関西スーパーの臨時総会で可決、経営統合の承認決議について
2021/11/02 商事法務, 総会対応, M&A, 会社法

はじめに
関西のスーパーマーケット「関西スーパー」と「エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング」の経営統合案が臨時株主総会で承認されたことがわかりました。賛成票は可決ラインギリギリであったとのことです。今回は経営統合の承認決議について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、関西スーパーは先月29日、兵庫県伊丹市で臨時株主総会を開催し、阪急阪神百貨店を運営するH2Oとの経営統合案が可決承認されたとされます。経営統合案ではH2Oの完全子会社であるイズミヤと阪急オアシスを株式交換完全子会社、関西スーパーを株式交換完全親会社とする株式交換を行い、関西スーパー100%出資の分割準備会社を承継会社、関西スーパーを分割会社とする吸収分割を行うことによって経営統合するとのことです。また関西スーパーに対しては、関東のディスカウントスーパー「オーケー」(横浜市)が株式の買い集めに乗り出しており株主間でも経営統合には意見が分かれていたとされます。
経営統合と承認決議
合併や吸収分割、株式交換と言った経営統合の手続きはおおまかに、経営統合の契約締結、反対株主に対する買取請求通知、債権者異議手続き(必要な場合)、書類の備え置き、株主総会での承認決議、効力発生となります。このように組織再編には原則として株主総会の承認決議を必要とし、その決議は特別決議となります(会社法795条1項、309条2項12号等)。特別決議とは議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上による賛成による決議を言います。しかし場合によってはこの特別決議による承認が必要無い場合や、逆により厳しい決議が求められる場合も存在します。以下具体的に見ていきます。
略式組織再編
当事会社の一方が他方の特別支配会社である場合は、支配されている側の会社では承認決議が原則として不要となります(796条1項)。特別支配会社とはある会社の議決権の90%にあたる株式を保有している会社を言います。この場合は可決承認されることが確実であることから実際に株主総会を開催する意味がないとされます。しかし例外的にいくつか株主総会を省略できない場合が存在します。まず消滅会社側が公開会社で、その株主に対して与える対価が譲渡制限株式である場合は特殊決議が必要となります(309条3項2号)。特殊決議とは議決権を行使できる株主の半数以上で、議決権の3分の2以上の賛成による決議を言います。そして対価が持分会社の持分である場合は全株主の同意を要します。そして逆に承継会社側でも相手会社に与える対価が譲渡制限株式でかつ非公開会社の場合はやはり承認決議を省略できません(796条1項但し書き)。
簡易組織再編
上記略式組織再編以外にも株主総会での承認決議を省略できる場合として簡易組織再編があります。簡易組織再編とは、合併に際して消滅会社の株主に交付する対価が承継会社の純資産額の20%以下である場合や会社分割での分割する資産が分割会社の総資産額の20%以下の場合を言います。これらの場合は株主への影響が少ないことから承認決議が省略されると言われております(796条3項等)。しかしやはり簡易組織再編にも例外があり、承継する会社が債務超過に陥っていたり、その会社の価値が合併対価よりも小さい場合といった差損が生じる場合や、対価が非公開会社の譲渡制限株式である場合は省略できないこととなっております。
コメント
本件関西スーパーの臨時株主総会での議案はイズミヤと阪急オアシスとの株式交換、分割準備会社との吸収分割その他定款変更や役員選任です。いずれも略式や簡易組織再編の要件は満たしていないことから原則どおり特別決議による承認が必要となっておりました。反対意見も飛び交う中、賛成66.68%というギリギリの可決承認となりました。本件では事後の紛争に備え株主総会検査役も選任されていたとのことです。以上のように経営統合の際には原則として株主総会特別決議での承認が必要となります。しかしこれには例外やさらにその例外も規定されており複雑なものとなっております。経営統合を検討する際には、その手続きや要件などを正確に把握し、不備がないかを精査していくことが重要と言えるでしょう。
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