ツルハHDで賛成率7割で承認、株式交換への対抗策
2025/05/29 商事法務, 会社法, 医療・医薬品

はじめに
現在、イオンとの統合を進めるツルハHDのウェルシアHDとの株式交換が株主総会で可決承認されていたことがわかりました。賛成率は72.29%とのことです。
今回は株式交換が行われる際に反対する株主の取りうる手段を見ていきます。
事案の概要
現在、ツルハホールディングスはイオン傘下のウェルシアホールディングスと株式交換により完全子会社化し、イオンの下で経営統合する計画を進めているとされます。
ツルハHDとウェルシアHDの株式交換後、イオンが統合後の会社に対して株式公開買い付け(TOB)を行う計画とされ、買付額は1株あたり1万1400円とのことです。
今回のツルハHDでの株式交換に対する株主総会の承認決議は、実質イオンによる経営統合の賛否を問うものであったとされ、賛成率は約72%と反対票も多い薄氷の可決であったとされています。
反対していた同社第2位の株主である英系運用会社オービス・インベストメントは、株式買取請求などを検討しているとのことです。
株式交換とは
株式交換とは、親会社となる会社が子会社となる会社の株式を全て強制的に取得する組織再編行為の一種です。これにより、比較的簡易な手続きで100%親子会社化が可能となります。
子会社の株主には対価として親会社の株式を交付することができ、多額の資金を用意しなくてもM&Aが可能となっています。
なお、似た制度として株式移転という制度が存在します。こちらは親会社となる会社を新設し、その会社に株式を100%取得させるというものです。これにより、ホールディングスとしてグループ化することが可能です。
株式交換も株式移転も、株主総会の特別決議による承認決議を要します。特別決議とは、議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席し、そのうち3分の2以上の賛成による決議をいいます。
反対株主の株式買取請求
それでは、株式交換に反対の株主はどのような対応を取ることができるのでしょうか。
会社法では株式交換に限らず、合併や分割、株式移転や事業譲渡などの組織再編行為に際して、反対株主には株式の買取請求を認めています(785条、797条等)。
この場合、会社はこれらの組織再編行為の効力発生日の20日前までに株主に対して通知を行います。株主総会の招集通知で兼ねることも可能です。
反対する株主は、株主総会に先立って反対の旨を会社に通知し、実際に株主総会で反対することとなります。
買取請求を行う株主は、通知から20日以内に会社に請求することとなります。価格については会社と協議を行うこととなりますが、30日以内に協議が整わない場合は裁判所に価格決定の申し立てを行うことができます。
なお、簡易組織再編の場合は株主に株式買取請求は認められていません。
差止請求
違法な合併や分割など組織再編行為に対しては、株主は差止請求をすることが可能です(784条、807条等)。
そして、会社法の平成26年改正により、株式交換についても差止請求が可能となりました(784条の2、796条の2)。
差止請求の要件は、株式交換が法令または定款に違反している場合で、株主が不利益を受けるおそれがあることとなっています。
例えば、株式交換契約の内容に瑕疵がある場合、備え置き書類等に不備がある場合、株主総会の承認決議に瑕疵がある場合、債権者異議手続きに不備がある場合、要件を満たしていない簡易・略式株式交換、完全子会社の株主への親会社株式の割当の不備などが挙げられます。
また、略式株式交換の際に著しく不当で、株主が不利益を受ける場合も差止請求が可能です(同2号)。
なお、簡易株式交換の際の親会社株主は差止請求が認められていません(796条の2但し書き)。
コメント
本件でツルハHDでの株式交換に関する株主総会では、特別決議による可決承認がなされたとされます。
しかし、賛成率は約72%と決議要件である3分の2に近い数字であり、反対も多いものであったと言えます。
今後、反対株主による株式買取請求などに発展することも考えられます。
以上のように、組織再編行為に関しては反対株主には一定の対抗措置が用意されています。
近年、いわゆる物言う株主やアクティビストの活動が活発化しており、安定した事業再建を目的として、これらの組織再編行為によって非上場化する会社も増加しています。
株式交換などを予定している場合には、会社法上の手続きだけでなく、反対株主などの対応についても入念に準備しておくことが重要と言えるでしょう。
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