輸入差止3万件超で過去最多、偽ブランド品の問題について
2025/03/10 知財・ライセンス, コンプライアンス, 商標法, メーカー, 小売

はじめに
財務省は7日、2024年に全国の税関で偽ブランド品などの知財侵害物品の輸入差し止め件数が前年比4.3%増の3万3019件であったと発表しました。過去最多を更新したとのことです。今回は偽ブランド品について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、近年通販サイトを利用した小口の取引が活発になり、22年の法改正によって個人使用目的でも没収が可能になり、差し止め数が増えているとされます。知財侵害物品の中でも高級ブランドの腕時計やセーターなどを含む商標権侵害が全体の9割を占め、品目別では衣類が1万1774件で最多、次いでバッグ類が7293件と続いたとのことです。地域別では中国からが2万6604件で8割を占め、次いでベトナムからが3215件だったとされ、中国の物品が他国を経由して持ち込まれるケースもあったとされます。
偽ブランドと法規制
偽ブランド品とは、高級バッグや高級腕時計のコピー品や模倣品を言います。エルメスやグッチ、ロレックスといった非常に高価で人気のあるブランド品は近年多くのコピー品が出回っており、特に「スーパーコピー品」「S級」「N級」といったプロでも見分けることが困難なものも出回ってきているとされております。これらのコピー品を輸入したり販売する行為は違法ですが、具体的にどのような法に抵触するのでしょうか。偽ブランド品に関してはまず、商標法が挙げられます。商品やサービスのロゴやネーミングである商標を保護するもので、権利者の許可なくブランドを使用する行為が該当します。これは商標登録されている商標が対象となります。次に不正競争防止法が挙げられます。これは登録されていなくても、世間一般に認識されているロゴなどが保護の対象となっております。そして商標権を侵害する物品の輸入を禁止している関税法もあります。さらに偽ブランド品であると知りつつ、それを秘匿して販売した場合は刑法の詐欺罪に該当する可能性があります。
商標法による保護
商標とは、事業者が自社の取り扱う商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマーク(識別標章)とされております。この商標は文字や図形、記号、立体形状やこれらを組み合わせたものなど様々なタイプが存在します。そして上でも触れたように商標は特許庁に商標登録することで当該商標を独占使用できるようになります。商標権は登録の日から10年間存続します。商標登録された商標を権利者の許可なく使用したり偽物、コピー品を製造したり販売すると商標権侵害となります。商標権侵害に対しては差し止め請求や損害賠償請求が可能ですが、別途罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となります(82条)。また法人に対しても両罰規定として3億円以下の罰金が規定されております。また商標を関係ない商品に印刷するといった、いわゆるパロディー品についても商標権侵害となり、罰則として5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(78条2項)。
偽ブランド品の個人使用目的
それでは偽ブランド品を個人使用目的で所持することは違法なのでしょうか。この点商標法では業として商標権を侵害する製品の製造・販売を対象としております(2条1項)。そのため自己使用目的で購入することや所持すること自体は現状違法とはなりません。ただし販売や転売目的で所持することはやはり違法となります。なお販売目的で購入したり輸入した場合でも、偽ブランド品と知らなければ故意が無く犯罪とはなりません。そして偽ブランド品など商標権を侵害する物品が輸入されようとしている場合、関税法ではそれらを没収・廃棄することができるとされております(69条の11第2項)。空港や港の税関で没収されるということです。この点について従前は個人が自己使用目的で輸入した場合は規制対象外となっておりましたが、令和3年の商標法・意匠法の改正および令和4年の関税法改正によって規制対象となりました。このため個人が海外業者から偽ブランド品を購入して輸入することもできなくなっております。
コメント
近年、海外から日本に入ってくるブランド品のコピー商品の品質が極めて向上しており、プロでも鑑定することが困難な、いわゆるスーパーコピー品が急増していると言われております。本物なら数100万円から1000万円を超えるような品物のコピー品が出回っているということです。しかしこれらは当然商標権を侵害している物品であるため、販売目的で輸入・購入・所持することは違法となります。またコピー品であるとわかっていて売却することも違法です。近年は上でも触れたように個人使用目的での輸入に仮装して輸入する業者があとを絶たず、税関等で偽ブランド品が発見されてもそこで没収ができないといった事態が多発しておりました。そこで法改正によりこのような場合でも現在では没収の対象となっております。ブランド品や海外製品を自社で扱っている場合は偽ブランド品が入っていないか、また個人輸入といった形で輸入していないかを確認し社内で周知することが重要と言えるでしょう。
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