岡山地裁でレンタカー会社が敗訴、放置駐車違反金制度について
2021/04/12 業法対応, 民法・商法, その他

はじめに
レンタカーの駐車違反金を違反した利用客ではなくレンタカー会社が納付するのは不当であるとして県に納付命令取り消しを求めた訴訟で岡山地裁は2月16日、請求を棄却していたことがわかりました。車の運行を支配し、管理するものが使用者であるとのことです。今回は道路交通法の放置駐車違反金制度について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、2020年1月25日、岡山市のレンタカー会社から乗用車をレンタルしていた男性客が、同市内の駐停車禁止の交差点に車両を駐車していたところを岡山県警が確認し、同社を通じて男性客に出頭を求めたとされます。しかし男性客は出頭せず反則金も納付しなかったことから3月22日、同社に対して反則金と同額の放置違反金1万8千円の納付命令が通知されたとのことです。同社社長は違反した利用客の責任を第一義的に追求すべきであり、本質的に納付命令を出す相手が違うとして納付命令取り消しを求め提訴しておりました。
放置違反金制度とは
放置違反金制度とは、平成16年道路交通法改正で導入された制度で、放置駐車違反を行った車両の運転者が特定できないといった場合に車両の使用者に対して違反金の納付を命じることができるという一種の行政制裁です。車両の使用者の運転者に法令を遵守させる義務が強化されたものであり、使用者責任の性質を有しております。自己の車両を家族や友人に貸していた場合や法人の社用車、リースやレンタカーなどが対象として想定されております。なお道交法上の軽車両や自転車は対象外とされております。放置違反金の額は、運転者が行った違反行為に対する反則金と同額となっております。
放置違反金制度の流れ
違法駐車がなされており、運転者が車両を離れて直ちに運転することができない状態にある場合には、警察署長は車両の使用者が違反金納付命令を受けることがある旨の告知する標章を車両に取り付けることができます(道路交通法51条の4第1項)。運転者が未出頭、反則金不納の場合は使用者に対し、弁明通知書と仮納付書が送付されます。標章取り付けの日の翌日から起算して30日以内に運転者が納付等を行わない場合に使用者に放置違反金納付命令書が送付されます。納付期限は命令書発出の日から14日とされます。納付がなされない場合、期限後20日以内に督促状が送付され、それでも納付がない場合は滞納処分により財産の差し押さえ等の強制徴収となります。
その他の措置
上記放置違反金の納付命令を受けたにも関わらずそれを滞納し、督促を受けたことがある場合には、放置違反金の納付を証する書面を提示しなければ、当該車両について車検証の返付が受けられなくなります。また納付命令を受けた場合に、その車両の使用者が標章が取り付けられた日以前6ヶ月内に同様の納付命令を3回以上受けていた場合は公安委員会は3ヶ月以内の期間の範囲で車両の使用制限命令を出すことができます。
コメント
本件で岡山地裁は、道交法の車両「使用者」について「車の運行を支配し、管理する者」とし、会社は車を一定の条件下で貸し渡して利益を得ていることから、車が適切に運行されるよう管理する責任を負っており、「使用者」に該当するとしてレンタカー会社側の主張を退けました。以上のように違法な放置駐車に関しては運転者だけでなく、その車両の所有者等も違反金の納付義務を負うことがあります。近年レンタカーを運転者が違法駐車するなどして放置し、レンタカー会社が違反金を負担したケースが増加しており、昨年1年でもこういったケースは400件以上にのぼっていると言われております。また運転者が事故などを起こして行方不明となった場合、レンタカー会社などが民事訴訟に巻き込まれることもあり得ると言えます。自社の車両を第三者に使用させる場合にはこういったリスクを踏まえ、予め対策を検討しておくことが重要と言えるでしょう。
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