公取委が共同通信社に勧告、フリーランス法の規制について
2026/02/26 契約法務, コンプライアンス, フリーランス法

はじめに
業務委託をした将棋のプロ騎士などに取引条件を明示していなかったとして、公取委が株式会社共同通信社に勧告していたことがわかりました。
一部期日までの報酬の不払いもあったとのことです。今回はフリーランス取引適正化法の明示義務について見ていきます。
事案の概要
正確公平な内外ニュースの提供等を目的に全国の新聞社およびNHKが組織する社団法人、「一般社団法人共同通信社」。
そのグループ会社の一つに、広報・PR支援、イベント企画、出版などを手掛ける「株式会社共同通信社」があります。
公取委の発表によりますと、その株式会社共同通信社は、自社が企画運営する囲碁や将棋のイベントの立会・撮影、自社が出版する年鑑等の原稿などの執筆等でプロ棋士や記者、カメラマンなどフリーランスに各種業務の委託をしていたとされます。
しかし、同社はこれらフリーランス45名との業務委託契約の際、直ちに取引条件を明示しなかったとされており、また41人には報酬の支払期日までに報酬を支払っていなかったとのことです。
これに対し公取委は同社に対し、「フリーランス取引適正化法を遵守する体制を確立するために必要な措置を講ずること」を命ずる勧告を出しました。
フリーランス取引適正化法と規制対象
近年働き方の多様化が進み、フリーランスという働き方を選択する労働者が急増しました。それに伴い取引先企業との関係で報酬の不払いやハラスメントなど様々なトラブルも報告されています。
そこで個人であるフリーランスと企業との間の交渉力や立場の格差を是正しフリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的にフリーランス・事業者間取引適正化法が成立・施行されました。
本法で対象となるフリーランスを「特定受託事業者」、発注事業者を「特定業務委託事業者」といいます。特定受託事業者とは(1)個人であって従業員を使用しない者、(2)法人であって1人の代表者以外に役員も従業員も使用していない者をいうとされています。
これに対し特定業務委託事業者は、(1)個人であって従業員を使用するもの、(2)法人であって2人以上の役員または従業員を使用する者のいずれかでありフリーランスに業務委託をする事業者とされています。
これに該当する発注事業者には本法により取引条件の明示義務(3条)や報酬支払義務(4条)、募集情報の的確表示義務(12条)、ハラスメント対策体制整備義務(14条)や受領拒否、減額、買いたたき、返品、購入利用強制、不当な経済上の利益要請、不当な給付内容の変更やり直しなどの禁止行為(5条)が規定されています。
取引条件の明示義務
上記のようにフリーランスに業務委託をする際には直ちに取引条件を書面または電磁的方法により明示することが義務付けられています(3条)。これは逆にフリーランスが発注する場合も同様に義務付けられます。
明示すべき事項は、
(1)委託事業者とフリーランス両当事者の名称
(2)業務委託をした日
(3)フリーランス側の給付内容
(4)給付を受ける期日
(5)給付を受領する場所
(6)給付内容について検査をする場合は検査完了期日
(7)報酬の額および支払期日
(8)金銭以外で報酬を支払う場合は支払方法
に関する事項となっています。
報酬の額について具体的な金額を明示することが困難なやむを得ない事情がある場合は算定方法を明示することも可能です。ただしその算定方法は報酬額の算定根拠が確定すれば具体的な額が自動的に確定するものでなければなりません。
また、未定事項がある場合は正当な理由があれば委託時に明示しなくてもよいとされます。その場合、内容が定められない理由と内容が定まる予定日を委託時に明示する必要があるとされています。
期日における報酬支払義務
発注事業者は発注した給付を受領した日から起算して60日以内のできるだけ短い期間内で支払期日を定めて、その日までに報酬をしはらわなければならないとされています(4条)。
これが再委託である場合は、元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることとなります。
ちなみに、支払期日を定めなかった場合は給付を実際に受領した日が支払期日となります。給付を受領した日から起算して60日を超えて支払期日を定めた場合は受領日から起算して60日を経過する日が支払日となります。
支払期日の定め方としては「○月○日支払」や「毎月○日締め切り、翌月○日支払」といった具体的な日が特定できるように定める必要があります。「○月○日まで」や「○日以内」といった具体的な支払日が特定できない定め方はできないとされています。
コメント
本件で共同通信社はフリーランスに業務委託をする際、取引条件を書面または電磁的方法によって直ちに明示しなかったとされます。
また、フリーランス41人に対し業務委託した際には報酬の支払期日を定めておらず、また給付を受領した日までに報酬を支払っていなかったとのことです。
上でも触れたように報酬の支払期日を定めなかった場合は給付の受領日が支払日となります。公取委はフリーランス取引適正化法に違反するとして勧告を出しました。
以上のように現在企業がフリーランスに何等かの業務委託をする場合、取引条件等を明示した書面または電磁的記録を直ちに交付する必要があります。
これは当事者間でトラブルが発生することを予防し、また問題が生じた場合、訴訟などで解決の拠り所となります。違反した場合は公取委による勧告や命令などの行政処分が出され、これに違反した場合には50万円以下の罰金となっています。
これまで電話や口頭などで依頼していたなどの慣習がある場合は本法に抵触していないかを確認し、書面の交付義務の存在等を社内で周知しておくことが重要といえるでしょう。
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