コロナ給付金不正受給のコンサルティングで会社代表ら逮捕/犯罪収益等隠匿罪とは
2022/11/28 コンプライアンス, 行政対応, 刑事法

はじめに
警視庁犯罪収益対策課は、新型コロナウイルス対策の持続化給付金の不正受給を指南し、それにより得た報酬を隠したとして、26日までに、iNiDEP株式会社(名古屋市)の代表取締役を含む同社関係者5人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで逮捕しました。また、法人としてのiNiDEPも書類送検されており、全国で初めて組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の法人適用による立件となりました。
今回逮捕された5人の容疑者は、2020年5月から9月にかけて、持続化給付金の受給要件を満たさない10代から50代の会社員等37人に不正受給を指南。虚偽の申請により受給した持続化給付金から、コンサルタント料と称して一人あたり20万円を代表取締役の口座に振り込ませた疑いが持たれています。
警視庁は、5人の容疑者が、上記の他にも150人前後に不正受給の申請方法などを教え、コンサルタント料を受け取ったとみて余罪を調べているとのことです。
犯罪収益等隠匿罪とは
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第10条1項には、「犯罪収益等の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。犯罪収益の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。」と規定されています。
犯罪収益の仮想行為とは、他人名義で銀行に預貯金する行為、盗んだものを他人名義で質入れする行為等が挙げられます。また、犯罪収益の隠匿行為については、物理的方法等により隠匿する方法が挙げられます。本件では、前者の仮想行為に、同社の代表者の預金口座に振り込んだ行為が該当するといえます。
また、同法17条では、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第九条第一項から第三項まで、第十条又は第十一条の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。」と規定されており、上記の10条1項に違反した行為を法人として行っていた場合は、300万円以下の罰金刑を科せられます。
持続化給付金の詐取
今回問題となった持続化給付金は、新型コロナウイルスの感染拡大により、経営に大きな影響を受けた事業者に対し、事業の継続および再起支援等を目的に、事業全般に広く使える、給付金を支給する制度です。中堅・中小事業者に最大200万円、フリーランスを含む個人事業主に最大100万円が給付され、総額5.5兆円の大規模支援となりました(現在は申請受付終了)。
しかし、その一方で、警察に検挙された不正受給の容疑者が数千人単位に及んでいます。しかも、そのうちの大半が20代の若者だったという話もあります。中には、「不正と認定される場合は、そもそも審査で弾かれるだけだから、犯罪をするわけじゃない」という口車に乗って、申請を行った者もいるそうです。
【不正受給の態様】
・事業者でないのに申請したケース
・各月の売上を偽って申請したケース
・売上減少の理由が新型コロナウイルスの影響と無関係で、なおかつ、その場合に給付対象とならないことを認識しつつ申請したケース
※季節により売上変動があることが一般的な事業において、あえて、閑散期を対象月として申請したケースもあるといいます。
経済産業省は、不正受給と判断された場合以下の措置を行うとしています。
(1)給付金の全額に加え、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年3%の割合で算定した延滞金の返還請求。
(2)上記に加え、給付金全額と延滞金の合計額の2割に相当する金額の請求。
(2)申請者の屋号・雅号・氏名等を公表。事案により刑事告発。
なお、中小企業庁が調査を開始する前に自主的な返還の申出および返還の完了をした者には、原則として加算金・延滞金は賦課されないとのことです。
コメント
持続化給付金の不正受給を行った者の中には、一般的な会社員も少なくないと言われています。コロナ禍に乗じた詐取事件とあって、自社の社員の中から、刑事告発の対象者が出てしまった場合のレピュテーションリスクは小さくないものとなると想定されます。
法務として、念のため、どういった行為が不正受給に該当し、万が一、不正受給していた場合に、どうやって自主返還を行えばよいのかを社内アナウンスしておくとよいかもしれません。
【関連リンク】
持続化給付金・家賃支援給付金の自主返還事務局のホームページ
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