「食べログ」裁判でカカクコムに賠償命令
2022/06/22   コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法

 

はじめに


東京地方裁判所は2022年6月16日、レストラン検索・予約サイトの「食べログ」において店の点数をつけるアルゴリズムに関連して、食べログを運営する株式会社カカクコムに対して3,840万円の損害賠償を命じる判決を下しました。この判決はAIによる表示機能がどこまで許されるのかをめぐり、ネット上でも話題となりました。そこで本記事では、本件訴訟の詳細について見ていきましょう。

 

訴訟の経緯


本件訴訟の原告は焼き肉チェーン「KollaBo」を運営している株式会社韓流村です。韓流村の主張によると、これまで評価の高かった21店舗のチェーン店に関して、特にネガティブな口コミが増えたわけでもないにも関わらず、2019年5月21日になって一斉に食べログ上の評価が下がったというものです。報道によると、下落幅が最も大きかった店舗では3.51から3.06に下がった店舗もあったとされています。韓流村は、一連の評価の低下は、食べログにおいて、チェーン店の店舗の評価を一律不当に下方修正するアルゴリズムの変更が行われたことが原因と主張し、「アルゴリズムの変更は独占禁止法に違反する」としています。こうした背景から、韓流村は、2022年5月に食べログを運営するカカクコムに対し、約6億4,000万円の損害賠償および変更後のアルゴリズムの使用差し止めを求める訴訟を東京地方裁判所に提起しています。なお、韓流村が求めた約6億4,000万円については、食べログの評価の下落により約3年間で生じた顧客および売り上げの減少額から算出されたものだそうです。

 

判決内容


6月16日付の東京地方裁判所の判決では、食べログを運営するカカクコムに対して3,840万円の賠償命令が下されたほか、原告のその余の請求(変更後のあアルゴリズムの使用差し止め)を棄却すること、訴訟費用は原告側が25分の24を負担することなどが言い渡されました。この結果に対し、カカクコムは「不当な判決であると考えている」とコメントし、即日、東京高等裁判所への控訴手続きを行っています。

<独占禁止法第2条9項6号イ>
(9) この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること
六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。


 

公正取引委員会の意見書について


本件訴訟で争点となった、独占禁止法上の不当・差別的取り扱いについて、公正取引委員会が指定する一般指定第4項では、「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取り扱いをすること」として規定しています。これらを前提に、本件訴訟では、2021年9月16日に公正取引委員会が、食べログのアルゴリズムの設定・運用が韓流村を不当・差別的に取り扱うものか、優越的地位を濫用規制に抵触するかについて意見書を提出しており、訴訟の趨勢を大きく左右したのではと言われています。
【外部リング】韓流村が公開した公正取引委員会の意見書(公審第650号)

 

コメント


食べログは2022年時点で掲載店舗数が約82万店を超えており、月間利用者数は8700万人超いるという巨大飲食プラットフォームです。しかし、このようなプラットフォームにおける評価点数はどのように決まるか、アルゴリズムが公開されていない現状では外部から予測することはできません。今回の判決では、アルゴリズムの変更が原告に予測不可能な不利益をもたらしたとしています。本件訴訟は東京高等裁判所に舞台を移して継続中ですが、今回の判決を受けて、今後は国内の飲食プラットフォームも評価の透明性を担保しなければならないかもしれません。食べログの競合にあたる「ぐるなび」は、引き続き飲食店にとってフェアな情報提供を可能にするプラットフォームを提供するとコメントしており、業界全体として、プラットフォームの中立性を高めることが求められています。今後はアルゴリズムの中立・公平な運用、外部への仕組みの開示などが進んでいきそうです。
 

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