外国人労働者の雇用 まとめ
2023/02/21 労務法務, 労働法全般

はじめに
人手不足などを背景に、外国人労働者を雇う企業も増えてきました。厚生労働省は、「令和4年10月末現在の外国人雇用についての届出状況」を取りまとめ、公表しています。それによると、外国人労働者は去年10月時点でおよそ182万人。前年の同時期比で9万5504人増と5.5%増加し、過去最多となりました。今後、少子高齢化に向かう日本では、企業が外国からの労働者を迎え入れる機会がさらに増えると予想されます。
企業が外国人労働者を雇うことの意義
外国人労働者の国籍に目を向けると、日本で働く外国人労働者は、ベトナム人が46万2384人と最も多く全体のおよそ4分の1を占めています。次いで中国人が38万5848人、フィリピン人が20万6050人と続いています。
このように、外国人労働者は増加傾向ですが、その一方で技能実習生は34万3254人と前の年を2.4%下回っていて、2年連続の減少となっています。これは新型コロナウイルス感染拡大に伴う水際対策の影響があると言われています。そのため、今後、水際対策が緩和されるにしたがい、技能実習生の数も回復すると見込まれます。
では、企業が外国人を雇用する理由はなんでしょうか。大きく2つあります。
(1)人手不足の解消
外国人労働者を採用対象に加えることで、求職者の母数が拡大します。人手不足に苦しむ業界・企業にとっては、応募者増を見込むことができます。特に、電気や機械関連のエンジニアをはじめとする専門的な技能を持つ人材が求められる業界や、過疎化が進む地方での農業や製造業、そのほかにも宿泊やレストランといったサービス業の人材不足解消に力を貸してくれます。
(2)多言語に対応可能
新型コロナウイルス感染拡大の影響が落ち着いてきた今、海外からの観光客が日本を訪れる機会も増えてきています。そうした中、特に飲食店や観光業などにおいて、多言語を扱える外国人労働者を雇うことができれば、外国人観光客に対する接客レベルを上げることができます。
また、外国人労働者の採用を企業の海外進出の足掛かりとすることもできます。特に、その外国人労働者の母国でビジネスを展開する場合などには、現地の文化や習慣、言葉の壁、異なる法律やルールに素早く対応することが期待できるでしょう。
その一方で、文化や言葉の異なる外国人労働者を雇い入れる際には、企業や既存の従業員側で、一定の準備が必要となります。
例えば、日本特有のビジネスマナーや、ビジネスで使う日本語などを身につけてもらうため、場合によっては、外国人労働者を対象とした研修を用意しなければなりません。
また、ビザの問題もあります。外国人労働者が日本で働くためには、日本での就労を可能とするビザの取得手続きを行い、審査を受ける必要があるからです。
こうした事情から厚生労働省では、外国人労働者の雇い入れを支援する助成金を用意しています。背景として、日本の労働法制や雇用慣行などに関する知識不足や言語の違いなどが労働条件・解雇などに関するトラブルに発展するケースが少なくないという事情があります。そのため、国として、「外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備」を進めるべく、企業側が就労環境整備に要する経費の一部をサポートする制度を設けています。
厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
雇用の際に確認することは
では、実際に外国人労働者を雇用する場合、どう言った点に注意が必要なのでしょうか。
■在留資格の有無の確認
まずは、在留カードを確認し、当該外国人労働者が日本において就労可能か否かをチェックします。その際、カード自体が本物か、本人のカードかを確認し、加えて、在留期限の経過でオーバーステイとなっていないことも確認します。
仮に不法就労外国人を雇用すると不法就労助長罪となります。不法就労外国人を雇用した事業主、不法就労となる外国人をあっせんした者等不法就労を助長した者は、3年以下の懲役又は300万以下の罰金に処せられます。
■在留資格の種類の確認
在留資格には29種類あります。そのため、外国人労働者を雇い入れる際、当該労働者がどの在留資格で就労するのかの確認が必要になります。「永住者」「日本人の配偶者等」などの在留資格であれば原則、制限はありませんが、留学生は週28時間までの制限があったり、文化活動や短期滞在、家族滞在だと就労自体が不可となっています。
また、就労可能な在留資格を有している場合でも、現に有している在留資格に属さない仕事を任せる場合には、資格外活動許可の取得の有無も確認する必要があります。
■労働契約の準拠法の確認
その他、外国人労働者と労働契約を結ぶ際には、どこの国の法律に準拠するかもポイントになります。基本的には、日本の法律が準拠法となり、労働基準法・最低賃金法などの労働者の保護を図る日本法が外国人労働者にも適用されることになります。ただ、他国の法律を適用する必要があるケースもあるため、注意が必要です。
コメント
後継者不足や働き手不足などで倒産を決意する企業も少なくない中、外国人労働者の雇用を選択肢に入れることは、1つの生存戦略と言えます。
中東の湾岸諸国においては、人口の半数以上が移民で構成されていて、アジア・アフリカ地域からやってくる推定約3,500万人の移民労働者が各国の経済発展に寄与しているといいます。それにならい、日本でも今後、外国人労働者の雇い入れがさらに加速する可能性があります。
今のうちに、「外国人労働者を多数迎え入れた場合に、自社にどのような影響が及ぶか」、法務の視点から精査しておく必要がありそうです。
【関連リンク】
「外国人雇用状況」の届出状況まとめ_令和4年10月末現在(厚生労働省)
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
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