中外製薬による特許権侵害の訴え、東京地方裁判所で棄却
2022/03/17 知財・ライセンス, 薬事法務, 特許法, 医療・医薬品

はじめに
中外製薬は、2021年2月より、東京地方裁判所において、「骨粗鬆症治療剤に関する特許権侵害」を理由とする訴訟を提起しておりましたが、先月、同社の主張を棄却する判決が下されました。今回の特許権侵害訴訟の内容を時系列に沿って解説していきます。
特許権侵害訴訟の背景
中外製薬が製造する「エディロールカプセル」は、“エディロールカプセル0.5μgおよび“エディロールカプセル0.75μg”という販売名で販売されており、骨粗鬆症に対する効能をうたった薬品です。2020年2月17日、沢井製薬株式会社と日医工株式会社が、この「エディロールカプセル」の後発医薬品について、製造販売承認を取得しました。沢井製薬株式会社と日医工株式会社は、今回の後発品の原薬製造を日産化学に委託しており、日産化学から原薬を購入・使用し、後発品を製造・販売しています。このプロセスの中で中外製薬は、「沢井製薬株式会社、日医工株式会社社、日産化学は当該後発品の製造及び販売のため、中外製薬が保有する特許の権利範囲に属する結晶形を生産し使用している」と、同社のホームページ上で主張しています。
中外製薬が訴訟を提起
このような状況を受け、中外製薬では同社が保有する特許第3429432号に基づいき、沢井製薬株式会社、日医工株式会社及び日産化学株式会社に対して東京地方裁判所に特許権侵害訴訟を提起しています。当該訴訟で求める内容としては、中外製薬が保有する特許の権利範囲に属する結晶形の生産、使用の差止め、廃棄、及び損害賠償となります。
判決および各社のコメントについて
2022年2月24日、東京地方裁判所において原告である中外製薬の請求を棄却する旨の判決が下されました。これに対して、各社がコメントを発表しています。まず、原告である中外製薬は、判決が下された当日に「エディロールカプセルに関する特許権侵害訴訟における東京地方裁判所の判決について」という文書を公表し、会社の業績に影響を及ぼすものではないこと、判決の内容を踏まえた上で、今後の対応を検討することとしています。また、今回勝訴となった沢井製薬は、原薬は中外製薬の有する特許を侵害しないと認定され、製造販売の継続に何ら問題が生じることはないこと、知的財産権を尊重した取り組みを行うことを挙げ、商品や事業の継続性に影響を与えるものでないことを強調しています。日医工も同様に知的財産権の尊重を掲げつつ、“エルデカルシトールカプセル0.5μg、0.75μg「日医工」”の安定供給確保、ジェネリック医薬品の普及に努めることを掲げています。日産化学は、研究開発の成果である知的財産権の確保と適切な行使は重要であるという認識を示し、今後も他社の権利を尊重しながら事業を継続していくとコメントしています。
中外製薬|エディロールカプセルに関する特許権侵害訴訟における東京地方裁判所の判決について
コメント
中外製薬は今回の主張の棄却を受け、今後の対応については特段コメントしていません。勝訴した3社については、事業の継続に問題なく、これまで通り後発医薬品の供給がおこなわれるものと考えられます。なお、中外製薬は過去に、乾癬(かんせん)治療薬「オキサロール軟こう」の後発医薬品を販売した医薬品メーカー等による、有効成分「マキサカルシトール」の製法特許侵害を主張した訴訟で勝訴しています(2016年3月26日)。その時の最高裁は、特許権の侵害となる5つの要件を示した上で、すべてに該当すると認定し、後発医薬品メーカー側の特許侵害を認めた上で、販売を差し止める仮処分を付しました。訴訟で5要件を満たすケースは稀で、製薬分野では当時初の事例でした。
日経新聞|後発薬の特許侵害認める 中外製薬の訴訟控訴審で知財高裁
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