最高裁が初判断、マンション管理組合について
2017/12/20 不動産法務

はじめに
マンション管理組合の理事会が理事長を解任できるかが争われていた訴訟の上告審で最高裁は18日、解任できるとの判断を示しました。マンション管理のトラブルに影響を与える判決となるものと思われます。今回はマンションに関する区分所有法上の規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、2013年、福岡県内のマンションの管理組合理事長であった男性がマンションの管理会社を変更しようとしたところ他の理事らが反発し、マンション住民に理事長を解任した旨通知したとのことです。マンションの管理規約では「理事長は理事の互選で選ぶ」と規定されていますが、解任については何ら規定されていなかったとされます。理事長であった男性は解任は無効であると主張して提訴、一審、二審は「在任中の理事長の意に反して理事会が地位を失わせるのは許されない」とし解任は無効としていました。
区分所有法による規制
マンションなどの建物内部が構造上区分され独立して住居や店舗、事務所などに利用できる建物については、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)が適用されます。マンションは通常一つの建物内に多くの部屋を有し、それぞれが独立の所有権の対象となっております。これを「専有部分」といい(区分所有法2条3号)、それ以外のエレベーターやロビーなどは「共用部分」といいます(同4号)。そして専有部分の全所有者はマンションの敷地に関して共同して権利を有しております。これを「敷地利用権」といい(同6号)、敷地を共有していることになります。所有権ではなく地上権や賃借権を準共有している場合もあります。一つの建物に多くの人が部屋を所有して居住することから特別な法規制がなされているということです。そして住民はそれぞれが管理組合の構成員となり共同で管理を行っていくことになります。
マンション管理組合とは
マンションの共用部分や敷地についての管理を行う団体を管理組合と言います。マンションの専有部分を購入し所有者となった者は全員自動的に構成員になります(3条)。一般的には管理組合の中に、組合員の決議で决定した管理方針を執行する「理事」、監督する「監事」などが置かれることになります。これは会社法上の株式会社の機関に似ており、会社の所有者であり最高意思決定機関である株主総会が組合総会に、取締役、代表取締役が理事、理事長に、監査役が監事に相当するものと言えます。この組合総会で管理規約を承認し、また理事などを選任することになります(25条1項、31条1項)。
マンション管理者
25条1項では「区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる」としています。管理者を置くかどうかは任意で、置かなかった場合は区分所有者全員でマンションの共用部分などを管理することになります。通常は組合総会で理事が選任され、その中から理事長が選任されることになり、その理事長が管理者となります。国土交通省が定める標準管理規約でもそのように定められ、多くのマンションの管理規約もそれを参考に設定されております。マンション管理者は区分所有者に代わって管理会社や保険会社と契約したり訴訟の当事者となるなどの包括的な代理権が与えられます。
コメント
区分所有法では上記のようにマンション管理者の選任・解任は区分所有者が行うことになっております。しかし一般的にはマンション管理者は管理組合の理事会が選任した理事長がなっております。そして理事長の選任は管理規約では理事会の決議か理事の互選で選ぶ旨が規定されていることが通常で、国交省の標準管理規約でもそのようになっております。つまり理事長の解任については規定されておらず、理事会または理事の多数決で解任することができるかが問題となっております。本件で最高裁は「選任は原則、理事会に委ねられており、理事会の過半数による解任も理事に委ねられている」として規定がなくとも解任が有効である旨しめしました。マンションの管理方針にを巡り理事長と他の理事、または住民とで対立が生じることは多く見られ、訴訟に発展することもあります。今回の判決はこういったマンション管理トラブルに一定の影響を与えるものと言えます。マンションの管理規約を新しく定める場合や、マンション管理組合と契約を締結する際には、今回の判決を念頭に、慎重に条項を定めることが重要と言えるでしょう。
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