情報の使用目的を明確にしてその使用を同目的に制限させること(使用目的の制限)、および、②その使用目的のために知る必要がある者等にのみ秘密情報を開示させそれ以外の開示を禁止すること(開示の制限)が必要です。

従って、受領者が負う義務は、単に秘密を保持する義務ではなく、正確には使用目的と開示の制限に関する義務です(但し本稿でも便宜上これらを総称して「秘密保持義務」という場合がある)。

時として、秘密情報の無断開示だけが禁止されていてその使用目的が限定されていないNDAの例を見ることがあります。しかし、これでは、受領者の社内であれば、秘密情報を外部に開示しない限り、どのような目的のためにでも使用・流用できることになり不適切です。[6]

【使用目的の記載箇所】使用目的は、前回第29回でも述べたように、以下のように実質上NDAの前文で記載されている例も多く見かけます。

 

秘密保持契約書


                  (以下「甲」という)および                  (以下「乙」という)は、甲乙間の○○の分野における業務提携の可能性を検討することを目的(以下「本目的」という)として、相互に開示される情報の秘密保持その他の事項に関し、以下の通り契約(以下「本契約」という)を締結する。


上記の太字部分が「○○の分野」という限定もなく、単に「甲乙間の業務提携の可能性を検討すること」が「本目的」になっている場合もあります。

しかし、このようにNDAの前文に使用目的を短く記載する方式では、使用目的があまりに広く抽象的で使用目的を適切に制限できていない可能性の他、以下のような場合には使用目的を柔軟に記載しにくいという問題があります。

(a)使用目的を詳細・厳密に限定したい場合。

(b)同じNDAで開示する秘密情報ごとに使用目的を変えたい場合。

(c)両当事者から相手方に開示する秘密情報の使用目的が両者間で共通でない場合。

そこで、本NDAでは、別紙において、各当事者ごとに(秘密情報・秘密保持期間とともに)使用目的を記載できるようにしています。

【別紙における使用目的の記載方法の例】その適否は別として、一応、以下のような記載例が考えられます。

・「甲乙間の○○の分野における業務提携の可能性を検討すること」

・「甲乙間の業務提携の可能性の検討」

・「甲乙間の○○○○の共同開発」

・「甲乙間の○○○○の共同開発の可能性の評価・検討」

・「乙が甲の秘密情報についてライセンスを受けるか否かを評価・検討すること」

・「乙の○○○○(技術等)を甲の××××(製品・サービス等)に使用することの評価・検討」

・「甲から乙への○○○○開発・製造委託」

【使用目的の広狭・抽象度】使用目的の記載は広くまたは抽象的に記載されればされる程、受領者の観点からすれば開示者の秘密情報を自由に使用できる範囲が広くなります。反対に、開示者の観点からすれば予想外の目的に使用されるリスクが増大することになります。

例えば、使用目的を、単に「甲乙間の業務提携の可能性の検討」のように記載することとした場合、現実の使用目的のほとんどがこれに含まれ得るため、NDAを実際に使用する事業部門も使用目的をどのように記載すべきか頭を悩ませる必要がなく、また、どのようなプロジェクトの使用目的にもこの記載を使えるかもしれません。しかし、これでは使用目的をほぼ限定していないことにもなり、仮に受領者が秘密情報を開示者製品の競合品の開発目的で使用しても「業務提携の可能性の検討」のためだったと主張できる余地があるように思われます。

一方、受領者の立場からは、受領者が開示者の秘密情報を使用する目的が十分カバーされていなければなりません。

従って、当事者としては、自社が相手方に開示する秘密情報については使用目的が適切に限定されているか、自社が相手方から受領する秘密情報については、自社が想定している使用目的が十分にカバーされているかという観点から使用目的の記載をチェックする必要があります。

【「各当事者は、本契約の存在等を本協議等の目的のためにのみ使用することができる。」】秘密情報の内、「本契約の存在等」の使用目的は「本協議等」(いずれも第1条第1項で定義)であることは別紙に記載するまでもなく分かっていることなので、ここで記載しています。

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Q6:開示の制限


A6: 以下に規定例(第2条第2項)を示します。

2.各当事者は、秘密情報を厳に秘密保持するものとし、これを使用目的のために知る必要がある取締役、役員もしくは従業員、または、使用目的達成のために各当事者が専門的助言等を依頼する弁護士、弁理士、公認会計士、税理士その他の依頼者の情報の守秘義務が法律上課されている者にのみ開示することができるものとする。各当事者は、これらの者に対し、使用目的達成に必要な合理的範囲でのみ秘密情報を開示するとともに、その使用目的、秘密保持義務等を明示の上自己が本契約上負う義務と同等の義務を課し、かつ、これらの者による当該義務の違反に対し責任を負うものとする。


【解 説】


【取締役・役員・従業員の限定】自社が非常に重要な秘密情報を開示する場合、例えば、「... これを使用目的のために知る必要がある取締役、役員もしくは従業員であって別紙で特定された者...にのみ開示する」のように別紙において取締役・役員・従業員(または部署)を具体的に特定・記載することが考えられます。但し、本NDAは両当事者が秘密情報を開示する相互NDAですから、その場合は相手方も同様な限定を求めるでしょう(従って、このような限定は、自社だけが開示者の片務的NDAで使われることが多い)。

【「使用目的のために知る必要がある」】この「知る必要」は、英文NDAで使われることが多い“a need to know”に由来するもので、当然とも思われます。しかし、これを明記すれば、同じ受領者の社内の者であっても、指定された使用目的達成等のためでなく単なる個人的興味や不正目的(例:インサイダー取引)等の目的では、例え、役員等であっても開示してはならないことが明確になります。

【「...弁護士、弁理士、公認会計士、税理士その他の依頼者の情報の守秘義務が法律上課されている者」】この部分を、例えば、「弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、その他のアドバイザー、コンサルタント等の外部専門家」等として範囲を広げることも考えられます。しかし、このような「外部専門家」には、極端に言えば、開示者の競業者・企業等も含まれ得るので、本NDAでは、弁護士等、依頼者の情報の守秘義務が法律上課されている者に開示先を限定し、仮に弁護士等以外の外部専門家に開示する必要があれば受領者の申請に基づき開示者が個別に許否を判断することとしています(または後述の附帯条件として別紙に記載)。

【「使用目的の制限、秘密保持義務等を明示の上自己が本契約上負う義務と同等の義務を課し」】この義務を課す方法としては、契約の他、取締役・役員・従業員の場合、それが法的拘束力を有するものである限り、受領者とこれらの者との間の委任・雇用関係または就業規則等に基づく守秘義務が含まれます。弁護士等の場合は弁護士法(23条)等に基づく職業上の守秘義務[7]が含まれます。但し、これらの者が受領者が本契約上負う義務と同等の義務を負う前提として、受領者から当該秘密情報の使用目的やそれが秘密保持義務の対象であることを明示し認識させなければなりません

受領者からその関連会社等への開示】100%子会社であっても法人格は異なり、上記の「外部業者」と同様のリスクは否定できません

従って、開示者にとり安全なのは、(i) NDA上は子会社への開示は規定しない(必要な場合は受領者の申請に基づき個別に許否を判断する)か、または、(ii)規定するとしても会社名等で具体的に特定すること(およびその会社が受領者の子会社である間に限定)することです。

単純に「受領者が〇%以上の株式を有する受領者の関連会社」等とした場合には、NDA締結後に受領者が買収した開示者の競合企業が含まれてしまうリスクがあります。

最初から子会社への開示が予定されているような場合には、その子会社もNDAの当事者に含め、親会社に親会社自身のみならずこれら子会社に代理してNDAに署名させる形式をとることも考えられます。

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今回はここまでです。

 

「QAで学ぶ契約書作成・審査の基礎」シリーズ:過去の回


 

[8]

【注】                                   

[1] 【秘密表示が容易な場合の秘密表示】経済産業省「営業秘密管理指針」(最終改訂:平成31(2019)年1月23日)(P10,11)では、データなどの電子媒体で保管している場合に関し、記録媒体へのマル秘表示の貼付/電子ファイル名・フォルダ名へのマル秘の付記/営業秘密たる電子ファイルを開いた場合に端末画面上にマル秘である旨が表示されるように、当該電子ファイルの電子データ上にマル秘を付記(ドキュメントファイルのヘッダーにマル秘を付記等)/記録媒体そのものに表示を付すことができない場合には、記録媒体を保管するケース(CDケース等)や箱(部品等の収納ダンボール箱)にマル秘表示を貼付すること、等が例示されている。

[2] 【口頭等での開示後の要約書提出】以下の資料では、要約書提出が規定されることが典型的な米国のNDAにおいても、要約書の提出は実際には行われていないことが多いと指摘されている。(参考) D. Patrick O'relley, D. Brian Kacedon "Drafting Patent License Agreements, Eighth Edition" December 15, 2015, Bloomberg BNA p 432, 433

[3] 【差止請求における特定の程度】 以下の参考資料によれば、「営業秘密の開示、取得又は使用の差止請求をする場合には、当該営業秘密を、訴訟の審理における双方当事者の攻撃防御のためだけでなく、判決に基づいてこれを執行することが可能な程度に特定することが必要になると解されている」とされる。髙部眞規子 「実務詳説不正競争訴訟」 金融財政事情研究会 2020年12月 p 232.

[4] 【VDR(バーチャルデータルーム)、ファイル共有サービス等】 (参考) NRIセキュアテクノロジーズ株式会社「VDR(バーチャルデータルーム)基礎知識。活用法から製品選びの注意点まで

[5] 経済産業省「営業秘密管理指針」(最終改訂:平成31(2019)年1月23日)(p 11, 12)でも、技術的アクセス制限に関し、営業秘密たる電子ファイルそのもの又は当該電子ファイルを含むフォルダの閲覧に要するパスワードの設定/外部のクラウドを利用して営業秘密を保管・管理する場合の階層制限に基づくアクセス制御を例示し、また、物理的アクセス制限に関し、扉に「関係者以外立入禁止」の張り紙を貼る/警備員を置いたり、入館 ID カードが必要なゲートを設置したりして、工場内への部外者の立ち入りを制限する等の措置を例示している。

[6]【秘密情報の流用】中小企業庁「中小企業の知的財産・ノウハウの保護に関する現状と課題」2020年7月22日. p 12-13.には秘密情報を開示した相手方企業による流用の例が記載されている。

[7]【弁護士の守秘義務】 (参考) 宮本健太「弁護士の守秘義務の範囲は?守秘義務の内容を事例で解説」ベリーベスト弁護士法人

[8]

 

【免責条項】


本コラムは筆者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラムに関連し発生し得る一切の損害等について当社および筆者は責任を負いません。実際の業務においては, 自己責任の下, 必要に応じ適宜弁護士のアドバイスを仰ぐ等してご対応ください。

 

 

【筆者プロフィール】


浅井 敏雄  (あさい としお)


企業法務関連の研究を行うUniLaw企業法務研究所代表/一般社団法人GBL研究所理事


1978年東北大学法学部卒業。1978年から2017年8月まで企業法務に従事。法務・知的財産部門の責任者を日本・米系・仏系の三社で歴任。1998年弁理士試験合格 (現在は非登録)。2003年Temple University Law School  (東京校) Certificate of American Law Study取得。GBL研究所理事, 国際商事研究学会会員, 国際取引法学会会員, IAPP  (International Association of Privacy Professionals) 会員, CIPP/E  (Certified Information Privacy Professional/Europe)

【発表論文・書籍一覧】


https://www.theunilaw2.com/


 

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