導入に向けて動き出す「共通番号制度」その不安とメリット
2011/07/29 マイナンバー, 民法・商法, その他

共通番号制度とは
政府・与党は2015年1月の稼働をめざす、税と社会保障分野の個人情報を連携させる共通番号制度の大綱を公表した。また、3年後の18年以降、民間企業も利用できるよう検討する方針を打ち出している。共通番号制度とは、年金・医療・介護保険・福祉・労働保険・税務の各分野において、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤として番号(マイナンバー)を導入し、各機関のシステム連携を進めようとする制度。これまで何度か構想されては撤回を繰り返してきている。そこで、本制度のメリットと懸念されている不安を検討する。
メリット
6分野の個人情報をまとめて管理することで、個人の所得や給付状況などをより正確に把握し、公平かつ公正な税制と社会保障を確立できる。現在、所得捕捉の格差は俗にクロヨン(捕捉率が給与所得者9割、自営業者6割、農家4割)ともいわれ、不公平感が強い。この点を解消できる。また、家庭ごとに医療や社会保障負担を合算して一定額以上は払わなくて済むようにする制度や、低所得者向けに減税と現金給付を組み合わせた「給付つき税額控除」などが導入しやすくなる。そして、行政の事務の面でも、国民の各種手続の面でも簡素化・簡略化できる。現在、基礎年金の他、健康保険、介護保険、運転免許、パスポートなど、個人にさまざまな番号が割り当てられている。社会保障分野に限っても90種類もの番号が使われており、その管理主体は厚生労働大臣や市町村など同一でなく、番号同士を結びつける仕組みはない。そこで、複数の制度に共通した番号があれば、効率的な行政サービスの提供が可能になる。
さらに、災害時には本人確認に活用でき、本人確認が迅速にできることにより、生活再建支援金などの配分や、預金通帳をなくした被災者の預金の引き出しにも役立つ。
リスク
国家により個人の様々な個人情報が「番号」により名寄せされ一元管理されるのではないか。また、集積・集約された個人情報が漏えいするのではないか、という懸念がある。効率的にさまざまな個人情報が取り扱えるとなると、一方でさまざまな個人情報の流出の危険も高まる。人為的ミスや不正アクセスで、番号の不正利用や個人情報流出の恐れがあるのではないか。コンピューターに不正侵入する犯罪が後を絶たないだけに不安である。
氏名、住所、生年月日、性別の基本4情報を扱う住民基本台帳ネットワークにおいても、個人情報が流出する事件が起きており、憲法訴訟や行政訴訟など数多くの訴訟が提起された。共通番号制度が扱うのは住基ネットとは格段に異なる機微にわたる情報だ。しかも一度漏れたら被害は回復できない性質のものだ。
リスクへの対応
リスクへの対処方法としては、第三者機関が情報の連携を担う機関および利用する公的機関や民間事業者を確実に監視、監督する仕組みを作ることである。また、本人がパソコンなどで自分の情報の利用状況を確認したり、誤った情報を訂正したりするマイポータル機能を導入することで本人による監視も重要だ。
この点に関して、個人情報保護ワーキンググループの構成員である弁護士の三宅弘氏は、監督する第三者機関は、公正取引委員会のような国家行政組織法3条に基づく独立性の高い機関にすべきという。省庁の諮問機関的性格の委員会になれば、経産省と原子力政策の保安院のようなもたれあいの関係になるからだ。マイポータル機能についても、なりすましのリスクを回避できる本人認証システムを確立する必要があるという。
情報が漏れてからでは被害の回復が見込めないものであるから、本制度導入にあたっては、妥協のない確実な番号保護体制を求めたい。
【関連リンク】
・社会保障・税に関わる番号制度
・日本経済新聞 2011年7月25日 社会 38 論点争点 メディアと人権・法
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