愛知文教女子短大に是正勧告、労働時間の把握について
2020/08/17   労務法務, 労働法全般, その他

はじめに

愛知文教女子短大(愛知県稲沢市)は教職員に法定以上の時間外労働をさせた上、割増賃金を支払っていなかったとして一宮労働基準監督署が是正勧告を出していたことがわかりました。労働時間の把握も適切にされていなかったとのことです。今回は従業員の労働時間の把握について見ていきます。

事案の概要

 毎日新聞の報道によりますと、同校では教職員58人全員に対し法定労働時間を超える時間外労働をさせていたにもかかわらずその分の割増賃金を支払っておらず、また就業規則に賃金の算出方法なども記入されていなかったとされます。教職員の労働時間の把握についてもタイムカードなどの客観的方法をとっておらず、健康診断で異常が見つかった職員に医師の診断を受けさせるなどの適切な措置もとっていなかったとのことです。労基署は適切な労働管理が行われていないことを問題視し是正勧告を出しております。

労働基準法と労働時間

 労働基準法では32条以下「労働時間」について厳格な規定を設けております。使用者は労働者を1日8時間、週40時間を超えて労働させることは原則禁止されており(同1項、2項)、それを超える時間外労働をさせるには労組等と協定を結んで労基署に届け出る必要があることはよく知られております(36協定、36条)。時間外労働や休日、深夜の労働には割増賃金の支払い義務も発生します(37条)。また使用者は労働者の労働時間や日数などを適切に賃金台帳に記入する義務も定められております(108条)。これに違反したに場合は罰則として30万円以下の罰金が規定されております(120条1項)。このように労働者の労働時間はとても重要なものと言えます。

労働時間とその把握

 それでは労働時間とは具体的にどのようなものでしょうか。この点最高裁では、就業規則等でどのように規定されているかに関わらず客観的に決まるとし、使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるかどうかで判断されるとしています(三菱重工長崎造船所事件、最小判平成12年3月9日)。そして労働時間について争いが生じた場合、実労働時間はタイムカードに記載された出勤・退勤時刻をもって認定するとされております(大阪地裁平成11年5月31日)。タイムカードに記載された出退勤時刻と実際の就労時間に不一致があったとしても、それを会社側が証明できなければタイムカードの記載がそのまま労働時間となるということです。

労働時間管理

 労働者の労働時間の管理・把握については従来から厚労省のガイドラインによって、タイムカード、ICカード等の客観的な記録の作成、記録書類の3年間の保存、使用者自ら現認すること、自己申告によらざるを得ない場合は十分な説明と実態調査、労働時間管理者の設置などが求められておりました。2019年4月1日からは働き方改革関連法の施行によってこれらの労働時間把握措置が各企業、事業者に法的に義務付けされております。それに伴い労基署による調査もこういった労働時間管理が適切に行われているかについて重点的に行われているものと思われます。

コメント

 本件で労基署の調査では、タイムカードなどの客観的な方法による労働時間の把握は行われておらず、また就業規則などに賃金算出方法も記載されていなかったとされております。賃金台帳などの作成も行われていなかった場合は罰則の可能性も出てくるものと言えます。以上のように近年では特に従業員の労働時間の適切な把握が求められております。過重労働の防止だけでなく、従業員と割増賃金等で争いが生じた場合も正確な勤怠把握は重要と言えます。上記のように原則的にはタイムカードなどで把握することとなりますが、記録と実態に不一致がある場合などに備え実態把握をする部署を設けるなど柔軟に対応していくことが重要と言えるでしょう。

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