「譲渡担保」、法制審議会でルールの明確化を検討
2025/02/20 契約法務, 債権回収・与信管理, 民法・商法, 法改正

はじめに
法相の諮問機関である法制審議会は10日、融資時の担保として利用されている「譲渡担保」を法律上の担保として制度化する新法の要綱をまとめました。政府は今国会中の法案提出を目指すとのことです。今回は譲渡担保について見ていきます。
事案の概要
譲渡担保は既に実際の取引で多く利用されておりますが、民法などに明文規定がなく、そのルールに関してはもっぱら判例や慣習に委ねられております。かねてより譲渡担保に関しては法整備が必用と指摘されており、法制審議会は2021年から制度化に向けて議論を重ねてきたとされます。現状、担保は不動産や個人保証に偏っており、譲渡担保を制度化することで企業による資金調達の選択肢を広げ、また法律上の担保として明確に位置づけ、取引の安定を図ることが狙いです。2023年1月には中間試案が出されており、今国会中には正式な法案提出を目指しているとのことです。
譲渡担保とは
譲渡担保とは、債権の担保として動産や不動産などを債権者に移転し、債務不履行となった際には債権者は当該目的物を取得したり売却して代金から回収するというものです。抵当権や質権など民法に規定が置かれている典型担保とは異なり、法律による明文規定がない非典型担保の一種とされます。民法に規定のある抵当権はその対象が不動産と地上権、永小作権となっており動産や債権を抵当にいれることはできません(民法369条1項、2項)。これに対し質権は動産や不動産、債権をその対象としております(352条、356条、362条)。しかし質権は抵当権と異なり、目的物を債権者に引き渡すことが必用です。これは占有改定による引き渡しは認められないとされており、抵当権のように債務者の下に目的物を留めたまま債務者に使用収益を継続させることができません。そのため工場の機械といった動産を担保に供することが困難であったとされます。そこで債権の担保として債権者に動産等を譲渡して占有改定で引き渡し、債務者の下に留めて使用を継続する譲渡担保が考え出されたとされております。
譲渡担保の法律構成
譲渡担保の法律構成としては(1)所有権的構成と、(2)担保的構成があります。前者は目的物の所有権は債権者に移転するものの、債権者は目的物を担保目的以外に利用しないという制約を負うという考え方です。後者は目的物の所有権はあくまで債務者(設定者)にとどまっており、債権者は担保権を有しているにすぎないという考え方です。そして担保権の実行としては帰属精算型と処分精算型があり、帰属精算型は目的物の所有権を確定的に債権者に帰属させ、目的物の価値を適正に評価した上で債権との差額を清算金として設定者に交付するというものです。これに対し処分精算型は目的物を処分して換価し債権額との差額を清算金として設定者に交付する方式です。いずれによるかは譲渡担保設定契約で定めることとなります。なお設定者は弁済期を経過した後でも清算金が支払われるまで、または第三者に目的物が譲渡されるまでは弁済して目的物を取り戻すことができるとされます(最判昭和62年2月12日、最判平成6年2月22日)。
中間試案
法制審議会の中間試案では、譲渡担保や所有権留保といった非典型担保についてどのように法制度化するかが検討されております。まず譲渡担保などを抵当権や質権等と並ぶ新たな典型担保物権として規定を新たに設けるか、担保目的で所有権が移転されるなどした際にどのような権利義務を有するのかを規定すべきかという総論的な検討がなされ、同一の目的物に対して重複して譲渡担保権が設定できることや占有改定でも対抗要件を認めること、付合物にも効力が及ぶことなどが確認されております。また抵当権と同様に設定者に目的物の使用収益権を認めることや担保権者の権限、物上代位、根担保権などについても検討されております。さらに集合動産譲渡担保や集合債権譲渡担保についても確認されております。
コメント
不動産や動産などを担保のために債権者に譲渡する、譲渡担保権は古くから利用されている非典型担保であり、古くは大正時代の判例も存在します。しかし上でも触れたように譲渡担保については民法は規定を置いておらず、精算や受戻しなどそのルールに関してはもっぱら判例や慣習に委ねられてきました。これについて近年法制審でいよいよ明文による制度化に向けた議論が進んでおり、法案提出が目前に迫っております。抵当権や質権など民法の典型担保では補えなかった動産や集合動産、集合債権などの担保化が法律の規律に復することとなります。これを期にどのような担保が存在するか、またどのような規定や判例でルール化されているのかを確認し、法改正に備えておくことが重要と言えるでしょう。
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