シャトレーゼ、ベトナム人労働者88人を2ヶ月半待機も休業手当支払われず
2024/06/20   契約法務, 労務法務, 民法・商法, 労働法全般, 食料品メーカー

はじめに
洋菓子などを製造する株式会社シャトレーゼと雇用契約を締結したベトナム人88人(特定技能の在留資格などを保有)が最長で3ヶ月間、無給で待機させられていたと報道されました。会社は事務手続きの不手際があったと説明しており、今後、休業手当を支給する方針だということです。
自宅待機命じた2ヶ月半無給
シャトレーゼは、山形・岡山・鹿児島で新工場の建設を計画しており、山梨県内にある既存の工場から従業員を異動させて新工場の立ち上げに対応させる予定でした。それに伴い、既存の工場で人員不足が発生することが予想されたため、補充要員とすべく、2024年2月以降、シャトレーゼはベトナム人労働者88人と雇用契約を結んだとされています。
しかし、機械搬入の遅れが生じたことなどで、新工場が予定通りに全面稼働できなくなり、既存工場から新工場への従業員の異動時期がずれ込むことになったといいます。そのため、シャトレーゼ側はベトナム人労働者たちに待機を命じました。しかし、平均約2カ月半に及んだ待機期間中、給与は支払われず、休業手当の支払いもなかったということです。
現在は待機が解消され、ベトナム人労働者たちは順次働き始めているそうですが、会社は今後、休業手当を支給するとしています。
また、未払いの理由について、「給与の支給口座の把握などができていなかった」など事務手続きの不手際があったとのことです。
自宅待機期間は原則、給与を支払う義務がある
会社は雇用契約に基づく“業務命令”の一環として、従業員に対し、自宅に待機し業務を行わないよう(以下、「自宅待機」)命じることができますが、会社は従業員の自宅待機中、原則として給与を支払わなければなりません。
給与計算の基本原則である「ノーワーク・ノーペイの原則(働かなかったら賃金を支払わない)」に照らすと、自宅待機中の従業員に賃金を支払う必要はないようにみえますが、なぜ、会社は給与を支払う義務を負うのでしょうか。
その根拠は民法第536条2項の規定にあります。同項に照らすと、会社の責めに帰すべき事由(会社都合)によって、従業員の労務提供ができなくなったときは、会社は、給与の支払いを拒むことができないことになります。
| 民法第536条(債務者の危険負担等)
 | 
例外として、不可抗力(天災その他による事業所の一時閉鎖、自治体等からの休業要請等)によりやむを得ず会社が従業員に自宅待機を命じる場合には、会社は給与の支払い義務を免れますが(民法第536条1項)、不可抗力に該当するか否かの線引きは非常に困難です。自宅待機を回避する努力を尽くさず、軽々に自宅待機を命じた場合などには、後から、“不可抗力によらない自宅待機”と判断されるおそれがあるため、慎重な対応が必要です。
なお、自宅待機中の従業員に給与を支払う場合、給与全額を支払うのが原則ですが、会社都合の自宅待機に対し、就業規則等で別の金額を設定することもできます。もっとも、労働基準法第26条により、平均賃金の6割を下回る金額を設定することはできません。
コメント
少子高齢化や働き方に対する価値観の変化などから、国内で人手不足が深刻化しているといいます。そのため、海外から外国人労働者を呼び込む動きが加速していますが、職場環境の悪さや円安も影響しての給与の相対的な低さなどを理由に日本での就業を望まない外国人労働者も少なくないと言われています。
人手不足下では、国内外を問わず「会社が労働者から選ばれる」立場となります。また、当然ながら、給与の支払いについては、特にセンシティブに捉えられる向きがあります。支払うべき給与を支払うべきタイミングで支払えるよう、平時から運用を整えておくことが重要です。
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 浅田 一樹
浅田 一樹
 阿久津 透 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/東京弁護士会所属)
阿久津 透 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/東京弁護士会所属)


















