養子の斡旋?人身売買?-厚労省、特別養子縁組の営利化に歯止め-
2013/07/23 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
血縁関係にない幼い子供と、法的に親子関係になることができる制度として、日本では「特別養子縁組」がある(民法817条の2以下)。
そしてこの特別養子縁組を斡旋する、一般社団法人「ベビーライフ」が、養父母から多額の寄付金を受け取ったとして、今月11日、東京都の立ち入り調査を受けた。同団体は任意団体として活動していた2011年度までの約3年間に44件の養子縁組を斡旋し、養父母から約3300万円の実費の他に、約4600万円の「寄付金」を受けていた。1人あたりの額は、最高187万円とのことである。
上記4600万円が請求によるものか、養父母の任意によって支払われたものなのか、今後の詳しい調査が待たれる。児童福祉法(以下、法という)では、営利を目的とした養子縁組の斡旋を行うことを禁じている(法34条)。それ故、かかる「寄付金」の性質によっては、法に抵触する恐れがある。
このように、特別養子縁組の斡旋をめぐり、民間団体が養父母側から実費の他に多額の現金を受け取っていた問題に国も危機感を抱いている。厚生労働省(以下、厚労省)は、昨年3月の通知にて、養子斡旋は公益法人やNPO法人が行うよう要請している。そして今月11日には、斡旋事業のあり方に関する通知を見直す方針を決め、検討し始めている。具体的には斡旋事業への株式会社の関与禁止を通知に盛り込むなど、営利目的につながることを防止すべく、規制を強化する予定である。
コメント
不妊治療を経て、子供を諦めきれない夫婦にとって「特別養子縁組」は最後の望みであり、不妊で悩む夫婦が養子を迎えたいというニーズは年々高まっている。そして、「寄付金」を支払わらなければ子供を託してもらえないと考え、実費の他に「寄付金」を支払うケースが跡をたたないという。
今回発覚した「寄付金」の額は、最高で1人あたり187万円であり、あまりにも高額である。公の制度を利用した人身売買と疑われても、仕方のないことであると考える。現在、養子斡旋事業を行うと都道府県に届出ている団体は全部で15あり、届出をしていない団体を含めれば、より多くの団体が存在する。今回表面にでてきた「寄付金」問題は、氷山の一角であるかもしれない。
子供の親が誰になるかは、子の福祉の観点から決められるべきであって、高額なお金を出すかどうかで決められるべきではない。人身売買は、刑法をもって厳しく禁じられている故(刑法226条の2)、それと疑われるような、高額かつ不透明な金銭の徴収は慎むべきではないかと考える。
人の生命というセンシティヴな問題を扱う以上、斡旋事業を行う民間団体には、更なる厳格性と透明性が求められる。
関連サイト
関連コンテンツ
新着情報
- まとめ
- 経済安全保障法務:中国の改正国家秘密保護法の概要2024.3.15
- 2024年2月27日, 中国では国家秘密保護法(原文:中华人民共和国保守国家秘密法)の改正が成...
- 業務効率化
- Hubble公式資料ダウンロード
- 業務効率化
- Lecheck公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
- 終了
- 視聴時間1時間15分
- ニュース
- 五輪談合事件で指名停止中の電通・博報堂に、都が特命随意契約で事業発注2024.4.18
- NEW
- 東京オリンピック・パラリンピックをめぐる談合事件で指名停止となっている広告大手の電通および博報...
- セミナー
- 岡部 真記弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- 【リアル】法務担当者の役割とコンプライアンス教育(座談会)-法務担当者向け 法務基礎シリーズ-
- NEW
- 2024/07/04
- 15:30~17:00
- 弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- NEW
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- 弁護士
- 淺田 祐実弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 解説動画
- 岡 伸夫弁護士
- 【無料】監査等委員会設置会社への移行手続きの検討 (最近の法令・他社動向等を踏まえて)
- 終了
- 視聴時間57分