JAL元職員146人、解雇無効訴訟等を提起!経営再建に影響か??
2011/01/20 労務法務, 労働法全般, その他

1 事件の概要
元JAL従業員で、昨年末に整理解雇されたパイロット・CA(客室乗務員)ら計146人が1月19日、解雇無効等を求めて東京地裁に提訴した。訴訟が長期化する恐れも多分にあり、1年前に経営破綻し、経営再建真っ只中のJALにとって悪影響は必至である。
2 経緯
2010年1月19日:会社更生法の適用を申請することを正式決定。取締役は即日辞任。
2010年2月1日:新経営陣発足。企業再生支援機構が支援。
2010年6月25日:元子会社のジャルキャピタルと共に親会社である日本航空に吸収・統合されることを発表。
2010年8月31日:更生計画案を東京地裁に提出。
2010年9月16日:2022年FIFAワールドカップ日本招致委員会とオフィシャル招致パートナー契約を締結
2010年11月30日:東京地裁が更生計画案を認可。
2010年12月1日:以下の施策を実施。
・当社を存続会社として、日本航空とジャルキャピタルを吸収合併(同年6月の報道時から変更)。
・合併により旧日本航空株主に交付された当社株式を直ちに無償取得、無償取得分を含む全自己株式を消却し100%減資。
・企業再生支援機構から資本金・資本準備金各1750億円の出資を受け、同機構傘下に入る。
・JALウェイズおよびジャルリーブルを吸収合併。
2010年12月31日:JAL職員165人の整理解雇(雇用契約解除)
2011年1月11日:日航とアメリカン、4月から共同事業スタート
2011年1月19日:JAL、鶴丸が復活…新ロゴマークを発表
2011年1月19日:元JAL職員が解雇無効等訴訟を提起。
3 整理解雇について
最高裁判所判決(第一小法廷昭和58年10月27日判決)においては、下記の4要件(整理解雇の4要件)を全て満たさなければ整理解雇は認められないとの判決を下している。
①人員整理の必要性 余剰人員の整理解雇を行うには、削減をしなければ経営を維持できないという程度の必要性が認められなければならない。
②解雇回避努力義務の履行 期間の定めのない雇用契約においては、人員整理(解雇)は最終選択手段でなければならない。
③被解雇者選定の合理性 解雇するための人選基準が合理的で、具体的人選も合理的かつ公平でなければならない。
④手続の妥当性 整理解雇については、手続の妥当性が認められなければならない。
この判決を踏まえて、原告側元従業員らの声によれば、以下のような点で解雇を認めるべきではないと主張している。
・日航は営業利益が計画を大幅に上回るなどしているのに、客観性のない人員削減目標を設定した。
・ワークシェアリング、人件費を削減するためのリフレッシュ休職の導入、希望退職の対象年齢引き下げ、等の解雇回避措置も尽くさないまま整理解雇を強行した。
・年齢による人選基準も不合理である。
・白紙の業務スケジュールを対象者に示すなど手続きに問題があった。
・整理解雇の4要件はいかなる状況でも厳格に適用されるべきである。
最近の裁判例においては、裁判所は、企業が整理解雇をする場合に必ずしも上記「整理解雇の4要件」全てが満たされなければ解雇が認められないという判断をしているわけではなく、これらを考慮要素として、個別具体的な事情を総合考慮して解雇権濫用の判断をすることとしている。特に、4要件全てが充足していなくても解雇回避努力を尽くしていれば、整理解雇が有効とされたこともある。(ナショナル・ウエストミンスター事件、東京高裁平成12年1月21日)
4 雑感
JALの経営破綻から約1年経過し、格安航空会社(LCC)の台頭や、新幹線との競争激化にどう立ち向かうかといった戦略がなお不鮮明といった経営上の新たな問題点も出てきている中、今回の解雇無効訴訟の提起によって経営再建計画に悪い影響を与える可能性がある。
しかし、組織は「人」で成り立っているものであるから、整理解雇が妥当でないと感じる場合には徹底的に戦わなければならない。労働者の地位を高めるためにも元JAL従業員によって構成される原告団とJALの今後の動向が注目される。
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