医薬品のネット販売拡大が明確化へ~改正薬事法、今月12日より施行~
2014/06/12 薬事法務, 薬機法, その他

事案の概要
処方箋などで医療従事者から直接販売される医療用医薬品以外の一般用医薬品のネット販売規制を緩和する改正薬事法が、今月12日より施行された。医薬品のネット販売については副作用の少ないことが証明された第3類医薬品に限りネット販売が認められていたが、本改正でネット販売が他の一般用医薬品のほとんどに拡大されることになる。今回はこの改正薬事法について確認しておきたい。
最高裁判決を受け、法改正へ
医薬品のネット販売について、改正前の薬事法では副作用が懸念される第1類及び第2類医薬品の販売は薬剤師等の専門家が対面で行わねばならないという省令があった。ところがこの省令については最高裁判決(※1)により違法という判断がされたため、一般用医薬品のネット販売はどこまで有効なのかという問題が宙に浮いてしまっている状態であった。この事態を解決すべく、適切なルールの下で一般用医薬品のネット販売を大部分解禁する改正法が平成25年11月27日に公布された形になる。
本改正では一般用医薬品のネット販売が解禁される一方で、医療用から一般用医薬品へ移行して間もなくリスクが確定していない薬や、劇薬については要指導医薬品として対面販売を維持する形となった。なお前者の移行の間もない薬については原則3年で他の一般用医薬品と同様ネット販売可能にするものとしている。
医薬品の分類
本改正では医薬品の分類の一部変更と、ネット販売の拡大が行われることになるが、分類について改正前のものと合わせて確認しておきたい。以下★のあるものはネット販売が許可されることになる。
(改正前)
●医療用医薬品(処方箋等)
●一般用医薬品(処方箋必要なし、いわゆる大衆薬)
├・第一類医薬品
├・第二類医薬品
└・第三類医薬品★
(改正後)
●医療用医薬品
●一般用医薬品
├・第一類医薬品★(後述の個別情報提供義務有り)
├・第二類医薬品★
└・第三類医薬品★
・要指導医薬品(これまで一般用医薬品の中にあったものを分離)
販売の「適切なルール」
ネット販売が解禁されたからといって、医薬品が自由に販売できるようになったわけではない。今回の改正はあくまで薬局やドラッグストアとして営業が認められた店舗が、ネットで一般用医薬品を販売することを、改正法に基づいた政令や省令の適切なルール下で認めたものにすぎない。以下ネット販売に必要な具体的なルールにも一部触れてみたい。
・ネット上への店舗の記載
ネット販売を行うにあたっては販売サイト上に店舗の名称や店舗の写真、許可証の内容や連絡先を記載せねばならないと定められている。あくまで既存の制度で認められるような薬局・ドラッグストアでのネット販売を企図した規定である。
・販売はあくまで専門家(薬剤師)が行う
注文を受けて販売を行うにあたっては、メールのやり取りにおいて情報提供や販売を行った専門家の氏名を提示し、販売サイト上にも専門家の氏名や、対応する専門家の勤務シフトを提示せねばならないことなどが定められている。具体的な専門家個人が責任もって販売することを意図したものだ。
・リスクのある薬には個別に情報提供
日常生活に支障をきたす副作用のリスクが比較的高い第1類医薬品については慎重に販売を行うために、性別年齢、症状、副作用歴などの購入者側の個人情報を担当専門家が確認し、それに見合った用法用量等の情報を担当専門家が提供、さらに購入者がその提供情報を確認した連絡があった後に販売するという一連の義務が定められている。(※2)
※1 最高裁平成25年1月11日判決、この判決では当時の薬事法がネット販売を禁止しているとは解されないと判断されたため、禁止規定を設けた薬事法施行規則(省令)を違法と判断したものである。
※2 第1類には指定されていないが、副作用リスクのある第2類医薬品についてもこの一連の個別情報提供は努力義務とされている。
コメント
ネットで医薬品が取り寄せられる改正となると、薬局に寄れない忙しい人々にとって便利なだけでなく、医薬品販売店にアクセスしにくい場所に住んでいる人々にとっても朗報であると思われる。しかし一方で極めて専門的知識の必要な医薬品について、個々人の自由な判断によりネットで買えてしまう体制は、副作用による思いもよらない医薬品事故が起きてしまう元となる。専門家が購入者のヒアリングをした上で適切に処方していれば問題なかったはずの薬が、事故によって規制されでもすればそれこそ悲劇である。今回の改正ではネットでの販売を認めつつも、あくまで薬剤師が個別に販売するという制度を維持したことによって利便性と安全性のバランスがとれたと思う。今後は、まだネット販売が見送られている要指導医薬品についても本改正での体制を徹底した上で順次規制を緩和していくことが望まれる。
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