【佐世保殺害事件】改めて問われる死亡した被害者報道のあり方
2014/08/04 法務相談一般, 民法・商法, その他

事案の概要
長崎県佐世保市で高校1年の同級生を殺害したとして女子生徒が逮捕された。少年法61条は、家庭裁判所の審判に付され公訴された少年の氏名、年齢、容ぼう等本人を推知させる報道をしてはならないとする。報道機関は未成年事件に対する顕名報道を避けている。
もっとも、死亡した被害者に対しては原則として実名による報道がなされているのが現状である。未成熟な少年を保護、更生を可能とする目的で未成年加害者の実名報道は回避され、一方では死亡した未成年被害者は実名による報道がなされている。死亡した人間にはプライバシー権も観念できないとして実名報道がなされるのであろうか。県未成年加害者の実名も報道すべき、被害者も匿名で報道すべきだといった様々な意見が出ており報道のあり方が改めて問われている。
コメント
事件を起こした未成年加害者が健全に成長し更生するに際して実名公表が大きな影響を与えることは想像に難くない。また、報道機関による犯罪被害者等の心情に対する配慮を欠いた報道例は少なくないながらも、警察の情報提供を受けた報道機関がどのような報道をするかは報道の自由により自らの責任において決定すべきであり、それが市民の知る権利にも資するという考えもある。
未成年の加害者の匿名報道に対し死亡した被害者のみが実名で報道されることについて疑問を呈する声が再度大きくなっているものの、依然として報道機関の自主的な対応に任されているのが現状である。
忘れてはいけないのが被害者の遺族の存在だ。広く世間に知ってもらいたいと思う者も、世間の目に晒されることを由としない者もおり、個人的な見解としては未成年者双方を匿名にすることが望ましいと考える。
極めてセンシティブな問題であり今後如何なる対応が是とされるかは見通しはつかない。警察や報道機関と国民との関係や表現の自由とプライバシーとの調整についての議論が今後一層深まることを期待したい。
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