会社法改正議論で「株主提案権」を制限すべきとの意見書 ー関西経済連合会
2025/05/15 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
法務省などで行われている会社法改正の議論に関西経済連合会が意見書を提出していたことがわかりました。株主の権利を今より制限すべきとのことです。
今回は改正が求められている株主提案権について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、関西経済連合会は3月、法務省や金融庁などに会社法の改正に関する意見書を提出したとされます。
意見書では株主提案権の見直しや長期保有株主への優遇措置などが盛り込まれていたとされ、株主提案の要件について英国やドイツと同じ5%に引き上げ、300個要件も削除するよう提案したとのことです。また、株主提案の提案内容についても業務執行の大まかな部分に絞るべきとしています。
関経連会長は会見で、方向性については一定の理解を得られたとし、今後も引き続き粘り強く実現を働きかけるとのことです。
株主提案権とは
株主提案権とは、一定数の株式を有する株主が株主総会において議題や議案を提案する権利を言います。
株主総会招集権限を持たない株主でも議題や議案を招集通知に記載して株主総会に積極的に参加し、株主総会を活性化させることが趣旨とされます。
ここで議題とは株主総会の目的そのもので、たとえば取締役選任の件や定款変更の件といったものを指します。そして、「議案」とはそれら議題に対して具体的な案、たとえば取締役としてA氏を選任すると言ったものや、定款何条を下記のように変更するといったものを指します。
なお、株主提案件は具体的に議題提案件、議案提案件、および議案の要領通知請求権の3つがあります。以下それぞれの要件を見ていきます。
株主提案件の要件
3つの株主提案のうち、議題追加請求権と議案の要領通知請求権については議決権の1%または300個の株式を保有していることが必要です(会社法303条、305条)。さらに公開会社である場合は6ヶ月前から引き続き保有し続けることも求められます。
株主総会当日に議案を提案することについては株式の持ち株要件は無く、単独株主権となっています(304条)。
ちなみに、議題追加請求および議案の要領通知請求についても、取締役会非設置会社である場合は持ち株要件はありません。
次に行使期間制限として、議題追加請求は総会開催日の8週間前までに行う必要がありますがこれも取締役会非設置会社の場合は制限はありません。議案の要領通知請求は取締役会の有無に関係なく8週間前までに行う必要があります。
拒否事由
近年いわゆる「物言う株主」であるアクティビストの活発化により株主提案も積極的に活用されるようになりました。そんな中、1人で膨大な数の議案が提案されるなど濫用的な権利行使も目立つようになりました。そこで、令和元年改正によって一定の株主提案を拒否できるようになりました。
まず議題追加請求については、
(1)当該株主が議決権を行使できないとき
(2)その提案が権利濫用に該当するとき(東京高裁平成24年5月31日)
に拒否することができます。
議案の要領通知請求については、それらに加え、
(3)その議案が法令または定款に違反するとき
(4)実質的に同一議案について議決権の10%以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していないとき
(5)議案の数が10を超える場合の超過分について拒否できます。
当日の議案提案については(5)以外が当てはまります。(4)の10%以上の賛成については定款でこれよりも低い数字を設定することも可能です。
コメント
以上のように現行会社法では濫用的な株主提案については一定の歯止めがかかっており、10個を超える議案の要領通知請求や1度10%の賛成も得られず否決した議案については3年間提案できないなど制限が設けられています。
しかし、そもそも株主提案件の株式保有要件については定款で要件を緩和することができても加重することは認められていません。そこで関経連は議決権要件を1%から5%に引き上げるよう法務省などに提案しているとされます。
現行法では株主提案権よりも要件が重い少数株主権は業務執行検査役の選任請求や会計帳簿閲覧権、役員解任の訴え、株主総会招集請求権となっておりいずれも3%となっています。改正が実現した場合これらよりも要件が重く株主提案は簡単ではなくなるものと予想できます。
法改正の動向に注視しつつ、それぞれの要件を確認し定時総会に備えておくことが重要と言えるでしょう。
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