QAで学ぶ契約書作成・審査の基礎第43回ソフトウェアライセンス契約:最終回
2023/03/01   契約法務, 知財・ライセンス, 民法・商法

第41回からエンドユーザ・ソフトウェアライセンス契約について具体的な条項を提示した上解説しています。今回は, その最終回で, 以下の目次のQ9以降のアップデート, テクニカルサポートおよび保守サポート契約/本ソフトウェアの不具合に関する責任/知的財産権の侵害に対する責任/秘密保持および資料等の返還/解除および期限の利益喪失/反社会的勢力の排除/損害賠償に関する規定例を提示しその内容を解説します。

最終回ですので, このソフトウェアライセンス契約のひな型全文をこちらからダウンロードできるようにしました。

 【目  次】

Q1:ソフトウェアライセンス契約の前文

Q2:ライセンスの許諾 (以上第41回)

Q3: ライセンス期間

Q4: ライセンス料

Q5: 本ソフトウェアの引き渡し

Q6: 本ソフトウェアの試用

Q7: 禁止事項および遵守事項

Q8: 監 査 (以上第42回)

Q9:  アップデート, テクニカルサポートおよび保守サポート契約

Q10:  本ソフトウェアの不具合に関する責任

Q11:  知的財産権の侵害に対する責任

Q12:  秘密保持および資料等の返還

Q13:  解除および期限の利益喪失

Q14:  反社会的勢力の排除

Q15:  損害賠償

Q16:  一般条項 (以上今回)

 

 

Q9:  アップデート, テクニカルサポートおよび保守サポート契約


A9:以下に規定例を示します。なお, 以下, 契約規定例中に, 強調又は解説の便宜上, 下線を引いている箇所があります。
 

第8条  アップデート, テクニカルサポートおよび保守サポート契約

1.      お客様は, ライセンス期間中に, 当社が本ソフトウェアの顧客に無償で提供する, 本ソフトウェアの改訂, 機能強化, 修正, アップデート, パッチまたは新規リリース(これらの改訂等とこれらを行うことを以下「アップデート」という)を, 本契約に従い利用できるものとします。アップデートは, 本ソフトウェアとして本契約の適用を受けるものとします。

2.      お客様は, 当社が事前に書面で明示的に同意した場合を除き, アップデートが自動的に行われるかお客様の行為により行われるか否かを問わず, アップデートに同意し速やかにこれを受け入れるものとします。

3.      本ソフトウェアの機能, 利用方法もしくは既知の問題とその対応方法・修正モジュール等に関するオンライン情報提供または電話もしくはオンラインによる技術支援等(以下「テクニカルサポート」という)がライセンス料に含まれている場合またはお客様が別途その料金を支払った場合, 当社は, お客様に当該テクニカルサポートを, 注文先がお客様に事前通知しまたは当社が公表した内容・条件で提供するものとします。

4.      お客様は, テクニカルサポート以外の本ソフトウェアに関するサービス(オンサイト保守サポート等)の契約を当社または当社認定企業との間で締結した場合には, その契約に従い当該サービスを受けることができるものとします。

【解 説】


【ソフトウェアの不具合, 保証, アップデート等】

機器・ハードウェア製品の場合, その不具合の原因は主に製造上の問題で, 製品保証, 有償保守等に基づく「修理」という形で対応が行われます。

しかし, ソフトウェア製品の場合, 複製により製造されるので, 製造上の問題で不具合が生じることはあまりなく, もし不具合があるとすれば, それは通常設計上の不具合です。しかし, ソフトウェアが実際に作動するあらゆる条件を想定して, 人間であるエンジニアが完全に誤り・不具合のないソフトウェアを設計しプログラミングすることは困難です。実際, 多くの人が長年利用している人気の高いソフトウェアであっても, 作動条件等により不具合が生じることは私達も日常しばしば経験するところです。

そして, そのようなソフトウェアの設計上の不具合を, 個々のユーザが指摘する都度, 問題の内容・大小を問わず, 保証の対象として個々に無償対応することは, ソフトウェア製品のメーカー・供給元から見れば, 経済的観点からも実際の対応負担の観点からも受入れることが困難です。

このようなことから, 次のQ10の条項例のように, ソフトウェアの世界では, 保証責任が否定・排除されることが多いと言えます。その一方, 重大な不具合については, 本条で規定するように, メーカー・供給元側の任意で随時アップデート等が行われ, 更には, 機能・設計の大幅変更を伴う新バージョンがリリースされ, その中で不具合が解消することもあります

【第1項・第2項】

前回解説した通り, 本ソフトウェアには, ライセンス期間があり, その引き渡しについては, 「お客様」がユーザアカウントから本ソフトウェアをダウンロードすることを想定しています。そして, 「当社」が本ソフトウェアの無償アップデートをリリースする場合には, 第2項の通り, お客様を含む全ユーザについてインターネットを経由してアップデートが自動的に行われ, または, 個々のユーザの操作によりアップデートされます。

この場合, アップデートを個々のユーザの任意とすると, アップデートしたユーザの他にアップデートしないユーザが存在することになります。これは, メーカー・供給元から見れば, ソフトウェアの管理とユーザ対応の負担が二重となり, また, アップデートで解消できるアップデート前の問題が残存することにもなるので, 第2項でユーザにアップデート受入れを強制しています。

【第3項】

ソフトウェアに関しユーザが経験する問題の中心は, 機器・ハードウェア製品における故障等よりも, むしろ, そのソフトウェアの使い方や問題への対処方法です。この点に関するメーカー・供給元の対応としては, 製品回収・修理・交換ではなくオンライン等によるユーザへのテクニカルサポートが中心となります。このテクニカルサポートは, 予めソフトウェアの代金・ライセンス料の中に含まれている場合と, 別途有償となっている場合があります。本項ではこれらに関し規定しています。

【第4項】

第3項で想定している基本メニューのテクニカルサポートの他に, メーカー・供給元のエンジニアが客先を訪問して(オンサイト)サポートする場合やそのエンジニア自ら保守(不具合の解決, 不具合以外の各種設定・管理維持行為等)を行う場合もあります。本項ではこれらに関し規定しています。

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Q10:  本ソフトウェアの不具合に関する責任


A10:以下に規定例を示します。
 

第9条  本ソフトウェアの不具合に関する責任

1.      当社は, 本ソフトウェアにエラーがないこと, 稼働に中断がないこと, 不具合が全てもしくは即時に解決されること, または不具合の解決のためアップデートを行うことを保証せず, その他, 本ソフトウェアの不具合に関し, 前条に定める以外の如何なる責任も負わないものとします。

2.      前項にかかわらず, お客様は, ライセンス期間中, 本ソフトウェアが, 稼働環境のもとで機能仕様に適合して正常に作動しない場合, 本契約を中途解除し, 本ソフトウェアの以後の利用を中止し, その時点でのライセンス期間の残存期間分のライセンス料の支払いを免れ, または, 既に支払い済みの場合には注文先からその返還を受けることができるものとします。

3.      本ソフトウェアの不具合に関する当社の責任は, 全て本条に定める通りとし, 当社は他の如何なる責任も負わないものとします。

【解 説】


【第1項】

民法第559条は, 「この節[売買]の規定は, 売買以外の有償契約について準用する。」と定めるので, 別段の定めをしない限り, 本契約にも売買の契約不適合責任の規定(562,563)が準用されます。そこで, 本項では, ライセンサー(メーカー・供給元)の立場から, 民法の適用を排除して不具合に関する責任を否定・排除しています。

本項では, 本ソフトウェアにエラーがないこと等, ソフトウェアで特に問題になる事項に関し責任を否定した上で, 最後に「その他.....」として, 前条のアップデート等以外の責任を否定・排除しています。

【「現状有姿で提供」について】

ソフトウェアライセンス契約では, しばしば, 「本ソフトウェアは, 現状有姿で提供される」などと規定してあるものを見かけます。

これは, 昔から, 米国企業のソフトウェアライセンス契約には「The software is licensed “as-is.”」などの規定があり[1], その日本語版の契約にも「現状有姿で提供される」などの文言がありました。そして, おそらく, その文言が日本企業のソフトウェアイセンス契約でも広く使われるようになったと思われます。

この“as-is”の意味については, Cornell Law Schoolの法律辞書では, 大要, 以下の通り説明されています。

— 商品の買主が, 事前にその商品の現状を検査する機会が与えられ, その商品をその現状有姿で("as is")購入した場合には, 購入後その商品に何らかの欠陥を発見したとしても, 売主の責任を追及することはできない。但し, 売主はその現状について買主に何らかの説明をしていた場合には, その説明への不適合に対しては責任を負う。

しかし, 日本国内の契約中で「商品を現状有姿で引き渡す」との文言が用いられた場合には, この"as is"の説明が裁判等での解釈上参考にされることはおそらくなく, 従って, その意味は不明確とされ契約不適合責任が免除されるとは限らないでしょう。

なお, 商品が特定物(不動産等)の場合, 民法第483条により, 売主は, 契約等により商品の引渡時の品質を定めることができないときはその引渡時の現状で商品を引き渡さなければなりません。

従って, 商品が特定物の場合も, 上記のような文言は, この現状引渡し義務を確認したに過ぎず, それだけでは, 契約不適合責任等が免除されることにはなりません。

勿論, 「本ソフトウェアは, 現状有姿で提供され, ライセンサーはソフトウェアの不具合に関し契約不適合責任その他の責任を負わない。」などと下線部分まで書けば契約不適合責任を否定したことにはなります。しかしその場合も「現状有姿で提供され(る)」の文言だけでは責任免除されるとは限りません。

【仕様不適合への責任】

CD-ROM等物理的媒体で引き渡される期間永久のソフトウェアライセンスでは, 仕様不適合に対し修補・交換等を行うとする規定例も一般的です。

しかし, 本ソフトウェアの場合, Webサイトからのダウンロードで提供されるので元々物理的媒体はなく, また, インターネットを通じてどのユーザに対してもライセンス期間中常にアップデート後の最新の(少なくともライセンサー側からすれば最良の)状態のソフトウェアが提供されます

そこで, 本契約では, 上記のような仕様不適合に対し修補・交換等を行うとする定めは採用していません(但し解約・返金に関しては次の第2項の解説を参照)。

【第2項】

第1項により, ソフトウェアの不具合の修補・交換等の責任は否定・排除されます。

しかし, 本ソフトウェアが, 仕様不適合で正常に作動しない場合にまで, ライセンシーに契約継続を強いるのは酷とも思われるので, 本項で, ライセンシーに, 本契約の中途解除と残存期間分のライセンス料免除・返金を認めることとしています。

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Q11:  知的財産権の侵害に対する責任


A11:以下に規定例を示します。
 

第10条 知的財産権の侵害に対する責任

1.      本ソフトウェアが第三者の日本国内における特許権, 実用新案権, 意匠権, 商標権, 著作権, 営業秘密に関する権利その他知的財産権(以下総称して「知的財産権」という)を侵害するとして, 第三者がお客様に対し使用差止, 損害賠償等の請求(訴訟を含む。以下「侵害請求」という)をした場合には, 当社は, その費用負担で侵害請求に対して防御し, また, 当該第三者に対し最終的に認められた損害賠償金または和解金額を支払うものとします。但し, この防御および支払は, お客様が遅滞なく当社に侵害請求につき書面で通知すること, お客様が必要かつ合理的範囲内の情報と援助を当社に提供すること, 並びにお客様が当該防御および和解について実質的な参加の機会および全ての実質的決定権限を当社に与えることを条件とします。

2.      当社は, 侵害請求に関し必要と判断した場合には, 当社の費用負担で, お客様のために, 本ソフトウェアの継続使用権を確保するか, または, 侵害回避のため本ソフトウェアを修補するものとします。但し, これらの措置が合理的に見てとり得ない場合, 当社は, 本契約を解除し, 以後のライセンス期間に対するお客様のライセンス料についてその支払義務を免除しまたは既に支払済みであればこれを返還するものとします。お客様は, これらの修補または解除に応じるものとします

3.      当社は, 以下のいずれかに起因する侵害請求については何らの責任も負わないものとします。

(1)   本ソフトウェアの, 他のソフトウェアとの組み合せ, 改変, または稼働環境外での利用

(2)   お客様がアップデートに応じずまたはアップデートを行わなかったこと

(3)   お客様が前項の修補または解除に応じなかったこと

(4)   その他, 本契約に違反する本ソフトウェアの利用

4.      本ソフトウェアの権利に関する当社の責任は, 全て本条に定める通りとし, 当社は他の如何なる責任も負わないものとします。

【解 説】


第22回Q2の解説を参照して下さい。但し, 下線部分を本契約に合わせ修正・追加しています。

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Q12:  秘密保持および資料等の返還


A12:以下に規定例を示します。
 

第11条 秘密保持および資料等の返還

1.      お客様および当社は, 本契約の履行上知り得た相手方の技術上または営業上その他業務上の情報(以下「秘密情報」という)を, 相手方の事前同意がない限り, 本契約の履行のためにのみ使用し, かつ, 第三者に開示または漏洩しないものとします。但し, 次の各号のいずれかに該当する情報は秘密情報に該当しないものとします。

(1)   それを知った時点で, 既に適法に知得していたかもしくは公知となっていた情報, またはその後, 自己の責めによらず公知となった情報

(2)   相手方の秘密情報によらず独自に開発または作成した情報

(3)   第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に入手した情報

2.      前項に定める義務は, 書面で別段の合意をした場合を除き, 各秘密情報を知った時から3年間存続するものとします。

3.      お客様および当社は, 相手方に, 秘密情報を, 書面その他の有体物を提供することにより開示する場合には, 当該有体物の上に秘密情報である旨を表示するものとし, 口頭, その他有体物の提供以外の形態で開示する場合には, 開示前または開示の際に適切な方法で当該情報が秘密情報である旨を相手方に明示するものとします。

4.      お客様および当社は, 相手方から開示を受けた秘密情報の使用目的を達成した場合, 秘密情報の使用の必要性が失われた場合または相手方からの要求があった場合には, 速やかに当該秘密情報を含む資料, 物品等, およびそれらの複製物について, 相手方の指示に従い返還, 削除・消去その他の措置をとるものとします。

【解 説】


本QAシリーズの第11回第12回の解説を参照して下さい。

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Q13:  解除および期限の利益喪失


A13:以下に規定例を示します。
 

第12条 解除および期限の利益喪失

1.      お客様または当社は, 相手方が次の各号の一に該当した場合, 何ら催告をすることなく, 直ちに本契約の全部または一部を解除できるものとします。

(1)      本契約に違反し, かつ, 当該違反状態が相手方からの書面での通知後10日以内に是正されない場合

(2)      監督官庁より営業の許可取消し, 停止等の処分を受けた場合

(3)      手形または小切手が不渡りとなった場合, 支払停止があった場合または支払不能状態となった場合

(4)      差押え, 仮差押えまたは競売の申立てがあった場合

(5)      公租公課の滞納処分を受けた場合

(6)      破産手続開始, 民事再生手続開始, 会社更生手続開始または特別清算開始の申立てがあった場合

(7)      解散の決議があった場合

(8)      その他信用状態が著しく悪化しまたは本契約を継続し難い事由が発生した場合

2.      お客様または当社は, 自己が前項各号の一に該当した場合, 相手方からの通知催告がなくても当然かつ直ちに相手方に対する一切の債務につき期限の利益を失い, 直ちに相手方に弁済しなければならないものとします。

3.      お客様が当社認定企業に本ソフトウェアを注文し, その注文により成立したお客様と当社認定企業間の契約が終了または解除された場合には, 本契約も同時に終了または解除されたものとします。

4.      本契約が終了または解除された場合, お客様は, 直ちに, 本ソフトウェアの利用を中止し, 本ソフトウェアを, その全ての複製を含め消去するものとします。

【解 説】


第1項と第2項については, 本QAシリーズの第10回の解説を参照して下さい。但し, ライセンシーが第6条(禁止事項および遵守事項)等に違反等した場合にまで30日もの猶予を与えるのは特にライセンサーにとっては不適切なので, 第1項柱書の期間は「10日」としています。

第3項は, お客様と当社認定企業間の契約が, 例えば, お客様による当社認定企業へのライセンス料不払い等により解除されたにもかかわらず, 本契約を存続させておくことは適切でないので, 本契約も同時に終了・解除されたものとしています。

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Q14:  反社会的勢力の排除

A14:以下に規定例を示します。

 

第13条 反社会的勢力の排除

1.      お客様および当社は, 相手方に対し, 自己, 自己の役員その他自己の経営に実質的に関与している者または代理人が, 現在および将来にわたって, 次の各号のいずれにも該当しないことを表明し確約するものとします。

(1)      暴力団, 暴力団員, 暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者, 暴力団準構成員, 暴力団関係企業, 総会屋, 社会運動標榜ゴロ, 特殊知能暴力集団, その他これらに準ずる者(以下総称して「反社会的勢力」という)であること

(2)      反社会的勢力が実質的に経営を支配しまたはこれに関与していること

(3)      自己または第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもって不当に反社会的勢力を利用していること

(4)      反社会的勢力に資金等を提供し, または便宜を供与する等, 反社会的勢力の維持, 運営に協力しまたは関与していること

(5)      反社会的勢力に自己の名義を利用させ本契約を締結するものであること

(6)      前各号の他, 反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係にあること

2.      お客様および当社は, 自らまたは第三者を利用して次の各号の一にでも該当する行為を行わないことを確約するものとします。

(1)      暴力的な要求行為

(2)      法的な責任を超えた不当な要求行為

(3)      取引に関して脅迫的な言動を行いまたは暴力を用いる行為

(4)      風説を流布し, 偽計もしくは威力を用いて相手方の信用を毀損し, または相手方の業務を妨害する行為

(5)      その他前各号に準ずる行為

3.      お客様および当社は, 相手方が本条第1項または前項に違反した場合には, 何ら催告をすることなく, 直ちに本契約を解除できるものとします。

4.      お客様および当社は, 前項により本契約を解除した場合, これにより相手方または第三者に生じた損害について何らの責任も負わないものとします。

【解 説】


本QAシリーズの第13回の解説を参照して下さい。

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Q15:  損害賠償


A15:以下に規定例を示します。
 第14条 損害賠償

1.      お客様は, 本契約の履行に関し, 当社の責めに帰すべき事由により損害を蒙った場合, 当社に対しその損害の賠償を請求することができるものとします。但し, この請求は, 債務不履行(契約不適合責任を含む), 不当利得, 不法行為その他請求原因を問わず, その損害発生から1年間が経過した後は行うことができないものとします。

2.      前項により当社が損害賠償義務を負う場合, 賠償すべき損害は, 前項に定める請求原因を問わず, 当社の責めに帰すべき事由によって通常生ずべき損害に限り, かつ, 当該損害発生の直近6カ月分のライセンス料の額を限度とします。当社は, 如何なる場合も, 特別の事情によって生じた損害, 逸失利益, 費用削減効果の喪失またはデータもしくは使用利益の喪失から生じた損害については責任を負わないものとします。

3.      前項は, 当社の故意または重大な過失により生じた損害については適用しないものとします。

【解 説】


本条項は, 第39回の「Q27:損害賠償」を参考として作成したので, 全体についてはその解説を参照して下さい。

但し, ライセンシーが第6条(禁止事項および遵守事項)等に違反等した場合にまで損害賠償の制限を設けることは特にライセンサーにとっては不適切なので, 本条ではライセンサー側についてのみ損害賠償の制限を設けています

また, 上記下線部分の通り, 本契約に合わせ一部修正・追加をしています。

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Q16:  一般条項


A3:以下に規定例を示します。
 

第15条 一般条項

1.      お客様および当社は, 各国の輸出管理または経済・貿易制裁若しくは制限に関連するものを含め(但し, これに限らない), 適用ある各国の法令または行政機関若しくは司法機関の命令を遵守するものとします。

2.      お客様および当社は, 自己が合理的に管理できない事由により生じた義務の履行遅延と不履行については, その責を免れるものとします。

3.      お客様および当社は, 相手方の書面による事前の承諾なく, 本契約に基づく権利または義務を他に譲渡しまたは担保に供してはならないものとします。

4.      本契約は, 本契約で規定する事項に関するお客様と当社間の合意の全てを規定したものとし, 両者の書面による合意のない限り, 他の如何なる契約条件にも優先するものとします。

5.      本契約の条件と承諾済み注文の間に矛盾・抵触がある場合, その矛盾・抵触がある範囲において本契約の条件が優先するものとします

6.      お客様と当社間に本契約の解釈その他につき疑義または紛争が生じた場合には, 両当事者は誠意をもって協議し解決に努めるものとします。

7.      本契約に関するお客様と当社間の訴訟については, 東京地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とするものとします。

 

【解 説】


第5項の「承諾済み注文」とは, 第41回Q4で解説した本契約第1条第2項に定義する通り, 「お客様からの本ソフトウェアの注文(以下「注文」という)に対し当社または当社認定企業(以下「注文先」という)が承諾した当該注文」のことです。その内容と, 本契約のライセンス条件等の間に矛盾・抵触がある場合本契約の条件が優先するものとしています。

第7項の「東京地方裁判所」は例えば「大阪地方裁判所」など他の裁判所でも構いません。

他の部分に関しては, 第39回の「Q28:その他一般条項」の解説を参照して下さい。

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今回はここまでです。

 

「QAで学ぶ契約書作成/審査の基礎」シリーズ:過去の回


 

[2]

 

[1] 例えば, MICROSOFT SOFTWARE LICENSE TERMS, Windows 8.1 Windows 7に"12. DISCLAIMER OF WARRANTY. The software is licensed “as-is.” (後略)とある。

[2]

==========

【免責条項】


本コラムは筆者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラムに関連し発生し得る一切の損害などについて当社および筆者は責任を負いません。実際の業務においては,自己責任の下,必要に応じ適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。


 

 


【筆者プロフィール】


浅井 敏雄  (あさい としお)


企業法務関連の研究を行うUniLaw企業法務研究所代表/一般社団法人GBL研究所理事


1978年東北大学法学部卒業。1978年から2017年8月まで企業法務に従事。法務・知的財産部門の責任者を米系(コンピュータ関連)・日本(データ関連)・仏系(ブランド関連)の三社で歴任。元弁理士(現在は非登録)。2003年Temple University Law School (東京校) Certificate of American Law Study取得。GBL研究所理事, 国際商事研究学会会員, 国際取引法学会会員, IAPP  (International Association of Privacy Professionals) 会員, CIPP/E  (Certified Information Privacy Professional/Europe)

【発表論文・書籍一覧】


https://www.theunilaw2.com/


 

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