違法な投資勧誘で「西山ファーム」元幹部らに賠償命令 ー名古屋地裁
2026/03/30 契約法務, 商事法務, ファイナンス, 出資法・貸金業法, 会社法

はじめに
岡山県の観光農園「西山ファーム」の違法な投資勧誘で損害を受けたとして、愛知や岐阜などの原告約40人が同社の元幹部や関連会社などに損害賠償を求めていた訴訟で26日、名古屋地裁が約2億8600万円の支払いを命じていたことがわかりました。「破綻を免れないことは明らかだった」とのことです。今回は出資法の規制について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、西山ファームは以下のスキームで資金調達を行っていたとされます。
(1)代理店を通じ、投資家に商品をクレジットカードで購入してもらう
(2)決済代行会社を通じて、商品代金の立替払いを受けて事業資金に充てる
(3)後日、西山ファームが投資家から商品を買い戻す
(4)その際、西山ファームは(1)の購入代金に一定の利益を上乗せして支払う
西山ファームの投資話は20~30代を中心に口コミで拡大し、投資家に利益を約束して資金を預かっていたとされ、約133億円を不正に集めていたとのことです。
約束された入金が滞り、商品購入に利用したクレジットカードの返済に行き詰まる被害が多数出ており、架空取引を疑った信販会社がカードを停止したことで問題が発覚したとされます。
なお、同ファームの実質経営者らには既に出資法違反で有罪判決が出されています。
出資法による規制
「出資の受入れ、預か金及び金利等の取締りに関する法律」、いわゆる出資法は、一般市民が事業者に多額の出資をしたり、お金を借りる際に高額の利息を搾取され生活の基盤を失ってしまうといった事態を防ぐことを目的とした法律です。
出資法による規制は、(1)出資金の受入れ制限、(2)預り金の禁止、(3)浮貸しの禁止、(4)金銭貸借の媒介手数料の制限、(5)高金利の処罰となっています。
浮貸しとは、金融機関の役員や職員などがその地位を利用して自己または当該金融機関以外の第三者の利益を図るために金銭の貸付けや金銭消費貸借の媒介、債務の保証等をする行為を言います。金融機関の内部の人間が正規の業務としてではなく自己または第三者のサイドビジネスとして貸付け等を行う行為は金融機関の信用を失墜させるものとして禁止されています(3条)。
金銭貸借の媒介を行う者は貸借額の5%を超えて手数料等を受け取ることが禁止されており(4条)、また金銭の貸付けを行う者はその利息についても厳格な規制が置かれています(5条)。
出資金の受入れ制限等
出資法1条では、「何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない」とされています。
「何人も」とあるように貸金業者に限られず誰でもが行為の主体となり得ます。
「出資金」とは一般に共同の事業のために拠出される金銭であってその目的たる事業の成功を図るために用いられるものをいうとされます。本条で重要な点としては、事業の成否を問わず確定的に出資した元本またはそれを上回る利益配当を約束することとされており、いわゆる誇大広告的に出資者の判断を誤らせる表現が禁止されています。
ちなみに、本条に該当する行為が同時に詐欺罪を構成する場合は詐欺罪のみが成立するとされます(8条4項)。
次に、出資法2条では、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」(1項)とされています。
そして「預り金」とは、「不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであって」「預金、貯金又は定期積金の受入れ」「社債、借入金その他のいかなる名義をもってするかを問わず、前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの」とされています。
こちらは1条とはことなり「業として」行う者に主体が限られており、「業として」とは反復継続の意思をもって預り金をすることを言うとされています(東京高裁昭和35年11月21日)。このような者が、不特定多数から元本を保証して預け人の便宜のために金銭などを保管するといった行為が禁止されています。
違反した場合の罰則
これらの規定に違反した場合は罰則として3年以下の拘禁刑、300万円以下の罰金またはこれらの併科となっています(8条3項1号)。
また、法人に対しても3000万円以下の罰金となっています(9条1号)。
上でも触れたように出資金の受入れが同時に詐欺罪を構成する場合は詐欺罪のみが成立すると条文で規定されていますが(8条4項)、不特定多数の者から詐欺的手段によって業として預り金を受入れた場合には争いがあるとされます。まず、個人的法益保護を目的とする刑法の詐欺罪に対し、出資法2条は社会的法益保護を目的としており、保護法益が異なることから観念的競合となるとする説があります。
次に、両者は終局的には個々人の財産を侵害するものであるから両者は法条競合となり詐欺罪に吸収されるとする説があると言われています。
コメント
本件で西山ファームは、不特定多数から代理店を通じて商品を大量に購入してもらい、クレジットカード会社からの建替え払い金としてお金を預かり、購入してもらった商品は買い戻して代金の3割りを利益として支払うといったスキームで金銭を集めていたとされます。
名古屋地裁は遅くとも2016年末頃までには商品の仕入れなどを行わない架空取引を行うようになったとし、利益の裏付けとなる原資がなく、いずれ破綻を免れないことは明らかとして継続的勧誘行為を違法としました。なお、本件を巡り刑事では2024年7月に名古屋地裁で懲役2年、執行猶予4年、罰金150万円の有罪判決が出ています。
以上のように出資法では元本保証や確実な利益などをうたって不特定多数から金銭を集めるといった行為が厳格に禁止されています。また、それ以外の例えばファンドといった形式での投資勧誘等については別途金商法で登録が義務付けられるなどの規制が置かれています。
募集株式発行や社債の発行、金融機関からの借り入れ等以外で資金集めを検討している場合はこれらの規制に留意して専門家の指導のもと慎重に進めていくことが重要と言えるでしょう。
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