任天堂とコロプラ訴訟で成立、裁判上の和解について
2021/08/09 訴訟対応, 民法・商法, 民事訴訟法, その他

はじめに
任天堂とコロプラの特許侵害訴訟で4日、コロプラは和解が成立した旨発表しました。和解金は33億円とのことです。今回は和解について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、任天堂はコロプラが提供するスマホ用アプリ「白猫プロジェクト」に関して、任天堂の特許権を侵害しているとして訴えを提起しておりました。
問題となっていたのはゲーム内でタッチパネル上でジョイスティック操作をする際に使用される特許技術など6件の特許権とされます。
任天堂は訴訟提起時には「白猫プロジェクト」の配信停止と約44億円の賠償を求めておりましたが、今年2月には49億5000万円、4月には96億9900万円に引き上げておりました。
和解とは
和解とは当事者間における自主的、自治的な紛争解決方法を言います。一般に日本では私法上の和解と裁判上の和解に分けられ、裁判上の和解はさらに起訴前和解と訴訟上の和解に分けられます。
和解は互いに譲歩し合うことが本質とされ、一方的に請求を受け入れたり、放棄するだけでは和解にはなりません(民法695条)。この互譲がない場合は私法上は和解に類似した無名契約と考えられており(大判明治41年1月20日)、裁判上の和解では請求の認諾や請求の放棄となります。
和解が成立するとそれにより紛争は終結し、当事者は互いにその内容に拘束されることとなります。
裁判上の和解
裁判上の和解は上記のように起訴前和解と訴訟上の和解に分けられます。起訴前和解は文字通り訴え提起前に行われるもので、簡易裁判所に紛争当事者双方が出頭して行われます(民事訴訟法275条)。和解が調わず、双方が申し立てをすればそのまま訴訟に移行することができます(同2項)。
訴訟上の和解は訴訟係属中に裁判期日においてなされます。裁判所は訴訟係属中はいつでも当事者に和解を勧めることができ(89条)、裁判官の面前で行われる和解は私法上のものよりも強い効果を持つとされます。
裁判上の和解では、成立すると和解調書が作成され、確定判決と同一の効力を有し(267条)、それに基づいて強制執行も可能です。
既になされた和解後の争い方
訴訟上の和解が成立しても、そこに錯誤などの瑕疵がある場合はどのようにして無効を主張すべきでしょうか。
このような場合は和解の無効確認の訴えや請求異議の訴えなど別訴を提起することも考えられますが、和解が無効であれば訴訟自体が終結せずに係属したままであるとして期日指定を申し立て、旧訴続行することも可能とされております(大決昭和6年4月22日)。
なお和解成立後に債務不履行などによって和解が解除された場合は、旧訴とは別個の紛争であることから新訴を提起するべきとされております(最判昭和43年2月15日)。
また交通事故などの不法行為事例で和解成立後に後遺症等が発生した場合は、和解成立当時その後の予期せぬ損害までも放棄したものとは解せないとして、その後の賠償請求も認められております(最判昭和43年3月15日)。
コメント
本件で任天堂とコロプラは、33億円を支払い、任天堂側はそれと引き換えに訴えを取り下げる旨の和解が成立したとしました。この33億円には特許使用料が含まれているとされますが、その他の和解条項については秘密保持義務により公表できないとのことです。秘密保持条項が盛り込まれているものと考えられます。
以上のように民事紛争は訴訟提起の前後を問わず和解することが可能です。一般に民事訴訟の半分から3分の2程度は和解によって終了していると言われております。
和解はお互いに譲り合って矛を収めることから穏当な解決法と言え、その後の関係も良好に進める可能性が高いと言えます。紛争が生じた際には積極的に和解も検討していくことが重要と言えるでしょう。
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