グローバルダイニング、営業時間短縮命令の適法性を巡り東京都を提訴
2022/02/21 行政対応, 訴訟対応, 行政法

はじめに
新型コロナウイルス感染症の拡大により多くの国民が自粛生活を余儀なくされた中、東京都の飲食店に対する営業時間短縮命令を巡り、係争が生じています。本訴訟では時短命令の違法性・違憲性が争点となっていますが、行政側の対応の鈍さや制度的なハードルが指摘されています。今回は訴訟の内容や行政側の対応をまとめながら、係争の全体像を見ていきます。
本訴訟の経緯
大手飲食店チェーンの株式会社グローバルダイニングは、東京都の新型インフルエンザ対応特別措置法を根拠とした営業時間短縮命令に対して違法・違憲を主張し、損害賠償を求めています。東京都からの時短命令は第3回となる緊急事態宣言中の2021年5月18日からで、命令は23店舗を対象としていました。さらに、同年5月27日からの命令では3店舗が対象とされています。グローバルダイニングはこの命令を受け入れず、通常営業の継続を行った結果、都から26店舗すべてに対して特措法で定められた過料上限の30万円、合計780万円が科せられています。これに対してグローバルダイニングは不服を申し立て、2022年1月4日、即時抗告を行っています。
グローバルダイニング|過料決定及び即時抗告のご報告
過料決定までの流れ
営業制限の要請に応じなかったとしても、過料の決定は突然行われるものではありません。まずは自治体が飲食店に対して時短営業の「要請」を行います。その後、要請に従わなかった場合、行政訴訟法上の「命令」がおこなわれることとなります。この命令に従わなかった場合、裁判所への過料通知がなされ、飲食店に過料が決定されることになります。
グローバルダイニングの過料決定までの経緯
グローバルダイニングの場合も上記の過料決定の流れに沿って都とやり取りがおこなわれていました。具体的には、2021年4月28日、5月12日付け書面でそれぞれ、小池東京都知事から新型インフルエンザ特措法45条による休業と使用制限の要請がおこなわれています。あわせて、要請に従わない理由について、「弁明及び意見について」という書面を東京都に提出しています。2021年5月18日及び5月27日には、都知事により「休業命令」と「時短営業と酒類販売停止の命令」が全26店舗に対してなされます。続いて、2021年10月12日付け書面「求意見書」が東京地方裁判所より届き、グローバルダイニング側は10月25日付けで「求意見書」に対する「回答書」に意見書を添えて提出しています。
コメント
グローバルダイニングは東京地裁に対する意見書において、①特措法45条要請に応じない「正当な理由」があった、②都が「正当な理由がない」とした判断基準が開示されていない、③東京都の手続きに瑕疵があった、④会社への命令は違憲・違法であり、過料は無効、という4点を主張しています。その後、2021年12月16日に過料の決定が書面で通知されており、グローバルダイニングは都に損失分の損害賠償を求める訴訟を起こすことになりました。グローバルダイニングはホームページにて代表名義で報告を行っており、「飲食店への休業要請・時短要請は極めて重要な感染抑制策であることに対するエビデンスは、これまでのところ一切出てきていない」と今回の措置を批判しています。海外では営業停止命令に対する反発が強く、例えばアメリカでは650件以上の訴訟が、フランスでは840件以上の判決が出されています。一方で、日本国内の類似事例はほとんど見られず、今後の係争の行く末に注目が集まっています。コロナの長期化による影響で、行政の行う対応が経済を圧迫するケースが多くみられる中、措置の根拠となる「エビデンス」がどこまで重要な要素となるのかも注目したいところです。
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