シャープ「IGZO」商標無効 知財高裁
2015/03/03 知財・ライセンス, 商標関連, 商標法, メーカー

事案の概要
シャープの液晶パネルに使われる「IGZO(イグゾー)」を巡り、科学技術振興機構(JST)は特許庁に登録無効を求め、同庁は2014年3月、商標登録を無効とするとの審決を下した。シャープはこれを不服として2014年4月、知財高裁に審決の取消しを求めて提訴した。知財高裁は2015年2月25日、シャープの請求を棄却した。
IGZO(イグゾー)とは
「IGZO」とは、液晶パネルの主要材料であるインジウム、ガリウム、亜鉛、酸素からなる酸化物半導体の英語表記の頭文字を組み合わせた略称である。シリコン半導体を使う従来の液晶パネルに比して、高画質の画像を表示しながら、消費電力も大幅に抑えられるのが特長である。
シャープは、2011年、「IGZO」の商標登録を特許庁に出願しており、一旦は認められていた。
争点
JSTは、多くのメーカーがIGZOに関する研究開発をしていたのに、シャープだけが商標として独占利用するのはおかしい、研究者が原材料名の略称を自由に使えないのは不合理であるなどとして、「商品の原材料を表示するのみの商標登録は認められない」との商標法の規定を根拠に特許庁に無効審判を申し立てていた。
これに対し、シャープ側は、「IGZOの技術で商品を量産、販売しているのは当社だけで、宣伝・販促活動の結果、イメージが定着した。当社の商標と認められることは合理的な理由がある」と主張していた。
判決は、IGZOがインジウム、ガリウム、亜鉛、酸素からなる半導体の略称で、シャープが商標登録した2011年には半導体そのものを指す用語としてエレクトロニクス業界で使われ、商標法が認めない「原材料のみを表示する商標」に該当するとした。また、「商品取引の表示名として業界の誰もが使用を希望していた」ものであり、「特定企業による独占使用を認めることが公益上適当とはいえない」とし、無効審決が妥当であると判断した。
今回、商標が無効とされても、シャープは独占利用ができなくなるだけで、引き続き製品名などで使うことは可能である。また、今回の判決はアルファベットの「IGZO」に限定したものであり、「イグゾー」など同社が別途持っている登録商標には影響しない。
コメント
シャープは、これまでイグゾー技術を使った高精細かつ低消費電力の液晶パネルの名称として、「IGZO」を自社のスマートフォンやタブレット端末、モニターの宣伝に活用しており、「IGZO」はシャープの主要事業である液晶事業にとってブランド力の象徴となっている。
シャープは今回の敗訴について、「業績に与える影響はない。」としている。しかし、今回の判決により、他メーカーが商品名に「IGZO」を用いた製品を売り出すことが可能となれば、シャープのブランド力が揺らぐ懸念は拭えない。
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