ウイルス作成罪 改正案概要提示
2011/02/12 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 刑事法, IT
改正案の概略
法務省は9日、今国会に提出する方針を固めている「コンピューターウイルス作成罪」の創設を柱とした刑法や刑事訴訟法などの改正案の概要を、民主党法務部門会議に示した。
今回の改正案では、ウイルスの作成行為を直接罪に問える「ウイルス作成罪」の創設が柱だ。
内容
改正案は、正当な理由なくウイルスを作成したり、ばらまいた場合、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」にする。
取得・保管した場合も「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」を科す。
今回は「正当な理由がないこと」を成立要件に加えて処罰対象を限定した。これは、正当な行為まで処罰対象となる、との批判を受けてのもの。
また、捜査時にインターネット接続業者や企業に要請する通信履歴の保全期間は、これらの者たちの負担を考慮し60日間に短縮した。
条文解釈の問題点
今回の改正案条文では、1つの疑問が提示されている。
それは、今回の条文が、目的犯を定めたものか、というものである。
目的犯であれば、故意とは別に、主観的違法要素が要求される。これにより、処罰範囲を適正な範囲に限定できる。
反対に、故意犯であるとすると、処罰範囲が広くなるものと考えられる。
もちろん、正当な理由を構成要件に加えるので、そのような懸念は、無駄な議論にも思われるが、そもそも、正当な理由自体が、構成要件の解釈としては馴染まない様に感じる。
本来、正当理由などは、違法性の段階で検討すべき違法要素であり、実質的判断を必要とするものだ。それは、客観的、形式的判断の段階の構成要件レベルでは、判断が難しい。
そうであるならば、目的犯であることを明確にした方が、自由保障としては適切であると考えられる。
文書偽造罪と比較して考えるならば、今回の改正案条文についても、目的犯と考えるのが、自然かもしれない。
最後に
サイバー犯罪を巡っては、ファイルを勝手にタコやイカのイラストに書き換えてしまう「タコイカウイルス」事件が思い出される。その事件では、器物損壊容疑で逮捕したが、器物破損というのは、あまり自然な適用例とは言えない感じもする。相手のパソコンのハードディスクを使えなくしたという容疑で適用されたが、現行法での摘発の難しさがあった。
今回の改正案は、このような背景も考慮されている。
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