企業に離職率の公表を要求へ ~ブラック企業対策~
2013/12/03 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
厚生労働省は、2015年度から大学生・大学院生向けのハローワークの求人票に離職率を公表するようを求めることを決めた。これにより上記ハローワークの求人票に過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄が追加されることになる。
これらの記入は強制ではないものの、求職者は未記入の企業や離職者の数が多い企業は労働環境に問題があるのではないかと推測することができ、いわゆる「ブラック企業」へ就職することを防ぐ効果が期待できるのではないかとしている。
コメント
厚生労働省はいわゆる「ブラック企業対策」の一環として、大学生・大学院生向けのハローワークの求人票に離職率を公表することを求めることとしたが、いくつか問題点があると考えられる。
まず、「ブラック企業」とはいかなるものであるか明確でないことが問題となる。一般的には、「労働者を酷使・選別し、使い捨てにするような企業」がこれに該当するものと考えられるが、実際には明確に定義されたものはない。
明確に定義されていない「ブラック企業」という概念に対し、過去3年間の離職率が高いという基準のみで「ブラック企業」であると判断してしまうことが妥当と言えるのかは疑問の余地がある。
また、公表が大学生・大学院生向けのハローワーク求人に限定されていることにも問題がある。求人情報はハローワークだけではなく多数の媒体に掲載されているのでありハローワークに掲載された求人にのみ公表を求めて十分な効果が発揮されるのかは疑問である。
そして、公表が義務化されていない点についても問題がある。強制力がないことを理由に、大多数の企業が公表を行わないとなれば、求職者が離職率の情報を得ることができず有効とは言えない。
このような問題点を改善し「ブラック企業対策」として効果的なものとしなければ経営者の意識改革はなされず、ブラック企業問題は解決されていかないのではないだろうか。
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