東芝が臨時株主総会の基準日を1月31日に設定、「基準日制度」について
2022/01/13 総会対応, 会社法

はじめに
東芝は7日、3月末までに開催を予定している臨時株主総会の基準日を1月31日に設定したと発表しました。総会の日時や場所などについては未定とのことです。今回は会社法の基準日制度について見直していきます。
事案の概要
東芝の発表などによりますと、東芝は現在グループの事業をスピンオフし、3つの独立会社とする企業再編を計画しております。また先日、同社の議決権の3%以上を6ヶ月前から引き続き保有している一部株主により株主総会招集請求がなされており、それに伴い2022年1月から3月の間に臨時株主総会を招集し株主に諮る予定とされます。今回決定した基準日は2022年1月31日とし、公告日は1月7日、公告方法は電子公告(同社HP)とのことです。同基準日の最終の株主名簿に記載された株主をもって議決権を行使できる株主とするとされます。具体的な日時や場所、議案の内容等については未定となっております。
基準日制度とは
会社が一定の日に株主名簿に記載または記録された株主について、株主総会の議決権行使や配当など、株主としての権利を行使できる者と定めることができる制度を基準日制度と言います(会社法124条)。「3月末日の最終の株主名簿に記載された株主をもって、その事業年度の定時株主総会において権利行使することができる株主とする」といった例が挙げられます。上場会社などは多数の株主が存在し、日々株主が変動していきますが、この制度を利用することによって一定の日に株主である者を権利行使者と確定することができます。
基準日制度の手続き
基準日を定める場合、その基準日時点における株主(基準日株主)が行使することができる権利の内容を具体的に定める必要があります。これはその都度決定して定めることもできますが、定款で予め定めておくことも可能です。この行使することができる権利は基準日から3ヶ月以内に行使するものに限るとされております(124条2項カッコ書き)。基準日を定めたときは当該基準日の2週間前までに基準日および行使することができる権利の内容を公告することとなります。そして、権利の内容が株主総会における議決権である場合は、会社の判断で基準日後に株式を取得した株主の権利行使を認めることも可能です(同4項本文)。ただしこれにより基準日株主を害することはできないとされます(同項但し書き)。
基準日後の株主の権利行使
上記のように会社法では基準日後に現れた株主に議決権行使を認めることができると規定する一方、但書にて、基準日株主を害することはできないとされています。では、「基準日株主を害する」とは、具体的にはどのような場合を言うのでしょうか。
たとえば、基準日後に基準日株主が株式を他の者に譲渡した場合であっても、原則的には基準日株主に議決権行使が認められることとなります。そんな中で、もし、会社が基準日後に譲り受けた株主に対し議決権行使を認めてしまうと基準日株主が議決権行使できない事態が生じてしまいます。このような場合が基準日株主を害するケースの典型と言えます。
その意味で、124条4項の規定は基準日後に会社が募集株式発行や組織再編行為を行い、基準日後に新たな株主が現れた場合を想定していると言われております。
コメント
本件で東芝が今回決定した基準日は1月31日とされ、その2週間前以前である1月7日に基準日公告がなされました。当該基準日の3ヶ月以内に臨時株主総会が招集される見込みとなります。基準日以後に募集株式が発行されるなど新たな株主が現れた場合にはそれらの株主についても議決権行使を認めることも可能と言えます。
以上のように株式会社は株主総会の議決権や募集株式の引受など、株主としての権利行使につき、一定の日における株主を権利行使者として確定することが可能となっております。多数の株主が日々変動していく株式会社において、集団的法律関係を画一的に処理することができる制度と言われております。
特に証券市場に上場している公開会社では、基準日制度の概要や手続き、問題点などを今一度把握しなおしておくことが重要と言えるでしょう。
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