環境アセスメント法改正案が閣議決定、報告書を長期間オンラインで公表へ
2025/03/14 コンプライアンス, 行政対応, 環境法務, 法改正, 環境法

はじめに
政府は3月11日、環境評価(アセスメント)や対策に関する文書の長期公開や手続きの簡略化を盛り込んだ環境アセスメント法(環境影響評価法)の改正案を閣議決定しました。今国会に提出するということです。
過去には環境アセスメントをめぐり、企業が周辺住民から裁判を起こされた事例もあります。石炭火力発電所の開発に関連した訴訟事例も合わせて見ていきます。
環境アセスメント法が改正へ
大規模公共事業をはじめ、環境に多大な影響を及ぼすおそれのある事業計画を策定する際、事業がもたらす環境への影響を事前に予測評価し、それに基づいて環境に配慮した事業判断(運用後の環境保全対策の盛り込みなど)を行う環境アセスメント。
環境アセスメント法は、こうした環境アセスメントの手続きに関して定めた法律です(1999年施行)。
対象となる事業は、道路、ダム、鉄道、空港、発電所など13種類の事業です。
このうち規模が大きく環境への影響が大きいおそれがある事業を「第1種事業」として定め、環境アセスメントの手続きが義務付けられています。また、第1種事業に準ずる規模の事業である「第2種事業」では、手続き実施の有無が個別に判断されます。
環境アセスメントは対象事業を行う事業者自らが実施するものですが、環境アセスメント法では、環境アセスメントを実施した事業者が「報告書」を公表するよう定めています。
この報告書の公表期間は約1ヶ月とされていますが、開発対象となった土地の周辺住民などは、継続的な公表を求めていました。
こうした声も受け、今回、政府は評価書などの資料を長期間公表することを定めた「環境アセスメント法」の改正案を閣議決定しました。
報道などによりますと公開期間は数十年を想定していて、インターネットでの公表を検討しているということです。周辺住民が、事前の影響予測と運用後の状況を確認しやすくなり理解が深まると環境省は期待しています。
また、1つの地域で複数の開発事業が行われる場合には、事業者がそれ以前に行われた事業の環境アセスメント結果と合わせ、複合的な環境への影響を予測するのにも役立てられるとしています。
環境アセスめぐる訴訟も
この環境アセスメントをめぐって、周辺住民などが訴訟を提起した事例が過去に多くあります。代表的な例が、神戸製鋼・石炭火力発電所 環境アセスメント訴訟です。
鉄鋼大手、株式会社神戸製鋼所が2018年に提出した石炭火力発電所2基の環境アセスメントを巡り、周辺住民らが「確定通知は違法だ」として、国を相手取り裁判を起こしたものです。
周辺住民らはCO2や微小粒子状物質「PM2.5」の排出による環境への評価が不十分だと主張。神戸製鋼所が策定した環境影響評価に対し国が「適正」とする通知を行ったのは違法であるとして、通知の取り消しを求めました。
世界的に廃止の流れが強まる石炭火力発電所の環境アセスメントに対する国の判断の是非が初めて争われた訴訟となりました。
第一審で大阪地方裁判所は、「神戸製鋼所が出した環境アセスメントについて、国が“適正”と判断したことは、裁量権の範囲を逸脱したものとはいえず、違法とは言えない」として住民側の請求を退けました。その後の二審でも請求が棄却されましたが、住民らは上告。
しかし、2023年3月に最高裁判所(第1小法廷)が住民側の請求は棄却する決定を下しました。
火力発電所訴訟で住民側敗訴、環境アセスメントとは(企業法務ナビ)
コメント
環境アセスメント法は1999年に完全施行されて以降、浮かび上がった課題や、生物多様性の保全、地球温暖化対策の推進、地方分権の推進、行政手続のオンライン化等の社会情勢の変化に対応しようとするために改正が行われています。
長期公開が義務化されると、アセスメント結果が長期にわたり精査されることになるため、環境対策の一貫性や適正な情報管理が重要になります。
事業者は、環境アセスメント法改正を見越し、既存の評価手法に問題がないかを確認し、状況により手続きを見直す必要がありそうです。
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- 原内 直哉弁護士
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