東京地裁が一部返還命令、宅建業の仲介手数料について
2019/08/14 不動産法務

はじめに
賃貸住宅の仲介手数料は原則家賃の半月分であるとして借り主が不動産仲介の「東急リバブル」(渋谷)に対し手数料一部返還を求めていた訴訟で7日、東京地裁は一部返還を認める判決を出しました。業者側は1ヶ月分とする承諾を得ていなかったとのことです。今回は宅建業の仲介手数料について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、原告側の男性は2013年1月8日、同社の担当者に対し物件を借りたい旨の連絡をし10日に担当者から契約締結をいつ行うかについて連絡を受けたとされます。その後男性は20日に契約を交わし22日に同社が請求した家賃1ヶ月分に相当する22万5000円の仲介手数料を支払いました。しかしその際に仲介手数料は原則半月分であるとの説明もなく、1ヶ月分の手数料を受け取る承諾も得ていなかったとして、男性は支払った手数料の半分の返還を求め提訴していたとのことです。
不動産仲介手数料に関する規制
宅建業法46条によりますと、宅地建物取引業者が不動産の売買や賃貸などを仲介した際に受け取ることができる報酬の額は国土交通大臣が定めるとしています(1項)。そしてその額を超えて報酬を受けてはならないとされており、国土交通大臣が定めた報酬額を事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲示しなければならないとしています(2項、3項)。また47条2号では宅建業者の禁止事項として「不当に高額な報酬を要求する行為」が挙げられており、違反した場合には1年以下の懲役、100万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(80条)。
具体的な仲介手数料の額
昭和45年建設省告示第1552号によりますと、賃貸借の媒介または代理の場合は依頼者の承諾を得ている場合は1ヶ月分の賃料の1.08倍を、承諾がなければ0.54倍を報酬として受け取ることができます。不動産売買の媒介の場合は不動産価格に次の割合を乗じたものとなります。①価格が200万円以下の場合は5.4%、②200万円~400万円の場合は4.32%、③400万円を超える場合は3.24%となります。
宅建業者の説明義務
宅建業法35条1項では1号から14号まで宅建業者が不動産の売買や賃貸を仲介する際に説明しなければならない事項を詳細に規定しております。具体的には当該不動産の登記内容や都市計画法などによって制限がかかっていないか、水道や電気などのインフラの整備状況といった不動産自体に関することから報酬や契約解除、損害賠償や違約金、瑕疵があった場合の措置といった契約自体に関することまで挙げられております。
コメント
本件で東京地裁は業者が賃料の1ヶ月分を報酬として請求するには仲介をする前に承諾を得る必要があるとし、本件では担当者が原告男性に契約締結日を連絡した10日に仲介が成立したとして、その時点で承諾を得られていないと認定し、1ヶ月分の報酬を受取ることはできないとしました。つまり契約成立までに原則は半月分である旨の説明と1ヶ月分を受け取る承諾を得なければならないということです。上記のように宅建業者は仲介の際にはかなり細かな説明義務が課されており、報酬などの契約に関する事項も含まれておりますがこの判決でより明確化されたものと言えます。実際には手数料は原則半月分ということは一般にはほとんど知られておらず、また仲介の際にも説明がなされているケースは少ないと言われております。不動産仲介業を行っている場合だけでなく、仲介を依頼する場合にもこれらの説明がなされているかを慎重に確認しておくことが重要と言えるでしょう。
関連コンテンツ
新着情報
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-26-2五反田サンハイツビル2階

- 解説動画
斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分

- ニュース
- 最高裁、父親の性的虐待で賠償認めず、民法の除斥期間とは2025.4.23
- 子どもの頃に性的虐待を受けたとして40代の女性が父親に損害賠償を求めていた訴訟で16日、最高裁...
- 弁護士
- 福丸 智温弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号

- まとめ
- 中国「データ越境移転促進・規範化規定」解説2024.4.23
- 中国の現行法令上, 香港・マカオ・台湾を除く中国本土内(「境内」)から境外への個人情報等の移転...

- 業務効率化
- Hubble公式資料ダウンロード

- 解説動画
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- セミナー
森田 芳玄 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 パートナー/東京弁護士会所属)
- 【オンライン】IPOを見据えた内部調査・第三者委員会活用のポイント
- NEW
- 2025/05/21
- 12:00~12:45

- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード