業務停止中に販売強要で元訪問販売員が「布亀」を提訴、特商法の訪問販売規制について
2026/01/05   労務法務, コンプライアンス, 特定商取引法

はじめに

業務の一部停止命令を受けていた「布亀」の元訪問販売員の女性が、業務停止期間中に訪問販売を強いられたとして同社に損害賠償などを求め提訴していたことがわかりました。女性はすでに契約を打ち切られているとのことです。

今回は特定商取引法の訪問販売規制について見ていきます。

 

事案の概要

報道などによりますと、置薬や乳製品の宅配を営む「布亀」(兵庫県西宮市)において、医師から認知症と診断を受けた高齢者宅に同社の販売員を訪問させ、勧誘のうえ契約を締結させるといった事例が複数件確認されたといいます。

また、消費者宅に訪問して契約を締結する際に、「書面を受領した日から起算して8日を経過するまでは電磁的記録によってクーリングオフができる旨」の記載がなされていない書面を交付していたとのことです。

これを受けて消費者庁は、布亀に対し、2024年3月27日から同年9月26日までの期間、
・訪問販売に関する業務のうち売買契約の締結についての勧誘
・申込みを受けること
・契約を締結すること

を停止する業務停止命令を出しました。

しかし、その業務停止期間中にも同社に訪問販売を強要されていたとして、元販売員の女性が布亀に対し損害賠償などを求め大阪地裁に提訴したとされています。

 

特定商取引法の訪問販売規制

特定商取引法では訪問販売について詳細な規制を置いています。

まず、ここで「訪問販売」とは、販売業者または役務提供事業者が営業所等以外の場所で契約を締結して行う商品、特定権利の販売または役務の提供等を指すとされています(2条)。

営業所以外の場所とは消費者の自宅などが該当します。消費者の自宅などにセールスマンが訪問し勧誘して契約し販売するといった販売方法が典型例です。

これ以外にも喫茶店や路上で行われる販売、またホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間、施設等からみて店舗に類似するものとは認められない場合も訪問販売に該当するとされています。

事業者の営業所等で契約が締結される場合でも、路上等で呼び止めたり(いわゆるキャッチセールス)、電話や郵便、SNS等で販売目的を明示せず消費者を呼び出したり、他の者に比べ著しく有利な条件で契約が締結できると誘った場合(いわゆるアポイントメントセールス)の場合も該当するといわれています。

 

訪問販売の際の事業者の義務

事業者が訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って消費者に対し、(1)事業者の氏名または名称、(2)契約の締結について勧誘をする目的であること、(3)販売しようとする商品の種類について明示することが義務付けられています(3条)。

そして、事業者は契約の申し込みを受けた時または契約を締結したときは次の事項を記載した書面の公布が義務付けられています(4条、5条)。

(1)商品または役務の種類、(2)販売価格、(3)代金の支払時期と方法、(4)商品の引渡時期、(5)契約の申し込みの撤回に関する事項、(6)事業者の氏名または名称と住所・電話番号、(7)契約の申し込みまたは締結をした担当者の氏名、(8)契約の申し込みまたは締結の年月日、(9)商品名および商品の商標または製造業者名、(10)商品の型式、(11)商品の数量、(12)引き渡された商品について契約不適合がある際の販売業者の責任について定めがある場合はその内容、(13)契約の解除に関する定めがある場合はその内容、(14)その他特約がある場合はその内容、となっています。

これら以外にも消費者への注意事項として書面をよく読むべきことを赤枠の中に赤字で記載しなければならず、またクーリングオフについても赤枠・赤字で記載することが必要で、文字の大きさは8ポイント(官報の文字の大きさ)とされています。

 

訪問販売に関する禁止事項

特定商取引法では行政処分の対象となる禁止事項が数多く規定されています。

まず、勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があるかを確認するよう努めることが求められ、意思がないことを示したときは勧誘を継続すること、また改めて勧誘することが禁止されます(3条の2)。

これ以外にも(1)不実告知、事実の不告知、(2)威迫して困惑させること、(3)勧誘目的を告げず誘引し公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘すること、(4)つきまとい等、(5)重要事実の不告知、(6)迷惑勧誘や判断力不足に乗じた勧誘等、(7)過量販売勧誘、(8)申込書等に虚偽の事実を記載させる行為、(9)債務の履行拒否や不当遅延、(10)クーリングオフ妨害などが規定されています。

これらの行為については指示や業務停止命令、業務禁止命令の対象となっています。また、これらの行為の一部については罰則が規定されており、また指示や業務停止命令などに違反した場合も3年以下の拘禁刑や300万円以下の罰金などの罰則が置かれています(70条3号、71条2号等)。

 

コメント

消費者庁の発表によりますと、布亀は訪問販売に際して公布すべき書面にクーリングオフに関する記載の不備があったとされます。
また、認知症と診断されていた高齢者宅をあえて訪問し契約を締結していたことから、「判断力不足に乗じた勧誘」に該当すると判断されたものと考えられます。

さらに、元販売員の女性の訴えが事実であった場合、業務停止命令期間中に勧誘や販売を行っていたこととなり、命令違反として罰則が適用される可能性もあります。

以上のように、特定商取引法では訪問販売についてかなり詳細な規制を置いています。訪問販売は一般的には消費者宅に訪問して勧誘する販売方法をイメージされますが、広く自社の営業所以外での販売行為や、一定の場合は営業所での契約締結も対象となっています。

これらを踏まえて社内で周知し、違反行為の防止を行っていくことが重要といえるでしょう。

 

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