「シティ・メディカル・ホールディングス」が再建へ、会社更生手続きについて
2025/09/18 事業再生・倒産, 倒産法, 破産法, 医療・医薬品

はじめに
「薬局コア・ファーマシー」「富士薬局」などを展開する「シティ・メディカル・ホールディングス」(文京区)が8月31日、東京地裁から会社更生手続開始決定を受けていたことがわかりました。
負債総額や計約30億2600万円とのことです。今回は会社更生手続きについて見直していきます。
事案の概要
「シー・シー・コアファーマシー」はシティメディカルを持株会社とし、同グループの中核として調剤薬局事業を展開していました。「薬局コアファーマシー」などを中心に21店舗を運営する他、家庭用医薬品や医療用品の販売も手掛け、2024年5月期には売上高23億円を計上していたとされます。
しかし、報道などによりますと、一部役員がグループ外に多額の資金を流出させていたことが発覚し、2025年7月30日にコアファーマシーとシティメディカルが会社更生手続き開始の申し立てをしていたとのことです。
負債はシティメディカルが約6億4600万円、シーシーコアファーマシーが約18億6600万円、コアファーマシーが約2億4000万円とされ、現在複数社がスポンサーとして名乗りを挙げているといいます。
会社更生とは
会社更生とは、経営が行き詰まった株式会社を裁判所が選任した更生管財人の主導の下で利害関係者の利害を適切に調整しつつ事業の再建を図る会社更生法上の手続きです。
会社の倒産手続きは大きく分けて「清算型」と「再建型」が存在しますが、会社更生は「再建型」に分類されます。
「清算型」は会社財産を換価・処分し債権者に分配して最終的に会社の法人格は消滅することとなります。破産や特別清算などがこれに該当します。これに対し、「再建型」は会社を存続させたまま事業を立て直していきます。
「再建型」は会社更生の他に民事再生もありますが、会社更生のほうがより厳格で大規模な手続きとなっています。以下、具体的に手続きを見ていきます。
会社更生手続きの流れ
会社更生手続きは大まかに、(1)更生手続開始の申し立て、(2)更生手続開始決定、(3)債権届出、(4)更生計画案、(5)更生計画遂行となっています。
更生手続開始の申し立てが出来るのは、債務者である株式会社自身、資本金の10%以上に当たる債権を有する債権者、議決権の10%以上を有する株主となっています(会社更生法17条1項、2項)。
申し立てを受けた裁判所は、支払不能または債務超過が生ずるおそれがある場合、または弁済期にある債務を弁済すると事業の継続の著しい支障を来すおそれがある場合に開始決定を行います(41条1項)。開始決定と同時に更生管財人が選任され、会社の経営権や財産の管理処分権がすべて管財人に移ります(72条1項)。
そして、裁判所が定める債権届出期間中に債権者は会社に対して債権を届出ます(138条1項)。ここで届出なかった場合は原則として更生手続き内で権利行使ができなくなります。
更生管財人は債務の圧縮などを盛り込んだ更生計画案を裁判所に提出し、債権者や株主による決議を受けます(184条)。決議を受けた更生計画は裁判所によって認可され(199条2項)、会社は更生計画に従って会社を再建していくこととなります。
会社更生のメリット・デメリット
会社更生は上でも触れたように民事再生と同様、「再建型」の手続きとなります。そのため、破産や特別清算と違って会社の事業を継続することが可能です。
また、民事再生よりも非常に強力で、現経営陣は強制的に退任し全ての権限を更生管財人が掌握します。
さらに、債務や株主の権利についても変更が可能となっており抵当権などの担保権も例外ではありません。
このように強力に会社の体制を叩き直すことが期待できる一方で、現経営陣が強制的に退場させられる点はデメリットとも言えます。
これは会社への影響が極めて大きいと言えるからです。また、規模が大きく強力な手続きであることからコストが大きい点もデメリットに挙げられます。
なお、会社更生は基本的に大規模な会社が想定されており、手続きに要する費用は場合によっては億単位となってくるとされています。また、同じ理由で株式会社以外の小規模な会社は対象外とされています。
コメント
シティメディカル傘下の調剤薬局は現在も通常通り営業を継続しており、スポンサーとなる企業も複数現れているとのことです。今後は再建届出や更生計画案の策定が進んでいくものと見られます。
以上のように会社更生手続きは再建型倒産手続きの中でも株式会社のみを対象とした非常に強力な手続きです。経営陣も強制的に退任となり抜本的な会社の立て直しが可能となっています。
一方で、もうすこし柔軟な再建が望ましい場合は民事再生手続きも用意されています。会社の経営が行き詰まっている際には、それぞれの手続のメリット・デメリットを把握しつつ専門家と相談した上で最適な手法を選択していくことが重要と言えるでしょう。
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