モントローが製造所虚偽記載で再発防止、食品表示法の規制について
2024/01/29 コンプライアンス, 行政対応, 広告法務, 食料品メーカー, 小売

はじめに
山口県の菓子製造会社が、他社から仕入れたゼリーに自社シールを貼って販売していたとして、県が是正指示を出していたことがわかりました。再発防止に務めるとのことです。今回は食品表示法の規制について概観していきます。
事案の概要
報道などによりますと、山口県内で「モントロー洋菓子店」を運営する周南市の「有限会社お菓子職人」は2023年5月~7月にかけて他社から仕入れた生菓子のゼリー合計4280個に自社シールを付けて下松市の店舗などで販売していたとされます。もともと自社で製造していたものの、人手不足で他社から仕入れるようになり、仕入れたゼリーに製造者の表示がなかったため自社のシールを貼って販売していたとのことです。消費者庁からの情報提供により県周南環境保健所が2023年9月~10月に複数回にわたって同社に立入検査を実施していたとされ、県が食品表示法に基づいて原因究明と再発防止を指示しました。
食品表示法による規制
食品表示法は、食品を摂取する際の安全性および一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保するため、食品衛生法、JAS法、健康増進法の食品表示に関する規定を統合して食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設することを目的に制定され平成27年に施行されました。これまで食品のアレルギー物質や添加物については食品衛生法、内容量や原産国等についてはJAS法に規定があり、名称や消費期限 製造者等については両方に規定が存在し、栄養成分等については健康増進法に規定があるなど、食品に関する表示の規制が煩雑でわかりにくいものとなっておりました。そこでこれらを全て食品表示法と食品表示基準に統合されております。これにより整合性が取れた消費者、事業者双方に分かりやすい表示の実現が期待されます。
食品表示規制の概要
食品表示法4条では、内閣総理大臣は食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に選択するため食品表示基準を策定するとしております。そして食品関連事業者はこの食品表示基準に従い食品の表示をする義務を負います(5条)。食品表示基準では大きく品質事項、衛生事項、保健事項に分けられ、品質事項は食品の品質に関する表示の適正化を図るために必要な表示事項、衛生事項は国民の健康の保護を図るために必要な表示事項、保健事項は国民の健康の増進を図るために必要な表示事項となっております。具体的には、(1)品質事項として原材料名、原料原産地、内容量、原産地、原産国名、食品関連事業者等、(2)衛生事項として添加物、賞味・消費期限、保存方法、アレルゲン、製造所等、(3)保健事項として栄養成分表示、機能性表示食品となります。品質事項と衛生事項の両方に該当する事項として名称と遺伝子組み換えに関する事項があります。
行政処分等
食品表示法違反に対しては、内閣総理大臣、農林水産大臣、財務大臣は表示事項を表示し、遵守事項を遵守すべき旨を指示することができ、指示を受けた者が正当な理由なく指示に従わない場合は命令を、緊急の必要があるときは食品の回収や業務停止命令を出すことができ、その旨を公表することができるとされます(6条、7条)。違反調査のために必要がある場合は立入検査、報告徴収、書類等の提出命令、質問、収去などを命じることができます(8条~10条)。また安全性に関する表示、原産地、原料原産地表示についての違反には2年以下の懲役、200万円以下の罰金等の罰則も置かれております(18条、19条等)。食品の表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認める場合は、何人も内閣総理大臣等に申し出ることができ(12条)、適格消費者団体は差止請求が可能とされます(11条)。
コメント
本件で有限会社お菓子職人モントロー洋菓子店は、自社で製造していない他社製造のゼリーに自社のシールを貼付して販売していたとされます。これは食品表示基準3条に列挙されている食品関連事業者の氏名又は名称及び住所について事実と異なる表示となります。県および保健所は立入検査を経て再発防止などの指示を出しました。以上のように現在食品表示に関する規制については食品表示法で一元的に規定が置かれております。また食品表示基準では加工食品、生鮮食品、添加物のそれぞれの分野で詳細な表示事項が規定されており違反には行政処分や罰則が用意されております。他社に外注して自社で販売している製品など、表示が正しくなされているかを今一度確認し社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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