医薬品の販売許可手続まとめ
2016/12/02 薬事法務, 薬機法, 医療・医薬品

1 はじめに
動物ワクチンを販売する日生研株式会社が、医薬品の販売資格がない業者に動物ワクチンを販売したとして、卸売業の販売許可に関する医薬品医療機器法(旧薬事法。以下、法令名略)34条1項に違反しました。それに伴い、東京都は今年4月に業務改善を求める行政指導をしました。
そこで、今回は医薬品医療機器法に基づく、医薬品の販売許可に関する手続についてまとめたいと思います。
動物ワクチン大手、無資格業者に販売 都の調査に隠蔽も(朝日新聞)
日生研によるお詫びとお知らせ
2 「医薬品」の定義
「医薬品」とは、法で以下のいずれかに該当するものとされています。
「日本薬局方に収められている物」(2条1項1号)
「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの」(2条1項2号)
「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの」(2条1項3号)
3 販売の許可(総則的な規定)
薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、販売できません(24条1項)。具体的には、医薬品の販売業の「許可」について、「店舗販売業」(25条1号)・「配置販売業」(同条2号)・「卸売販売業」(同条3号)・「特例販売業」(同条4号)の4種類に分かれます。以下では、「店舗販売業」・「配置販売業」・「卸売販売業」の許可の手続について、説明します。
なお、6年ごとに更新を受けなければ、期間の経過により、効力を失います(同条2項)。
4 店舗販売業の許可
店舗販売業とは、店舗を構えて医薬品を販売する業務のことです。
(1) 申請先
店舗販売業の許可は、店舗ごとにする必要があります(26条1項)。許可に際し、申請書は原則として、店舗の所在地の「都道府県知事」に提出することになります。もっとも、保健所を設置する市の場合には、「市長」又は「区長」に提出することになります。
なお、店舗の名称及び所在地、構造設備等を記載した申請書を提出する必要があります(同条2項各号)。
(2) 店舗の「構造設備」
許可を得るためには、店舗の面積や貯蔵設備といった構造設備について、厚生労働省令(「薬局等構造設備規則」)で定める基準に適合している必要があります(同条4項1号)。
店舗の構造設備の基準(行政書士法人アイサポート総合法律事務所)
(3) 店舗の「販売体制」の基準
また、店舗における医薬品の販売又は授与の業務を行う体制が厚生労働省令(「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」)で定める基準に適合していなければ、許可されません(26条4項2号)。
(4)「申請者」
以下で述べる申請者は、許可が受けられない場合があります(26条4項3号、5条3号)。
①医薬品医療機器法の規定により許可を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者(5条3号イ)
②医薬品医療機器法の規定により登録を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者(同条号ロ)
③禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者(同条号ハ)
④医薬品医療機器法、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法その他薬事に関する法令や処分に違反し、その違反行為があつた日から2年を経過していない者 (同条号ニ)
⑤成年被後見人又は麻薬、大麻、あへん若しくは覚醒剤の中毒者(同条号ホ)
⑥心身の障害により薬局開設者の業務を適正に行うことができない者(同条号ヘ)
(5)「薬剤師」又は「登録販売者」
店舗を実地に管理する者(店舗管理者)は、薬剤師又は登録販売者である必要があります(28条1項・2項)。
5 配置販売業の許可
配置販売業とは、店舗を持たず、一般家庭等を訪問して、医師による処方箋を必要とせずに購入できる一般用医薬品を販売する業務のことです。
(1) 申請書先
配置販売業の許可は、配置しようとする区域をその区域に含む都道府県ごとに都道府県知事の許可が必要となります(30条1項)。
(2) 店舗の「販売体制」の基準
次に、店舗における医薬品の販売又は授与の業務を行う体制が業務省令で定める基準に適合していなければ、許可されません(26条4項2号)。
店舗の構造設備の基準(行政書士法人アイサポート総合法律事務所)
(3)「申請者」
上記の店舗販売業の許可と同様に、許可が受けられない場合があります(30条2項2号、5条3号)。
(4)「薬剤師」又は「登録販売者」
都道府県の区域を管理する者(区域管理者)は、薬剤師又は登録販売者でなければなりません(31条の2の第1項・2項)。
6 卸売販売業の許可
卸売販売業とは、医薬品を薬局や医療機関などに対して販売する業務のことです。
(1)申請先
卸売販売業の許可は、営業所ごとに、その営業所の所在地の都道府県知事の許可が必要となります(34条1項)。
(2) 店舗の「構造設備」
次に、店舗の面積や貯蔵設備といった構造設備が以下の厚生労働省令(「薬局等構造設備規則」)で定める基準に適合していなければ、許可されません(34条2項1号)。
営業所の構造設備の基準(行政書士法人アイサポート総合法律事務所)
(3) 「営業所」について
卸売販売業者は、営業所ごとに、薬剤師を置き、営業所の管理をする必要があります(35条1項)。もっとも、卸売販売業者が薬剤師で、自ら営業所を管理する場合は、薬剤師を置く必要がありません(同条項但書)。
(4)「申請者」
申請者が以下の事項に該当する場合、許可が受けられない場合があります(34条2項2号、5条3号)。
7 無許可の販売による行政処分及び罰則
医薬品販売の許可を得ていない無資格業者に対して、医薬品の販売をすることは、医薬品医療機器法24条1項に違反するので、厚生労働大臣は医薬品販売の「許可」の「取り消し」又は「業務」の「停止」を命じることができます(75条1項)。
また、罰則として「3年以下の懲役若しくは300万円以下」の「罰金」又はその双方が科されます(84条9号)。
8 具体的な事案
医薬品を無許可業者へ販売し、医薬品医療機器法24条1項に違反した事案として、以下のものがあります。
(1)スズケンの薬事法違反事例
株式会社スズケン(本社:愛知県名古屋市東区)の岐阜支店が、医薬品販売の許可を確認せずに、岐阜県総合医療センターの職員互助会に「血糖値測定用チップ」という医薬品を無許可で卸売りしたものです。
(2)テレビショッピング研究所の薬事法違反事例
他方で、株式会社テレビショッピング研究所(本社:東京都大田区)が、「医薬品」に該当するがんなどに効用があるキノコを原料にした健康食品を無許可で販売したものです。
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