小林製薬、健康被害で紅麹サプリを自主回収/健康食品と製造物責任法
2024/03/26   コンプライアンス, 行政対応, 製造物責任法, 薬機法, 医療・医薬品

はじめに


小林製薬は、「紅麹」の成分が配合されたサプリメントを摂取した人が腎臓の病気になったとして、3月22日、製品の自主回収を発表しました。約30万個の回収が見込まれているということです。

本件に限らず、「健康食品を食べたことで健康被害が出た」との報告が毎年、消費者庁に数多く寄せられているそうですが、中には、裁判で製造物責任法上の「欠陥」と認定されるケースもあるといいます。

 

小林製薬の健康食品を摂取した人が腎疾患に


小林製薬株式会社は、3月22日、機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が腎疾患などを発症したと発表しました。
今年1月、「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことが最初に報告されて以降、全国の40~70歳代の男女13人にむくみや倦怠感などの腎疾患特有の症状が確認されたということです。このうち6人は入院が必要となり、一時、人工透析を行った人もいるほか、現在も通院している人がいるといいます。

健康被害の報告を受け、小林製薬が製品と、製品に使用されている自社製造の紅麹原料を成分分析したところ、一部の紅麹原料に小林製薬が意図しない成分が含まれている可能性が判明したということです。現在のところ、その成分の特定には至っておらず、腎疾患などとの関連性は確定されていないということですが、小林製薬は健康被害を拡大させないための予防的措置として、紅麹関連製品の自主回収を発表しています。

【自主回収の対象】
・紅麹コレステヘルプ
・ナットウキナーゼさらさら粒GOLD
・ナイシヘルプ+コレステロール

今回、自主回収の対象となった紅麹コレステヘルプは「血中LDLコレステロールの抑制効果」を謳って2021年2月に発売された機能性表示食品で、今年2月末までに約110万袋が販売されています。

現在の店舗の在庫や、家庭での飲み残しを合わせ、約30万個の回収が見込まれています。

紅麹関連製品の使用中止のお願いと自主回収のお知らせ(小林製薬株式会社)

 

製造物責任法上の「欠陥」として認定された例も


消費者庁に寄せられた商品の危害情報をみると、最も多く寄せられた化粧品についで、健康食品は2番目に多い結果となっています。
サプリやダイエット用ゼリーを飲んだら吐き気がした、発疹が出た、などの消化器障害や皮膚障害の事例が多く報告されているようです。
健康食品による健康被害をめぐっては、過去に裁判で製造物責任法上の「欠陥」として認定された事例もあります。

製造物責任法の第3条は、「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」と定めており、製造物上の欠陥により健康被害が生じた場合の製造業者側の損害賠償責任が規定されています。

製造物責任が認められた場合、被害者が故意・過失の立証を要することなく製造業者に対して損害賠償を請求できる点が大きな特徴です。

製造物責任が認められるための要件は、
(1)製造業者等であること
(2)製造または加工された動産において、通常持っているべき安全性を欠いていること(製造物に欠陥があること)
(3)欠陥と生命・身体・財産の侵害との間に因果関係があること

の3点ですが、その一方で、製造業者等において、「製造物を引渡した当時の科学的・技術的知見によっては、欠陥を認識できなかった」と認められる場合には、製造物責任が免責されます(開発危険の抗弁:法第4条1号)。

 

健康食品に製造物責任法上の「欠陥」が認められた事例
 
東南アジア原産のトウダイグサ科の植物アマメシバの粉末を含む健康食品を摂取した70代と50代の母と娘が、摂取後に呼吸器に障害が残ったとして、製造物責任法などに基づき、製造会社に対し、計約1億800万円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。
 
2人は雑誌の特集記事で、高栄養食品とうたう当該商品を購入し、母は計約300g、娘は計約400gを摂取したところ、閉塞性細気管支炎を発症し、呼吸器機能障害が残ったということです。
 
製造会社などは「発症との因果関係はない」などと反論していましたが、裁判所は、アマメシバは海外で健康被害の事例があることなどから健康食品の摂取と疾患との間に因果関係があると判断。健康食品である粉末アマメシバに製造物責任法第2条2項の「欠陥」があるとして、母娘の請求を一部認め、製造会社などに約7600万円の支払いを命じる判決を下しました。なお、裁判では雑誌の出版社も被告となっていましたが、こちらに対する請求は棄却されています。


【参考リンク】
平成19年11月30日・名古屋地方裁判所平成16年(ワ)第3089号

 

コメント


小林製薬のように歴史のある会社でも、巻き込まれてしまう健康被害問題。最初の健康被害の報告から消費者への呼びかけまでに時間を要した点も一部で批判されています。

今後は、現在報告されている健康被害と健康食品摂取との因果関係の調査が焦点となって来ます。小林製薬として、今後の対応をしっかりと検討し、説明することが期待されます。

 

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