タビオが3750万円分の自己株式取得を発表
2025/10/09 商事法務, 総会対応, 会社法, メーカー

はじめに
靴下の製造・販売を手掛ける「タビオ」が最大で3750万円分の自己株式取得をすると発表していたことがわかりました。
発行済株式総数の0.37%に相当する2万5000株とのことです。今回は会社法が規定する自己株式の取得について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、タビオが7日発表した2025年3~8月期の連結決算は純利益が前年同期比49%増の2億6600万円となり、売上高は微減の79億円だったとされます。
都市部での訪日外国人らの需要を取り込めたことやフットボールなどスポーツ向け商品の値上げ効果もあり、営業利益は3億5300万円と15%増であったとのことです。同社は同日、最大で3750万円を投じて自己株式を取得する旨発表しました。
取得期間は10月8日から26年10月7日までとされ、株主還元の強化や資本効率の向上が狙いとのことです。取得方法は東京証券取引所における市場買付となっています。
自己株式取得とは
自己株式の取得とは、株式会社がすでに発行した自社の株式を会社自身が取得することを言います。
かつては市場価格の健全性を阻害したり、資本の空洞化やインサイダー取引に悪用されるおそれなどから、原則として自己株式の取得は禁止されていました。その後、2001年の商法改正により解禁され、原則として制限なく無期限で自己株式の取得が認められるようになりました。
一口に自己株式の取得と言ってもその態様は様々で、株主との合意による取得や、取得請求権付株式の取得、取得条項付株式の取得、譲渡制限株式の譲渡不承認による取得、合併や吸収分割、事業譲渡などによって取得するといった場合もあります。
なお、自己株式は本来株主に認められている権利、議決権や剰余金配当を受ける権利、募集株式の割当を受ける権利などは認められていません(会社法308条2項、453条等)。
自己株式取得のメリット・デメリット
一般に自己株式取得には株価の安定化、株主への利益還元、資金運用、敵対的買収の防止などのメリットがあると言われています。
まず、会社の純利益を発行済株式数で割った1株当たりの利益(EPS)が発行済株式数が減少することで上昇します。これにより既存株主が持つ株式の価値が上昇するということです。
また、株価が低迷している場合には、会社が市場に出回っている自社株を買い戻すことによって株価を下支えすることができ、株価の安定化が期待できます。また、市場に出回っている自社株をある程度買い集めることによって敵対的買収を防ぐ効果もあるとされています。
それ以外にも、自己株式を保有しておくとそれを再び株主に割り当てたり市場に流すことによって再度資金調達に利用することもできます。
さらに、自己株式はM&Aの際の対価として利用することにより、資金調達の必要性を緩和することも可能と言えます。
自己株式取得の注意点
上でも触れたように、自己株式の取得には様々な場面がありますが、ここでは会社と株主の合意による取得について触れておきます。
株主との合意によって取得する場合は、まず手続き面としてあらかじめ株主総会で(1)取得する株式の種類や数、(2)取得と引き換えに交付する金銭等の内容および総額、(3)取得期間を定めておく必要があります(156条1項)。これには例外があり、取締役会設置会社が市場取引等により自己株式を取得する場合は、定款で取締役会決議により決定することができる旨定めることができます(165条2項)。
そして、自己株式の取得には原則として財源規制が及びます。自己株式の取得により株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、取得の効力発生日における分配可能額を超えてはならないとされます(461条1項)。
これに違反した場合、職務を行った業務執行者等はその帳簿価額に相当する金銭を会社に支払う義務を負うこととなります(462条1項1号、2号)。
コメント
本件でタビオは会社法165条2項の定款規定に基づいて取締役会決議で自己株式取得を決定しています。
取得方法は市場買付で、取得期間は8日から来年2026年の10月7日までの1年間となっています。現在同社の自己株式数は9000株余りとなっており、今回の取得で最大で約34000株の自己株式を保有する見通しです。
以上のように、会社法では配当可能額の範囲内で自己株式の取得を認めています。自己株式の取得は株価の安定化や組織再編の対価にも利用できます。取締役会設置会社の場合は定款で取締役会決議での決定を定めることも可能となっています。
自己株式取得の効果やメリット、手続きなどを把握した上で柔軟に利用していくのが重要と言えるでしょう。
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