ジャパネットたかた、「大人気おせちが今ならお得」の表示で措置命令
2025/09/16   コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法, 小売

はじめに


通販大手「ジャパネットたかた」がキャンペーン終了後に通常価格で販売する予定がなかったのに通常価格より1万円値引き価格で販売したのは違法として、消費者庁が措置命令を出していたことがわかりました。

ジャパネット側は売れ残った場合に通常価格で販売する予定だったと反論しているとのことです。今回は二重価格表示について見直していきます。

 

事案の概要


報道などによりますと、ジャパネットは2025年の正月用のおせち料理の販売で、24年7月22日~11月23日に早期予約キャンペーンを実施していたとされます。

その際通常価格が2万9980円と表示したうえで、「大人気おせちが今ならお得」などとキャンペーン期間内に予約すると1万円の値引き価格で購入できるように表示していたとのことです。公取委の調査では、ジャパネットがキャンペーン期間以外に通常価格で販売する計画はなかったと認定し、有利誤認表示が該当するとして消費者庁から措置命令が出されました。

なお、ジャパネット側は商品はセール期間内に全て売り切る予定で、売れ残ったら通常価格で販売する予定だったとしています。

 

有利誤認表示と二重価格表示


景品表示法第5条2号では、商品または役務の価格その他の取引条件について、実際のものまたは当該事業者と同種もしくは類似の商品もしくは役務を供給している他の事業者にかかるものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を“有利誤認表示”として禁止しています。

具体的には、商品・サービスの取引条件に関して実際よりも有利であるように偽って宣伝したり、競争業者のものよりも特に安いわけではないにもかかわらず著しく安いかのように偽って宣伝する表示を言います。その典型例の一つとも言えるのが二重価格表示です。

たとえば価格1000円で販売している製品に、「通常価格2000円」「今なら50%OFF」などと表示をする場合を言います。実際に普段2000円で販売しているのであれば問題はありません。しかし、そうでない場合に有利誤認となる可能性があります。

 

二重価格表示に関するガイドライン


公取委のガイドライン「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」によると、同一ではない商品の価格を比較対象価格に用いて表示を行う場合、または比較対象価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合に不当表示となるとされます。

また、過去の販売価格を比較対象価格とする場合、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対象価格とする場合は問題無いとされています。逆に「最近相当期間にわたって販売されていた価格」ではない場合、いつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなど正確に表示しない限りは不当表示に該当するおそれがあるとされます。

ちなみに、最近相当期間とは過去8週間のうち、半分以上の期間でその価格が適用されていた場合を言うとされています。

そして、将来の販売価格を比較対象価格とする場合は、表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないときは不当表示となるおそれがあるとされます。例えば、実際に販売することのない価格であったり、ごく短期間のみ当該価格で販売するに過ぎない場合などです。

 

違反した場合のペナルティ


二重価格表示が有利誤認表示のおそれがあると認められた場合、消費者庁と公取委、都道府県は連携して調査を行い、その結果景表法違反と認定されると対象事業者に弁明の機会を与えた上で措置命令が出されることとなります(7条)。

その内容は一般消費者の誤認を排除することと再発防止となります。さらに課徴金納付命令が出される場合があります(8条)。課徴金額は当該不当表示によって得た売上額に3%を乗じたものとなります。

ただし、当該不当表示にかかる商品・サービスの売上が3年間で5000万円以上ある場合でかつ課徴金の額が150万円以上となる場合に限り課徴金納付命令が出されることとなります(同条1項ただし書き)。

 

コメント


本件でジャパネットたかたは、「通常価格2万9980円」と表示した上で「大人気おせちが今ならお得」としてキャンペーン期間内に予約すると「1万9980円」で購入できると表示していたとされます。これはいわゆる二重価格表示に該当し、比較対象価格である「通常価格」は同社側の説明ではキャンペーン後に売れ残った場合に設定される予定であった価格とされます。

この場合は将来この価格で販売されることについて十分な根拠を示す必要がありますが、それができなかったのではないかと考えられます。

以上のように、公取委のガイドラインでは二重価格表示についてかなり厳格な基準が定められています。

通常価格も相当期間にわたって販売された実績が必要で、最低でも4週間は確保する必要があると考えられます。二重価格表示を行っている場合は、これらを踏まえて問題がないかを今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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