日本製鉄 トヨタと中国・宝山を鉄鋼特許侵害で提訴
2021/10/18   知財・ライセンス, 特許法, その他

 
はじめに
 日本製鉄は電気自動車のモーター等に使う電磁鋼板に関する特許権侵害をしたとして、トヨタ自動車と中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄を10月14日に東京地裁に提訴したと、同日発表しました。
事案の概要
 日鉄はトヨタに多くの鋼材を納めており、両社は頻繁に取引を行う関係にあります。日鉄は、宝山が電磁鋼板を製造し同社の特許を侵害したほか、トヨタが宝山の製造した電磁鋼板をモーター等に搭載したことも特許権の侵害にあたると主張しています。日鉄は、それぞれに約200億円の損害賠償請求の訴えを提起すると共に、この鋼材を使用しているトヨタ車の製造・販売の差し止めを求める仮処分も東京地裁に申請しました。差し止め申請の対象となる車種などは明らかにしていません。
特許権侵害について
特許権の侵害にあたるかどうかの判断にあたっては、特許発明が保護される範囲を定める必要があります。もし特許発明が保護される範囲が不明確であったら、第三者はどのような行為が特許権の侵害にあたるのか予測することができず、法的安定性が損なわれます。
そこで、特許発明が保護される範囲は、特許出願の際に特許庁長官に提出した願書に添付した特許請求の範囲(「クレーム」と言う)の記載を基準に定められ、特許請求の範囲に記載された文言によって限定されるのが原則です。そして、特許発明はクレームに記載された構成要件(発明を特定するために必要な構成要素を言う)によって一体として構成されるものであるため、特許権侵害が成立するためには、対象製品または対象方法が構成要件のすべてを充足することが必要であり、侵害態様が特許発明の構成要件を一部でも欠く場合には、特許権侵害は成立しません。対象製品が特許侵害にあたるかどうかは、文言の解釈によって判断されます(「文言侵害」と言う)。特許権侵害においてはこの文言侵害が原則です。
もっとも、クレームの文言が厳格に解釈されると、特許権の侵害が簡単に回避されてしまい、特許発明の保護として不十分なものとなるおそれがあります。そこで、クレームに記載された構成中に対象製品などと異なる部分があるとしても、その異なる部分が特許発明の本質的な部分ではなく、その異なる部分を対象製品などにおけるものと置き換えても特許発明の目的を達成することができるなど、一定の要件を満たす場合は、対象製品はクレームに記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解されています。
コメント
 トヨタは特許権の侵害に当たらないかの確認を宝山に対し複数回行っていたようであり、宝山とトヨタとの間での契約問題も発生する可能性が高いと思われます。企業法務従事者としては、リスクヘッジのために契約締結時にいかなる条項を付しておくべきかを、ケースごとにまとめて整理しておくと良いかもしれません。
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 箕輪 洵 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)
箕輪 洵 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)



 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)









