名産大と名経短大で組合結成後に雇い止め、不当労働行為について
2021/12/10 労務法務, 労働法全般

はじめに
名古屋産業大と名古屋経営短大の元准教授と教授が組合結成後に雇い止めにされていたことがわかりました。准教授については県労働委員会のあっせんにより解決金が支払われたとのことです。今回は労働組合法の不当労働行為について見直します。
事案の概要
毎日新聞によりますと、元准教授は同短大で2012年から特任講師に就き、2016年から准教授に就任し、同短大の女性教授らと共に2020年に組合を結成したとされます。しかし組合を結成した翌日に同学園の理事長から翌年移行の契約を更新しない旨通告されたとのことです。また女性教授についても、同理事長から「変な組織入ったでしょ」「続けていくの?」など組合活動への圧力とも取れる発言を受け、22年度以降契約を更新しない旨通告されたとされます。学園側は雇い止めの理由を無断欠勤やゼミの指導不足などとしていたとされますが、コロナによる自宅からのオンライン授業を欠勤扱いしていたとして労基署から是正勧告を受けております。
労働基本権と労働組合法
日本国憲法27条によりますと、すべて国民は勤労の権利を有し、義務を負うとされており、28条で、勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利も保障されております。これを労働基本権と言い、団結権、団体交渉権、団体行動権は合わせて労働三権と呼ばれております。労働者が労働組合を作り、使用者と対等の立場で交渉し、あるいはストライキなどを行うことです。そしてこれらの権利を具体的の保障するため労働組合法をはじめ各種労働法が制定されております。これらの権利を正当に行使されたことにより会社側に損害が生じても、刑事的にも民事的にも免責されると言われております。
不当労働行為
(1)不利益取扱い
上記のように憲法で保障された労働三権を使用者側が不当に侵害することは不当労働行為として労働組合法により禁止されております(7条)。そして同条1号では組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱いが禁止されております。具体的には労働者が労働組合の組合員であること、加入しようとしたこと、結成しようとしたこと、その他組合の正当な行為をしたことを理由とする場合です。その他に労働者が組合に加入しないこと、または脱退することを雇用条件とする場合も同様です。
(2)団体交渉の拒否
使用者が正当な理由なく労働者の代表者と団体交渉をすることを拒否することも禁止されております(同2号)。使用者が形だけ団体交渉に応じても、実際には誠実な交渉を行わないといった場合も同様にこれに含まれるとされております。正当な理由の有無については交渉の内容や交渉担当者、交渉の手続きなどの事情から総合的に判断されます。
(3)支配介入
会社が労働組合などに介入または援助することが禁止されます(同3号)。労働者が労働組合を結成し運営することを会社が支配しまたは介入すること、労働組合の運営のための経費の支払いにつき経理上の援助を与えることなどとされます。具体的には組合結成にたいして非難したり、組合員に脱退や不加入を働きかけたり、組合中心人物を配転するなどの妨害行為を行うことが挙げられます。別の組合の結成を援助したり、別の組合を優遇するといった場合も該当するとされます。
(4)労働委員会への申し立て等を理由とする不利益取扱い
労働者が労働委員会に対して不当労働行為の申し立てや中央労働委員会への再審査申し立てをしたこと、労働委員会がこれらの申し立てに関して調査や審問をする場合などに労働者が証拠を提示または発言をしたことを理由とする解雇などの不利益取扱いも禁止されております(同4号)。
コメント
本件で名産大と名経短大の准教授と教授が労働組合を結成した直後、学園側から更新しない旨を通告されております。また同学園理事長から「変な組織入ったでしょ」「続けていくの?」などと発言されたとされております。これらが事実であった場合は組合結成を理由とする解雇または不利益取扱いに該当する可能性が高いと言えます。また組合活動への圧力ともとれる発言は支配介入に該当する可能性も考えられます。学園側は第三者の意見を聞きながら対応したいとしております。以上のように労働者には組合を結成し活動する権利が保障されております。不当労働行為については労働委員会の救済命令に違反した場合に1年以下の禁錮、100万円以下の罰金が規定されており、違反に対して直接の罰則はありません。しかし判例では解雇は無効とされております(最判昭和43年4月9日)。今一度自社での組合への対応を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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